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ビッグデータ等の利活用推進に関する産官学協議のための連携会議について~第7回会議より【自治体事例の教科書】

ビッグデータ等の利活用推進に関する産官学協議のための連携会議について~第7回会議より【自治体事例の教科書】

平成30年5月23日に初回が開催された「ビッグデータ等の利活用推進に関する産官学協議のための連携会議」。今回は、この議事概要について解説します。

【目次】
■第7回会議で議題になった内容とは
■議題1:グリッドデータバンク・ラボにおける電力データ活用の取り組み 〜足立区様との検証活動〜
■議題2:労働ビッグデータの統計的利活用の可能性検討について

第7回会議で議題になった内容とは

この会議は、「公的統計の整備に関する基本的な計画」(平成30年3月6日閣議決定)を踏まえ、ビッグデータ等の利活用に関連する先行事例・研究の分析や、行政記録情報等を含む優先度の高いビッグデータ等の選定と応用の可能性についてを協議するものです。データを利活用するうえでの課題解決や優れた事例を集積し、各府省や地方公共団体、民間企業等におけるデータ等の相互的利用・活用を推進することを目的として開かれています。

今回、令和元年7月31日に開かれた第7回会議では「グリッドデータバンク・ラボにおける電力データ活用の取り組み 〜足立区様との検証活動〜」、「労働ビッグデータの統計的利活用の可能性検討について」が議題となりました。

議題1:グリッドデータバンク・ラボにおける電力データ活用の取り組み 〜足立区様との検証活動〜

まず報告されたのは、グリッドデータバンク・ラボと足立区による電力データ活用の取り組みに関して。

グリッドデータバンク・ラボとは2018年11月、東京電力パワーグリッドとNTTデータによって設立された、社会貢献や社会問題の解決、各業界の産業発展に向け、「スマートメーター」をはじめとする電力設備データの活用を推進する事業組合です。

2019年3月には関西電力、中部電力も参画。引き続き、活動趣意に賛同するさまざまな企業・団体とともに業種の垣根を超えた協創活動を目指しています。

「スマートメーター」とは、電力使用量を計測するメーターのこと。従来は月1回の検針で月ごとの総使用量を計測していましたが、スマートメーターなら電力使用量を30分単位で把握できます。

国の「エネルギー基本計画」では、このメーターを2020年代の早期に全国の全世帯・全事業所へ導入することを目標として設定。各電力会社が管轄区域で導入を進めています。

スマートメーターから得られるデータは、設備情報(位置情報)と電力量情報(電力データ)から構成されるもの。以下の特徴から、これまでの統計情報では解決できなかった課題への活用が期待されています。

・高い鮮度
・高い精度
・柔軟なエリア(商圏)設定ができる
・30分ごとの時間傾向分析ができる

スマートメーターデータから把握した世帯数を国勢調査、住民基本台帳と比較すると、スマートメーター統計データのほうが東京・蒲田3丁目で平均13%、早稲田鶴巻町で平均21%多くなることがわかりました。

このことから、国勢調査、住民基本台帳では捉えきれない世帯を把握できる可能性があることが考えられます。

スマートメーターデータをPOSデータや天候データ、公共・オープンデータ等の異業種データと連携させることで、都市計画や防災計画、商圏分析、見守りサービスなど、活用の幅の拡大が可能になり、電力を利用する全世帯の情報が網羅的に取得できるため、「情報の土台」としての活用が期待されています。

情報の土台としての電力データと異業種データを掛け合わせることで、インサイトを得られると推測されます。

電力データが活用可能な公共サービスの領域としては、以下のようなものが挙げられます。

・まちづくり/住宅
・福祉/健康
・地域文化/スポーツ
・暮らし
・仕事/産業
・子育て/教育
・環境
・防災/防犯
・各種事務

今回の足立区との検証活動の対象となったのは、空き家対策や災害対策における活用です。

少子高齢化や地方での人口減少などの理由によって、社会問題となっている空き家数の増加。それは、地域における景観や治安の悪化、住宅価値の下落といった「外部不経済」、土地や建物が有効活用されなかったり、住民誘致・住宅施策の非効率化といった「機会損失」を引き起こすと考えられ、各自治体で対策が検討されています。

足立区では、平成28年から平成30年にわたって複数回、空き家の実態調査を実施。
今回は、空き家調査におけるスマートメーターデータの可能性が検証されました。

スマートメーターデータを活用することによって期待されるのは、網羅性、鮮度・速報性のほか、低コストであることや省力化、付加価値性。会議では、検証結果として「スマートメーターデータによる空き家数推定の確からしさ」、「空き家対策におけるスマートメーターデータ活用の可能性」が報告されました。

また、隅田川や荒川など、川に囲まれている足立区は、台風や大雨による被災の危険性がある地域が多数存在。災害対策の重要度が高く、その高度化に力を入れている自治体です。

国勢調査等から得られた人口調査に基づき、地域防災計画を策定。国勢調査データは静的なものですが、そこにスマートメーターデータから得られる動的な人や建物の状態を組み合わせることで、防災の高度化が期待できるようなることがわかりました。

