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課長になったら読む~自治体の実践コンプライアンス

【自治体通信Online 寄稿記事】
自著書評(調布市 職員・花岡 大)

多くの自治体がコンプライアンス研修に力を入れています。なかでも部下の指導や組織管理に当たる課長職の自治体職員にはコンプライアンス知識は必須。でも、その知識を自分の課でどう実践すればいいのだろう―? こうした悩みに応える書『課長になったら読む 自治体の実践コンプライアンス』(学陽書房)を調布市(東京)職員・花岡 大(はなおか ひろし)さんがこのほど出版しました。花岡さんは各地の自治体でコンプライアンス研修講師を務める第一人者。自治体の現場に沿ったコンプライアンス実践法を具体的に紐解いた本書の内容や特徴などを花岡さんに解説してもらいます。

“消化不良”を解消する書

本書『課長になったら読む 自治体の実践コンプライアンス』(学陽書房)のタイトルをご覧になって、「コンプライアンスって実践できるものなの?」と疑問に思われた方も多いでしょう。

自治体で行われる一般的なコンプライアンス研修といえば、法律の専門家の先生から、法令の仕組みを教わり、「こうした公務員はけしからん」と不祥事の事例を紹介される。だいたいこんなイメージでしょうか。法令の制度や仕組みはわかった。でも、「それで、自分はをしたらいいの?」となり、コンプライアンスについては消化不良のまま、結局、なんにも変わらないままで終わってしまいます。

これではもったいない。毎年、コンプライアンスの研修をやっても意味がありません。

この管理職が行うべき「」に答えるのが本書です。

これまで私は全国さまざまな自治体でコンプライアンス対策やハラスメント防止の研修に携わってきました。研修で求められることは、「どうしたら職員の不祥事を防げるか」。研修の企画担当の方から、コンプライアンスを職員に浸透させるにはどうしたら良いかと相談されます。

職員の不祥事を根絶するためには、最終的に、職員個々の意識に行き着きます。そのため、研修で心掛けてきたのは、コンプライアンスが必要であることを、いかに受講生に「自分事」としてとらえてもらうかです。

そこで、この本では、これまでの研修の経験を生かしながら、版元の学陽書房の編集の方ともご相談して、読者の管理職のみなさんに、すべて「自分事」としてとらえてもらえるように、さらに、部下の職員に「自分事」でとらえてもらえるようにはどうしたらいいか、こちらを強く意識して解説しました。


本書の表紙カバー

《目次》

  • CHAPTER1:職場コミュニケーション編
  • CHAPTER2:部下の指導・育成編
  • CHAPTER3:住民・事業者・議会編
  • CHAPTER4:情報・デジタル・環境編
  • CHAPTER5:トラブル対応編
  • CHAPTER6:コンプライアンス概要編

小テスト その①~管理職自身のコンプライアンス

早速ですが、以下の質問に、「はい」か「いいえ」で答えてみましょう。

①職場の規律を維持するには、上下関係が大切だ
【□はい □いいえ】

②仕事のために交換した無料通信アプリの連絡先を私用にも使っている
【□はい □いいえ】

③ひ弱な男性職員のことを「男なのに情けない」と感じる
【□はい □いいえ】

④議員のお願いであれば、職員に無理をさせてでも実現させたいと考える
【□はい □いいえ】

①のテーマはパワハラです。
実は、規律の厳しい職場ほどパワハラが起きやすいのです。つまり、「はい」と答えた方には、気づかないうちにパワハラ気質が備わっているおそれがあります。

②のテーマはセクハラ。
最近では、緊急時の連絡手段として、無料通信アプリの活用も広がっています。便利な反面、使い方を間違えると、セクハラなんてことに。

③は職場のダイバーシティ(多様性)がテーマ。
管理職が育ってきた時代と、現代の世相では、男女に関する認識に大きな隔たりがあります。「はい」と答えた方は、固定的な性別役割分担意識にとらわれている危険があります。

④は職場からの信頼がテーマ。
「はい」と答えてしまった方。自己保身は職場からもっとも嫌われる言動のひとつですよ。

本書では、最初に、こうした管理職自身のコンプラ違反の防止について、「1 職場コミュニケーション編」として解説を始めます。

コンプライアンスの目的と効果

以下、本書の構成を紹介しましょう。

2は「部下の指導・育成編」。
部下の仕事が危なっかしい。職員にコンプライアンスの意識が欠如している。研修の受講生からもよく聞かれるこうした管理職の悩みに答えていきます。また、近年、公務員にも広がってきた「副業」のテーマも取り扱います。

