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行政におけるキャッシュレス決済について【自治体事例の教科書】

行政におけるキャッシュレス決済について【自治体事例の教科書】

消費税率引き上げと同時に経済産業省が主導となって、一般の中小・小規模事業者での最大5%のキャッシュレス・消費者還元事業が推進されています。将来的な利便性を踏まえ、国民のキャッシュレス化を消費税の増税と同時に推し進めていこうという事業です。一般事業者や消費者の間でキャッシュレス化を進めたいのであれば、主体となる国や行政機関自らもキャッシュレス化に取り組むべきという議論もなされています。行政自らお手本を示したり、民間事業者を導いたりしていけるよう、行政機関がどのようにキャッシュレス化を導入できるのか、その方針や取り組みについてご紹介します。

【目次】
■行政機関でのキャッシュレス化の現状
■行政のキャッシュレス決済推進に向けて
■どのようなケースで利用できるのか
■地方公共団体の取り組み事例を一部紹介

行政機関でのキャッシュレス化の現状

行政機関では各種行政サービス提供のための手数料の徴収、税金や社会保険料の納付において、利用者や国民、住民が決済を行う場面が多々あります。すでにペイジーを使ったインターネット支払いや、クレジットカード払いが導入されているケースも多いです。

ですが、国の各機関や地方公共団体ごとに対応はバラバラであり、サービスによっても対応が異なっています。たとえば、国民年金保険料はクレジットカード払いやペイジーに対応していますが、地方公共団体が徴収する国民健康保険料については、自治体ごとに対応が異なり、現金払いや口座引き落としだけのところも残されています。

また、同じ地方公共団体内でもサービス内容や種目によって、選べる払い方が異なるのが現状です。たとえば、固定資産税や水道料はクレジットカード払いができても、住民税の支払いはコンビニ払いか銀行振り込み、口座引き落としに限られるなどとなっており、住民にはわかりにくく、非効率なケースもあるのです。

こうした差は国民や住民にとってはわかりにくく、不便です。たとえば、税金の金額が大きく、今手元に資金がないからクレジットカード払いで後払いしたいと思っても、税金の種類によって対応が異なっており、いちいち確認しなくてはなりません。ペイジーの対応も、地方公共団体やその料金によって異なります。忙しくてコンビニエンスストアや金融機関の窓口に行く暇がない、納付期限を忘れていて今すぐ支払いたいといった場合にペイジーでネット払いができるか、調べる必要があります。マイナンバーカードを用い、コンビニエンスストアのマルチコピー機で証明書等の自動交付を導入させた自治体では、一部のコンビニエンスストアで電子マネーによる支払いも可能となっていますが、すべてではありません。一方、税金や社会保険料をコンビニエンスストアのレジで支払う場合には、現金払いのみしか取り扱えないのが現状です。

支払う対象によって、決済手段の対応が異なるのも混乱を招きます。将来的には全体的に統一できるよう、キャッシュレス化を推し進めていくべきでしょう。この点、国民は引越しにより、生活する自治体が変わることもしばしばです。引越し前の自治体では水道料金をクレジットカード払いできて、クレジットカードのポイントが貯まって少しはお得だったのに、別の自治体に引越したら、コンビニエンスストアでの現金払いか銀行振り込み、口座引き落とししかできないといったことも起こります。

国民や住民のキャッシュレス化が進み、ポイント還元などを通じて少しでもお得に決済したいと希望する人が増えてくれば、地方公共団体においてキャッシュレス化が進んでいるかが、引越し先を決める1つの選択肢になるかもしれません。となれば、キャッシュレス化が進んでいる自治体ほど住民が集まり、キャッシュレス化で取り残されている自治体ほど過疎化が進むといった事態さえ考えられるのです。

行政のキャッシュレス決済推進に向けて

令和元年5月に「情報通信技術の活用による行政手続等に係る関係者の利便性の向上並びに行政運営の簡素化及び効率化を図るための行政手続等における情報通信の技術の利用に関する法律等の一部を改正する法律」、通称、デジタル手続法が公布され、総務省が平成31年3月29日付けで「電子マネーを利用した公金の収納について」を各地方公共団体宛に通知しており、これらの法制度を踏まえながら、キャッシュレス化への積極的な取り組みが望まれます。