災害の予防段階においてスマートメーターデータから得られる情報は、昼夜帯の人口や通勤・帰宅時間、避難所の数、場所、収容数、備蓄の種類や量などで、災害発生時にも、時間とともに変化する在宅状況や避難状況、個人単位の安否確認が可能。復旧段階においては、停電エリアの可視化や復興状況(避難生活から通常生活への戻り)を捉えられます。

今回は「リアルな在宅状況の可視化による効果的な避難誘導の実現」に関するデモンストレーションが行われ、それに対する住民の声も報告されました。

これら区による検証によって示されたのは、スマートメーターデータから得られた情報の提供範囲を民間企業・団体まで拡大することで、より有効性の高い災害支援活動に繋がる可能性。さらなる発展的な取り組みに向けて、既存の制度やサービスを継続的に整備していくことが必要だと考えられています。

議題2:労働ビッグデータの統計的利活用の可能性検討について

次の議題は、リクルートキャリアから説明された「労働ビッグデータの統計的利活用の可能性検討について」。

まず、前回までのサマリとして、2017年7月に公表を開始し、四半期ごとの公表を継続している「転職時の賃金変動状況」に関する報告が行われました。

「転職時の賃金変動状況」は、前職と比べ賃金が明確に(1割以上)増加した転職決定者の割合を算出したもので、採用や従業員の離職防止を考える企業によって重要な指標になるのではないかと考えられています。

企業人事の利用/意識変化についての調査において、はじめ、賃金制度変更の検討に関して「必要なし」と回答したのは505人でした。

しかし下記内容を閲覧後は、先述の505人のうち、半数以上の301人が「必要あり」と回答を変更しました。閲覧した内容は次のとおりです。

・採用競争が過熱するなか、転職後に収入が増加するケースが増加している
・転職時に明確に(1割以上)賃金が増加した転職者の割合は、2013年頃から年々高まり、直近ではリーマンショック前(2007年)の水準を大幅に超過している
・企業にとって、この指標は「新たな人材の獲得や離職防止のために、賃金を上げざるを得ないという圧力」として解釈できる
・求職者にとっては「転職によって賃金が上がる可能性」を示すものとして利用可能

日本では伝統的に内部労働市場型の企業が多数派であるものの、トレンドとして外部労働市場を積極的に活用する企業が増加しています。そのため、マクロの賃金動向をみる際には、春闘の結果など「内部労働市場からの圧力」と「外部労働市場からの圧力(=転職時の賃金変動状況)」を切り分けて観察する必要があるのではないかと考えられています。

今回新たに提案されたのは、リクルートキャリアの業務ログから得られるデータを用いて、転職時の賃金変動状況を速やかに予測する指標の作成の検討。総務省と共同で実施している「労働ビッグデータを活用した共同研究(略称)」です。

厚生労働省の「雇用動向調査」では、2019年8月に2018歴年の情報が公表される予定です。対して、リクルートキャリアの「転職時の賃金変動状況」では、2018年7月に同年4月〜6月の内定者情報を集計・公表。このことから「転職時の賃金変動状況」には、高い速報性があることがわかります。

今回使用したデータは「民間職業紹介所」に相当するサービスの業務ログであり、雇用動向調査によれば、この経路による転職入職者は全体の6%ほどに過ぎません。

ビジネスモデル上、ある程度の相関関係にあると考えられる広告からの入職経路を加えても全体の37.8%。時系列特性が少々異なると考えられる残りの約60%に関しては、技術面での工夫によって予測精度が示せるかを確認する必要があると思われます。

今後に関しては、2019年8月中旬〜9月頃に雇用動向調査の個票データを取得/分析開始。2020年1月〜2月頃には、今回の取り組みによる速報指標を作成し、本連携会議での報告を予定しています。その際、2019年7-9月期/10-12月期分の「転職時の賃金変動状況」を外挿。2020年4月には、2020年1-3月期分を外挿するスケジュールを想定していることが報告されました。

以上が、第7回 ビッグデータ等の利活用推進に関する産官学協議のための連携会議の議事概要です。

【参考文献】

総務省_「公的統計の整備に関する基本的な計画」
(https://www.soumu.go.jp/toukei_toukatsu/index/seido/12.htm)

統計制度
(https://www.soumu.go.jp/toukei_toukatsu/index/index.htm)

総務省_統計法について
(https://www.soumu.go.jp/toukei_toukatsu/index/seido/1-1n.htm)

総務省_ビッグデータ等の利活用推進に関する産官学協議のための連携会議
(https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/big_data/index.html)

総務省_「ビッグデータ等の利活用推進に関する産官学協議のための連携会議」の開催
(https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01toukatsu01_02000136.html)

総務省_第7回 ビッグデータ等の利活用推進に関する産官学協議のための連携会議議事概要
(https://www.soumu.go.jp/main_content/000641042.pdf)

総務省_グリッドデータバンク・ラボにおける電力データ活用の取り組み〜足立区様との検証活動〜
(https://www.soumu.go.jp/main_content/000639229.pdf)

労働市場のビッグデータ:経済統計としての活用可能性②
(https://www.soumu.go.jp/main_content/000636830.pdf)

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