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ビッグデータ等の利活用推進に関する産官学協議のための連携会議について~第6回会議より【自治体事例の教科書】

ビッグデータ等の利活用推進に関する産官学協議のための連携会議について~第6回会議より【自治体事例の教科書】

平成30年5月23日に初回会議が開催された「ビッグデータ等の利活用推進に関する産官学協議のための連携会議」。今回は、その第6回会議の議事内容を見ていきましょう。

【目次】
■「ビッグデータ等の利活用推進に関する産官学協議のための連携会議」とは
■議題1:メッシュ型流動人口検証WGの結果報告について
■議題2:ビッグデータを活用した新指標開発事業(経済産業省の取組)について
■新指標開発事例:POSデータを活用した新指標開発
■新指標開発事例:SNSの書き込みログを活用した新指標開発
■ビッグデータを活用した商業動態統計調査(試験調査:家電大型専門店分野)について
■2019年度の取組について

「ビッグデータ等の利活用推進に関する産官学協議のための連携会議」とは

この会議は、「公的統計の整備に関する基本的な計画」(平成30年3月6日閣議決定)を踏まえ、ビッグデータ等の利活用に関連する先行事例・研究の分析や、行政記録情報等を含む優先度の高いビッグデータ等の選定と応用の可能性についてを協議するものです。データを利活用するうえでの課題解決や優れた事例を集積し、各府省や地方公共団体、民間企業等におけるデータ等の相互的利用・活用を推進することを目的として開かれています。

令和元年5月22日に開催された第6回会議では「メッシュ型流動人口検証WGの結果報告について」、「ビッグデータを活用した新指標開発事業(経済産業省の取組)について」が議題となりました。

議題1:メッシュ型流動人口検証WGの結果報告について

1つめの議題となったのは「メッシュ型流動人口検証WGの結果報告について」。ワーキンググループ主査である国立情報学研究所准教授・水野貴之氏から説明が行われました。

メッシュ型流動人口検証WGとは、民間から提供される流動人口データの信頼性や利活用をするうえでの有効性を検証するものです。東京都における携帯端末搭載のアプリGPSデータ(Agoop社の流動人口)と下記の2つのデータを比較した分析がなされました。

・国勢調査データ(公的統計)
・高精度と想定される基地局データ(NTTドコモのモバイル空間統計(R))

検証方法は、散布図を展開し相関係数を算出します。さらに、メッシュコードに対応する2つのデータの差率を算出して差率平均と標準偏差を割り出し、ヒストグラムを作成します。相関から外れたデータ(外れ値)や差率分布を地図上で可視化し、エリア的側面からの特徴が分析されました。

その結果、GPSデータは国勢調査や基地局データと相関があること、国勢調査データを補うものとして有効であることがわかりました。

さらに、以下のことに留意することによって、より効果的な利活用ができると考えられます。

・国勢調査の差率標準偏差を基準にした場合、2,000人以上のメッシュで一定レベルの信頼性をもつこと
・時間帯別データでは、国勢調査で捉えることが難しい余暇・消費活動等による人の動きを把握していること
・都心ターミナル駅や海岸沿いといった隣接するメッシュ間の人口差が大きいエリアでとりわけ有効であること
・アプリ利用者属性に起因する標本の偏りがあること

今後の展開としては、地域を全国に広げて検証を行うことを予定しています。今回の検証によって、バイアスが場所の属性に依存していることがわかりましたが、それらのエリアにおいては、各場所の属性情報を整理し、換算係数のようなものを作成して誤差を修正していくことによって、より推定値がよくなるのではないかと考えられています。

出席者からは、ビジネス的観点において、GPSデータは国勢調査の常住地人口では把握できない「ある時点・ある場所に実際にどれだけの人がいるか」がわかる点に価値があると考えるという意見がありました。

議題2:ビッグデータを活用した新指標開発事業(経済産業省の取組)について

次の議題は、ビッグデータの利活用に関わる経済産業省の取組についてです。民間企業がもっているPOSデータや、仮想空間に蓄積されているSNSデータ等のビッグデータを活用して政府統計を補完・拡充・詳細化し、従来の統計よりも速報性に優れた新指標を開発することを目的とした取組です。

POSデータ、SNSデータ、政府統計といったビッグデータ等の新たなデータ源や、演算処理の高速化により実現した高度な解析・AI技術。それらを活用することのメリットとして、政府による正確な景気判断と迅速な政策決定ができること、民間企業においても的確な経営判断とスピーディーな意志決定ができることが挙げられています。

新指標開発事例:POSデータを活用した新指標開発

新指標開発事業における全体スケジュールのファーストステージとして行われたのは、小売業の中でも「家電」分野に限定した実証の先行的実施です。「家電」分野のPOSデータを収集し、既存の政府統計(商業動態統計調査(「家電大型専門店))の代替や補完ができる新たな指標の開発等が行われました。

GfK Japanの協力を得て開発されたのは、家電大型専門店(家電量販店)の販売動向をPOSデータで集計した指標「POS 家電量販店動向指標」。販売動向を日次で把握することが期待されています。