3は「住民・事業者・議会編」。
コンプライアンスにおいてさまざまなリスクのある対外的な関係をテーマに取り扱います。管理職は、住民や議会への説明も求められます。中でも、特に悩む管理職の多い議員との関係や議会答弁のポイントについても解説しています。

4は「情報・デジタル・環境編」。
情報管理、デジタル技術革新、環境対策といった新しい問題を題材に、コンプライアンスにおいて注意すべきことを解説します。

5は「トラブル対応編」。
実際に、不祥事やトラブルが起きてしまったら、どう対処したらいいか。管理職にとって重要な場面になります。危機時の対処法を解説します。

最後に、「6 コンプライアンス概要編」で自治体のコンプライアンスについてまとめます。

全体を通して著者が伝えたかったのはコンプライアンスの目的と効果です。それぞれのテーマでは、その解説・事例への対処法に加え、+αとして、類似の事案や応用できる場面についても紹介しました。

小テスト その②~新たなコンプライアンス

さらに、ホットな話題も豊富に取り上げました。みなさんは次のような問題に対処できる自信がありますか?

➊住民窓口で、職員が来庁者から執拗に責め立てられている

➋「自治体の取引先企業に海外で労働搾取などの人権侵害の疑惑がある企業がある」と住民からクレームが来た

➌会議でペットボトルのお茶を出したら、出席委員から環境への配慮が足りないと指摘された

➊は「カスタマーハラスメント」の問題。
顧客からの嫌がらせに対し、民間企業ではすでに対策が始められています。職員が安心して働けるよう、ハラスメント対策のひとつとして、自治体でも対応が求められます。

➋は「人権デューデリジェンス」の問題。
ファストファッションやスポーツブランドの企業の取引先企業が問題視されていたのを報道でご覧になった方もいるでしょう。何も取引先企業を抱えるのは民間に限らず、自治体も同様です。

➌は「SDGs(持続可能な開発目標)」の問題。
SDGsでは、あらゆる主体で環境対策が求められますが、自治体は率先して取り組む必要があります。

こうした新しい問題を急に突き付けられてしまっては、管理職も困ってしまうでしょう。 そうならないよう、こうした新しい話題にも注意を払い、備えておくことが肝要です。

また、全般を通して、コロナ禍による「新常態(ニューノーマル)」の観点も意識して解説しています。

課長にとってコンプライアンス推進は「一石二鳥」の効果!

本書では、思わずハッとして目を覆いたくなってしまうような、実際に起きた数々の不祥事の事例を題材にして、テーマごとに解説しています。「こんなとき、どうするのか」。みなさんと同じ現役職員の目線で解説しました。管理職のみなさんには、コンプライアンスの問題をリアルに感じていただけると思います。

実のところ、コンプライアンスを推進することで得られる効果は、管理職ご自身の仕事を「ラク」にしながら、住民サービスの向上を図ることができることなのです。この本をお読みになって、そう感じてもらえたら、著者の狙いどおりです。

住民のため、日々、悩み、奮闘する管理職のみなさんの気持ちに寄り添い、共感してもらえる内容となっておりましたら、望外の喜びです。

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花岡 大(はなおか ひろし)さんのプロフィール

調布市都市整備部次長(2022年4月より現職)
1996年東京都調布市入庁。政策企画係長、教育委員会指導室係長、財政課課長補佐、保険年金課長、都市計画課長などを経て2022年4月より現職。
各地で自治体職員向けコンプライアンス推進研修の講師を務める。
著書に『自治体職員のためのやさしい債権管理ハンドブック』(第一法規)、『これからの公務員のための実践コンプライアンス』(共著、第一法規)などがある。
2022年5月に新著『課長になったら読む 自治体の実践コンプライアンス』(学陽書房)を出版。諸先輩方から仕事を教わり、インプットを積み重ねてきたものを、指導する側の立場になり、その恩を返せるよう、今度は、これらをアウトプットして、後進へとつなげていきたいとの思いで執筆に励む。

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