もっとも、新たに決済サービスを担う独自のシステムを構築するとなれば、安全性を確保するための多額の投資や運用コストがかかってしまいます。そのため、決済処理を外部サービス化するのが現実的です。外部の決済サービス事業者を利用することで、行政機関内部の事務処理をアウトソーシング化して負担軽減ができ、集金時の紛失や合計金額の不一致などのトラブルも減らせると考えられています。

どのようなケースで利用できるのか

国の機関をはじめ、地方公共団体においても、積極的にキャッシュレス決済を導入しているところと、導入が進んでいないところがあります。そこで、どのようなケースで導入がしやすいのか、見ていきましょう。

1つ目に証明書発行手数料や地方公共団体が運営する施設入場料などの小口現金の決済が挙げられます。民間で実施されている電子マネー決済と同じ仕組みが適用可能です。住民や利用者は小銭を用意したり、両替をしたり、お釣りをもらう手間が省けます。役所の窓口や施設管理者は、手数料の管理やつり銭の管理といった事務作業が軽減されるのがメリットです。

2つ目に国の機関などで利用されてきた印紙による支払いについてはどうでしょうか。そもそも印紙の作成には多額のコストがかかっている上、今の時代から見れば紙のムダとも言え、エコではありません。印紙製造には偽造を防ぐための高度な印刷技術が必要な上、流通管理や精算処理などに多額のコストと時間、手間が費やされています。印紙に代えて電子マネーが導入できれば、即時処理が可能となり、いちいち窓口で印紙を購入する手間も省けます。
ペーパレス化も進み、地球環境にも優しいのがメリットです。

3つ目として税金や社会保険料などの支払いについてです。これについては、一部の税金や一部の地方公共団体ですでにペイジーを使ったインターネット決済や、クレジットカード払いができるケースも増えています。さらに電子マネーでの決済を可能にし、役所やコンビニエンスストアの窓口で支払いたい場合も現金ではなく、電子マネーを使えるようになれば、納付漏れや滞納、未納といった納入漏れも減らせるかもしれません。

税金や社会保険料は負担額も大きいので、現金で払うとなると負担感が大きく感じて支払いを躊躇したり、手持ちの現金がないと支払いにきてくれません。電子マネーなら気軽な利用が可能なので、納付促進につながるのではないでしょうか。

地方公共団体の取り組み事例を一部紹介

地方公共団体ではかなり前からペイジー対応などを一部の料金などで導入しているところもありますが、その中でも最新かつ画期的な決済システムを導入した事例を紹介します。

1つは神奈川県です。令和元年1月10日から「LINE Pay」による「請求書支払い」を利用して、一部の県税が納付できるようになりました。
対象は自動車税、個人事業税、不動産取得税で納付額が30万円以下のケースです。スマートフォンアプリの「LINE」を用いて、納付書のバーコードを読み取るだけで簡単に支払いができます。決済にあたって手数料もかからないのが、納税者にとってメリットです。

茨城県日立市では、令和元年7月1日から、市役所や支所などの窓口で電子マネーが使えるようになりました。住民票の写しや課税証明書などの交付手数料を、電子マネーで気軽に決済でき、若い人たちを中心に利用促進が期待されています。

日立市で運営するかみね動物園や日立シビックセンターなどの施設においても、入園料などを電子マネーで支払えるようになったことで、世代を問わず、日立市全体としてキャッシュレス化の推進が図られようとしています。

〈参照元〉

内閣官房_行政におけるキャッシュレス決済入門-政府CIOポータル
(https://cio.go.jp/sites/default/files/uploads/documents/cashless_introduction.pdf)

経済産業省_キャッシュレス社会への取組み
(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/miraitoshikaigi/
sankankyougikai/fintech/dai1/siryou2.pdf
)

国土交通省_新たな決済手法の導入に向けた実証事業報告書
(http://wwwtb.mlit.go.jp/hokkaido/bunyabetsu/kankou/
kadaikaiketsu/30kessai_houkoku.pdf
)

経済産業省_経済産業省ホームページ
(https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/cashless/index.html)

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