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業務プロセスのICT化における自治体の課題と取組【自治体事例の教科書】

2019/7/9

業務プロセスのICT化における自治体の課題と取組【自治体事例の教科書】

自治体業務のICT化が急速に進んでいます。なかには思わぬ業務のICT化で効率や生産性を上げ、行政コストを下げたケースもあるようです。それは、どのような分野なのか? 多様な分野でICT化を実施した事例などを通じ、そのポイントを探りました。
 
【目次】
■「業務プロセスのICT化」が求められる理由とは
■事例①【郵送業務を大幅自動化】高島市(滋賀県)・井原市(岡山県)
■事例②【デマンド交通適正化】飯綱町(長野県)
■事例③【IoTで鳥獣被害防止】五島市(長崎県)

「業務プロセスのICT化」が求められる理由とは

「持続可能で多様な自治体による行政の展開が、我が国のレジリエンス(強靭性)向上につながる」―。これは2040年頃をターゲット人口構造の変化に対応した自治体行政のあり方を検討した「自治体戦略2040構想研究会」の結論的な提言です。

2040年頃には総人口が毎年100万人近く減少すると見込まれるなど、少子高齢化が加速しています。こうした急激な人口減少と高齢化が同時進行する“超少子高齢社会”が現実に到来しても持続可能な医療、福祉、インフラ整備などの住民サービスを地方自治体が提供し続けるためには、さまざまな業務プロセスの変革が必要になりそうです。

人口減は自治体組織のあり方にも大きな影響を与えそうです。若年人口の減少を背景とした、自治体職員の“なり手”の減少です。そのため同研究会は「(職員数などの)経営資源が大きく制約されることを前提に、従来の半分の職員でも自治体が本来担うべき機能を発揮できる仕組みが必要」と指摘し、「全ての自治体で、AI・ロボティクスが処理できる事務作業は全てAI・ロボティクスによって自動処理」していく環境整備が必要、と提言します。

つまり、自治体業務のプロセスは基本的に機械化・自動化・省力化を前提とすべし、ということです。それにより、半分の職員でも住民サービスを確実に遂行できる体制を構築しつつ、人口減少が加速する困難な時代を打開するための政策立案とその遂行に自治体が集中できる、とのビジョンを同研究会はもっているようです。

次に、さまざまなICT化を推進し、今後の自治体業務のあり方を示唆している事例を紹介します。

事例①【郵送業務を大幅自動化】高島市(滋賀県)・井原市(岡山県)

高島市(滋賀県)と井原市(岡山県)は、自治体から住民に発送する郵便物の封入・封かん作業を自動化し、作業の正確性向上と大幅な業務効率化を一体的に図りました。

自治体から住民に郵送する通知文書等は個人情報に触れるものが少なくないことから、誤封入などの間違いを避けるため慎重な対応が必要です。そのため、突合作業やダブルチェックなどの確認作業に神経と時間をとられる場合がほとんどです。

高島市と井原市が導入した郵便業務自動化システムは、郵便物の名寄せ作業を含め、紙折り・封入・のりづけまで、従来、人力で行っていた一連の手作業を自動化するほか、通数・種類の分別・郵便料金・割引適用処理などの確認と集計も自動化できるものです。人口約5万人、約2万世帯の高島市の場合、税務関連の発送物が大量に発生する繁忙期でも、郵便物の封入・封かんにかかる人手は多くて3人、作業期間は長くても2日程度へと大幅圧縮しました。

また、郵便料金などのデータは予算科目と紐づけて郵便料金計器内に履歴として残せるため、郵便物の記録管理作業も省力化。井原市では業務負担が大幅に軽減されたことで、職員が住民からの各種相談対応などコア業務に十分専念できるようになったそうです。

事例②【デマンド交通適正化】飯綱町(長野県)

飯綱町(長野県)は地域公共交通のデマンドバス運行の最適化をはかるためにICT技術を導入し、コスト削減と住民サービス向上を同時に実現しました。

同町がデマンド交通に導入したのは、CTI(Computer Telephony Integration Systemの略。電話とコンピュータの統合システム)受付システムと業務用カーナビ。利用者の住所を打ち込むことでもっとも最適なルートがシステム内で自動作成され、デマンドバスのカーナビに迎え先を指示できる仕組みで、運行管理を効率化することができます。

こうしたICT技術の導入などで、同町では「交通空白地域0%」を達成するとともに、公共交通費用を6%削減しました。また、デマンドバス導入時に公共交通の利用者ニーズについて調査を実施し、その調査結果から利用者が減る休日は運行せず、コスト削減のため平日のみの運行としています。

事例③【IoTで鳥獣被害防止】五島市(長崎県)

五島市(長崎県)は深刻化する鳥獣被害に対応するためIoT捕獲システムを導入しています。これによりイノシシの捕獲数が増加するとともに、地域振興事業の一環に位置づけている“ジビエ事業”の安定化が図れています。

もともと、海に囲まれた福江島に位置する五島市にイノシシは棲息していませんでした。しかし、平成20年に初めて島内でイノシシが目撃されて以来、農作物が荒らされるなどの鳥獣被害が拡大。農家の営農意欲の減退を招くなど、地域に与える金銭的被害や精神的な悪影響が深刻化していました。

しかし、それまでイノシシが棲息していなかった五島市には狩猟者や捕獲業者が存在していませんでした。そのため市役所で専属班を組織して防護柵の設置などを行うことにしたものの、イノシシの繁殖力は強く、捕獲に慣れていない市役所専属班による対策にも限界がありました。

こうした困難な状況が好転したきっかけは、同市が平成29年から鳥獣被害防止を目的としたIoTシステムの運用を開始したことでした。これは、被害地域には出没検知センサーを、捕獲檻には捕獲検知センサーを設置して地図情報と連携させることで、出没や捕獲の状況などをリアルタイムで通知・可視化するIoTシステムです。導入後の捕獲数は前年比で一気に5倍以上へと急増しました。

また、移住者のジビエ活用のアイデアをきっかけに、同市は民間の食肉処理・販売会社とも連携。捕獲したイノシシを加工販売する取り組みを推進し、地方創生にもつなげています。

IoTシステムによって捕獲を効率化し、鳥獣被害をもたらすイノシシを「地域の資源」として有効に利活用している同市の事例は、持続可能な鳥獣被害対策のモデルケースであると言えるでしょう。

<参照元>
総務省「地方自治体における業務プロセス・システム及びAI・ロボティクスに関する研究会」
高島市ホームページ
井原市ホームページ
飯綱町ホームページ
五島市ホームページ
自治体通信 Vol.16「公共交通の運行効率を上げ『住民の足』を守る方法」
自治体通信 Vol.16「深刻な鳥獣被害問題が地域活性化の起爆剤に」
自治体通信 Vol.17「正確な封入・封かん作業を実現し住民からの信頼向上につなげる」「郵便物の集計作業にしばられずコア業務に専念できるように」

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