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自治体の業務継続計画(BCP)について【自治体事例の教科書】

2020/04/30

自治体の業務継続計画(BCP)について【自治体事例の教科書】

災害が起こったとき、住民はもちろん店舗や事務所、さらには市町村役場など行政に携わる団体・機関も大きな被害を受け、機能しなくなってしまうことを考えなくてはなりません。災害が大規模である場合、市町村は災害の対応において主体的な指示・動きが求められます。災害が起こることを想定し、市町村は被害を受けても一定の業務を行うことができるよう努め、業務継続計画(BCP= Business Continuity Plan)を策定する必要があります。日本ではどのような方針がとられているのか、内閣府(防災担当)が定めた業務継続計画作成ガイドの内容を見てみましょう。
【目次】
■内閣府_市町村のための業務継続計画作成ガイド
■総務省消防庁_地方公共団体における業務継続計画策定状況の調査結果

内閣府_市町村のための業務継続計画作成ガイド

平成27年5月、内閣府(防災担当)によって取りまとめられたのが「市町村のための業務継続計画作成ガイド」です。前述のとおり、大規模災害が発生した際にも市町村はとても重要な役割を担うことになります。しかし、過去の災害では市町村役場をはじめとする地方公共団体への被害があった際、災害対応ができなくなったケースも複数ありました。以下にその事例を示します。

・台風第26号による大雨(平成25年)
大規模な土砂災害が発生しましたが、町長および副町長は島外に出張中であり、防災担当者は帰宅して不在だったため初動が大幅に遅れました。

・東日本大震災(平成23年)
被災によって本庁舎が使えなくなった市町村が28あり、庁舎内の重要データが失われてしまったケースも多数ありました。

・年末年始豪雪(平成22年~23年)
豪雪により停電が起こりましたが、電力会社も修理現場に行けず復旧が遅れた事例です。庁舎に非常用発電機はあったものの、燃料はわずか半日しかもたなかったケースです。

・新潟県中越地震(平成16年)
停電によって県の防災業際無線は使用できなくなり、庁舎3階に設置されていた同報無線も使用不能になりました。

このように、庁舎が直接被害を受けたことで災害対応にあたることができなくなったり、市町村長の不在によって初動が遅れてしまったりすることが実際にあったため、災害時にこのような事態が発生した場合でも、一定の業務ができるように計画しておく必要があります。各市町村は業務継続計画を策定し、その対策を事前に準備するというのが、業務継続計画の趣旨です。

いつ・どこで発生するかわからない災害ですが、市町村における業務継続計画の策定状況は、わずか13%にとどまっています(平成25年8月現在・消防庁調べ)。人口の少ない市町村ほどその傾向は強く、職員の少なさ・庁舎の耐震化の遅れなどの課題が浮き彫りになっており、全国各地で災害が起こる頻度が増えていることからも、早急に業務継続計画を策定しなくてはならないでしょう。

では、市町村が策定する業務継続計画について、重要な6つの要素を見てみましょう。

・首長不在時の明確な代行順位及び職員の参集体制
・本庁舎が使用できなくなった場合の代替庁舎の特定
・電気、水、食料等の確保
・災害時にもつながりやすい多様な通信手段の確保
・重要な行政データのバックアップ
・非常時優先業務の整理

これらの要素をもとに策定された業務継続計画は、全庁にとって非常に重要な意味をもつことになるため、全部署が協力する必要があります。さらに、いったん策定したからといって災害発生時までそのままにするのではなく、計画の実効性を確認するためにも教育・訓練を繰り返し実施することが求められます。非常参集訓練のほか、安否確認訓練、非常通信訓練、情報システムのバックアップや復旧訓練などさまざまな内容があり、この訓練によってあらわれた課題や改善点をもとに、さらなる業務継続計画の改善(改訂)・反映が必要です。

たとえば、過去の研修会参加者からは次のような気づきの声があがっています。

・災害時、職務代行者が自分の役割を自覚した
・非常用発電機の電気は一部のフロアにしか供給されないことがわかった
・衛星携帯電話があっても使い方がわからなければ意味がないとわかった

このように、ただ業務継続計画を策定して書類に残しておくだけでなく、その内容を実践的に確認し、適宜改善していくことが大切です。

また、一般家庭の備蓄同様に、市町村庁舎においても電気・水・食料をはじめとした必要資源の備蓄・設備増強が求められます。非常時に業務継続計画をもとに災害対応にあたるためには、実際に対応を行う人員のための資源が必要不可欠だからです。

そして、災害時には通常時の業務に加えて早急な対応をしなければならないことが増えます。たとえば、罹災証明書の発行や行政からの援助・支払いの免除を受けるための申請などがあるでしょう。他の地方公共団体からの応援を受け入れる際にはどのような業務を任せるのかも想定しておきましょう。また、応援の人員が活動する事務所や宿泊場所を検討しておくなど、非常時ならではの事態を想定した動きを盛り込むことが求められます。

たとえ新耐震基準の庁舎であっても代替庁舎を決めておく、災害時に利用する通信機器をあらかじめ確保しておくなど、災害対応を行うにあたり具体的な業務を考えた動きも必要です。想定外の地震がやってくることや、地震以外の津波・水害・火災などの災害が起こることを想定して代替庁舎を特定し、防災行政無線や衛星携帯電話の活用を視野に入れ、使い方を職員に周知しておく必要があるでしょう。

このように、地方公共団体における業務継続計画を策定することは、住民の暮らしを守ることはもちろん、行政の動きをストップさせないこと、被害拡大を食い止めるために重要であることがわかります。

総務省消防庁_地方公共団体における業務継続計画策定状況の調査結果

次に、「市町村のための業務継続計画作成ガイド」が作られた後に、業務継続計画が全国の地方公共団体でどのくらい策定されているかという状況を調査した総務省消防庁による「地方公共団体における業務継続計画策定状況の調査結果」を見てみましょう。

調査基準日は平成30年6月1日、全国の都道府県47団体・市町村1,741団体が調査対象です。策定率が100%になっている都道府県もあるものの、100%に満たないところも少なくありません。このうち、都道府県の策定状況を見てみると、市町村数の数に関係なく策定率が100%になっているところが多くあります。

たとえば、北海道です。市町村数は179と全国でもっとも多いものの、業務継続計画策定率は100%。地震をはじめ、雪害や台風などの水害を数多く経験していることから、業務継続計画策定が重要であることを物語っています。同様に、阪神淡路大震災経験のある大阪府・兵庫県もともに40を超える市町村を有していますが、どちらも策定率は100%。さらに西日本豪雨や鳥取県沖地震を経験している鳥取県・島根県もともに100%の策定率を実現しています。

消防庁は、まだ未策定の団体に早期に業務継続計画を策定して教育・訓練を行い、この計画の実効性を高めるように通知を出しました。また、市町村の担当職員を対象に、内閣府と共催で研修会が行われています。年度ごとに研修が行われる都道府県は異なっていますが、平成30年度は青森県・東京都・沖縄県が、平成31年度も引き続き実施予定があり、各都道府県・市区町村が策定した業務継続計画をより現実的なものにするための取り組みが行われています。

〈参照元〉

内閣府_市町村のための業務継続計画作成ガイド
(http://www.bousai.go.jp/taisaku/chihogyoumukeizoku/pdf/H27bcpguide.pdf)

総務省消防庁_地方公共団体における業務継続計画策定状況の調査結果
(https://www.fdma.go.jp/pressrelease/houdou/items/301226_houdou_1.pdf)

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