新指標開発事例:SNSの書き込みログを活用した新指標開発

POSやSNS等のビッグデータと政府統計データ等を連携させた、より有用性の高い新指標も開発しました。その事例として挙げられるのが、野村證券の協力を得て開発したSNSの書き込みログを活用した新指標「SNS×AI 景況感指数」と「SNS×AI 鉱工業生産予測指数」です。

「SNS×AI 景況感指数」は、人工知能が景況感に関連するキーワードを抽出し、センチメント(ポジティブ/ネガティブ)分析を行うことで算出される指数です。従来の統計調査では把握することが難しかった、日ごとの景況感を推測します。

「SNS×AI 鉱工業生産予測指数」は、人工知能によって抽出された仕事・景気に関連する書き込みと統計等の「オープンデータ」を組み合わせ、機械学習の手法を用いて鉱工業生産指数を予測するものです。

以上のようにこの取組では、民間企業におけるSNSデータとAI技術を活用した新ビジネスの創出も実現しています。

ビッグデータを活用した商業動態統計調査(試験調査:家電大型専門店分野)について

平成30年度には、ビッグデータを活用した商業動態統計調査が行われました。「POS等ビッグデータを活用した新たな調査方法」の導入は、公的統計調査として初の試みです。POSデータの網羅性が高いこと、公的統計への実装可能性が最も高いことなどから、家電大型専門店市場を対象とした「商業動態統計調査(丁2調査)」に代替する統計調査を目指して実施されました。

ビッグデータを用いた統計調査の業務フローを構築してプロセスを検証し、既存の統計調査手法では実現が困難な「報告者負担の軽減化」、「統計調査業務の効率化」、「公表の早期化」、「景気動向把握の向上に資するための把握内容の詳細化」といった課題解決に向けた効果の測定が行われました。

この実地検証によって、基幹統計として社会実装を行うための実現可能性の精査に必要な基礎資料を獲得しました。

試験調査の結果としては、たとえば空調家電では、週ごとの販売実績を把握することで、気象情報を組み合わせた販売動向の分析が可能だということがわかりました。都道府県別の商品販売動向では、週次の販売実績を捉えることで、イベントや政策、自然災害等の影響もより詳細に測定できるようになることも明らかになりました。

集計結果においても、従来は区分できなかったEC販売実績や、都道府県別商品別販売実績が把握できるようになるほか、商品分類別の構成比も、従来の6分類から12分類に細分化することが可能となりました。

本体調査との比較もされ、商品分類別販売額では分類によって本体調査との差異にばらつきが見られる結果となりましたが、商品販売総額の推移においては非常に高い相関があることがわかりました。

2019年度の取組について

令和元年度「ビッグデータを活用した新指標開発事業(短期の販売・生産動向把握)」では、POSデータや行政記録情報等のビッグデータを活用し、従来の統計よりも速報性の高い指標を開発。

既存の政府統計や業界統計等を集約・整理し、ダッシュボード化することで、令和元年10月の消費税率引き上げが与える景気への影響を平成26年の引き上げ時と比較して、その特徴を明らかにすることを目的としています。

「第6回 ビッグデータ等の利活用推進に関する産官学協議のための連携会議」では、以上、大きく分けて2つの事項に関しての協議が行われました。

【参考文献】

総務省_「公的統計の整備に関する基本的な計画」
(https://www.soumu.go.jp/toukei_toukatsu/index/seido/12.htm)

農林水産省_農山漁村地域整備交付金における重点事業統計制度
(https://www.soumu.go.jp/toukei_toukatsu/index/index.htm)

総務省_統計法について
(https://www.soumu.go.jp/toukei_toukatsu/index/seido/1-1n.htm)

総務省_ビッグデータ等の利活用推進に関する産官学協議のための連携会議
(https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/big_data/index.html)

「ビッグデータ等の利活用推進に関する産官学協議のための連携会議」の開催
(https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01toukatsu01_02000136.html)

ビッグデータ等の利活用推進に関する産官学協議のための連携会議構成員名簿
(https://www.soumu.go.jp/main_content/000552230.pdf)

総務省_東京都における流動人口データの有効性の検証~メッシュ型流動人口検証WG結果報告~
(https://www.soumu.go.jp/main_content/000621132.pdf)

経済産業省_ビッグデータを活用した新指標開発事業(経済産業省の取組)について
(https://www.soumu.go.jp/main_content/000621133.pdf)

経済産業省_ビッグデータを活用した新指標開発の概要
(https://www.soumu.go.jp/main_content/000514024.pdf)

経済産業省_「ビッグデータを活用した商業動態統計調査(試験調査:家電大型専門店分野)」の検証結果について
(https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/bigdata_syoudou/pdf/
20190524_hikakukekka_honbun.pdf
)

経済産業省_説明資料(ビッグデータを活用した商業胴体統計調査(試験調査:家電大型専門店分野))
(https://www.soumu.go.jp/main_content/000627064.pdf)

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