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自治体を進化させる公務員の新改善力

自治体を進化させる公務員の新改善力

【自治体通信Online 寄稿記事】
自著書評(株式会社スコラ・コンサルト 行政経営デザイナー/特定非営利活動法人 自治体改善マネジメント研究会 理事長・元吉 由紀子)

人口減少、新型感染症、自治体DXなどを例にとるまでもなく、これまで「当たり前」と思っていたさまざまな前提が大きく変化しています。ふと振り返れば、地域社会が自治体に期待することや仕事の進め方も10年前とは変わっているのではないでしょうか。こうした、先の見えない、前例が通用しない状況変化に自治体や自治体職員はどう対応すべきか―。こうした壮大なテーマを7人の自治体職員の実践事例を「改善活動の12場面」に分解して解き明かしたのが今回ご紹介する『自治体を進化させる公務員の新改善力~変革×越境でステップアップ』(編著、公職研)。著者の元吉 由紀子さんに本書の思い、ポイントなどを解説してもらいます。危機的な変化こそ“進化”のチャンスです!

VUCA時代に求められる新しい改善に必要な“進化力”

新型コロナウイルスによる世界的なパンデミックが起き、加速したデジタル化で人々の働き方、暮らし方は大きく変わりました。また、地方創生の取組では、自治体がそれぞれのめざすビジョンと戦略を掲げ、独自の施策を打ち出すようになりました。地域のイノベーションに向けた自治体とパートナーとの関係は、住民との協働から、多様に公民連携・共創する関係へと広がりました。

自治体の職場においては、このような環境の変化をとらえ、柔軟かつ俊敏に変化対応するために改善運動の必要性がますます高まっています。そこで、職員の改善に向けた気概を高める助けとなる本が必要だとの思いが本書『自治体を進化させる公務員の新改善力~変革×越境でステップアップ』(編著、公職研)を書いたきっかけです。

みずから変化に応じた対応をしていくための改善は、何も危機に際した場合にのみ必要なわけではありません。これから先、予測困難な変化がいつでも起こりうるVUCA(*脚注)時代には、この変化への対応力は、どんな仕事においても常に求められるようになってきます。
(*脚注)VUCA:Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字を取ったビジネス用語。未来予測が難しくなる状況のことを意味する。読みは「ブーカ」。

本書では、既に決定された計画のもとで、よりよく処理していくための改善と、まだ明確に何をやればよいのかが決まっていない状況で、新しい方向性や方策を創り出していく改善を区別し、後者を新しい時代の改善として、そこに求められる能力・スキルを “進化力”として定義しました。

この進化力を、自治体職員のみなさんがこれまでどのように身に付け、また、今後どのように身に付けていけばよいのかについて、お伝えしています

■本書の概要
本書の表紙カバー

【目次】
第1章 新時代の自治体改善とは?
第2章 新時代の改善アプローチ
第3章 自分自身を進化させる
第4章 職場を進化させる
第5章 役所全体を進化させる
第6章 住民・地域との関わり方を進化させる
第7章 新時代のキャリアは自分で身につける

危機に対応しながら生み出された数多くの改善

新型コロナウイルスへの対応が始まって3年、当初はこの危機への対応が、こんなにも長く続くとは誰も予想できませんでした。それが今では、日常どこにでもあり得る危機のひとつとなってきています。

自治体職員のみなさんには、住民の生命と財産を守る使命を果たすため、最大限のお力を発揮されてきたことと思います。その中では、すでにいくつかの進化力を発揮された場面がありました。

コロナ対応は、感染に関わる検査や診療に携わる病院や保健所などの医療関係者だけで対応しきれるものではありませんでした。感染を防ぐためには、人々の暮らし方、働き方を大きく変える必要があり、学校や企業、交通や観光、経済、居住地までにも影響を及ぼすことになりました。

そのため、多様な機関どうしの連携、多職種間での協力が必要になっています。そこから新しい仕事のやり方、関わり方も数々生み出されて来ました。オンライン診療、オンライン授業、WEB会議、ワーケーション、ホテル療養や、スタジアムなどでのワクチンの大規模接種会場の開設など。

これらは、現場で個々の職員が主体的に状況をとらえ、判断して、周りに働きかけるところから、組織の縦割りを越えた“越境”によりつながりをつくっていくことが、住民の命と生活を支えるセーフティネットとなっています。

そこから、新しい“変革”を生み出していくにあたっては、フラットに話し合い、共に考え合って、みずから役割を担い、現場の問題をよりよく解決するアイデアを出し合って、改善を果たしていくプロセスを数多く生み出してきたのではないでしょうか。

“越境”ד変革”による12場面でとらえた職員の実践事例

本書では、コロナ禍に限らず、職員のみなさんが“進化力”を身近にイメージできるように、異なる自治体の7人の職員の改善事例をもとに解説しています。

■取組事例紹介

井上美乃里さん(静岡県富士市)、田中広毅さん(三重県松阪市)、東克宏さん(大阪府大東市)、山口和也さん(長崎県大村市)、西川展子さん(和歌山県)、及川慎太郎さん(北海道北見市)、西川和裕さん(京都府精華町)

※掲載順

それぞれの方には、

  1. 仕事をよりよくする改善に関心を持つようになった最初のきっかけとなる体験
  2. 自らが主体的に改善に取り組んで成功した最初の実践事例
  3. よりステップアップした改善に取り組んだ実践事例

これら3種類をあげていただきました。

  • 事業部門の職場でメンタルヘルスの問題にぶつかったときの事例
  • 企画部門で新しくまちのブランド強化を図ることになった事例
  • 情報管理部門で各窓口業務の改善について相談を受けた事例
  • 全庁を横断したDXのプロジェクトチームに参画して検討した事例
  • まちの40周年記念事業を担当したときの事例

等々。とてもバラエティに富んでいます。

これらを読み解くために、どこで取り組んだのか、改善活動を実施した対象範囲を「個人」「身近な職場」「役所全体」「地域や住民との関わり」の4つの“活動ステージ”からとらえ、また、改善を通じてどんな変化を及ぼしたのかを「不具合解消」「改善」「革新」の3つの“変革レベル”からとらえて、合計12の場面を設定し(下画像参照)、実践事例を「改善活動の12場面」に分解して再構成しました。事例をより深く読み解く参考になるでしょう。

本書より

進化力は「後付けキャリアデザイン」できる

本書を読み進めていくと、きっとご自身の経験と事例を重ね合わせてとらえられるところがあるでしょう。そして、自分の能力について、今までとらえていたキャリアとは異なる発見をされることができるのではないかと思われます。

自治体職員は、公権力を扱う仕事があることから、自分で異動先を決めることは困難なところがあります。上司でさえ、異動理由を部下に伝え、動機づけることをしていないのが、現状でしょう。また、キャリアをイメージするときには、政策分野別に描くことが多くあるため、異なる政策分野に異動することは“転職”と言われるほどスキルを引き継ぐことが難しいと思われていました。

でも、思うようなキャリアが積めないとあきらめる必要はなく、この進化力に関して見れば、むしろ予期しない変化への対応によって築かれるものですから、「偶然の出来事がキャリアに大きな影響を及ぼす」プランドハップンスタンス(*脚注)理論を活用することができ、後付けでキャリアデザインができることになります。
(脚注) プランドハップンスタンス:Planned Happenstance。「偶然に対してポジティブなスタンスでいる方がキャリアアップにつながる」という考え方のこと。「計画された偶然」「計画的偶発性理論」と主に訳される。

それゆえ、この12場面にご自身の改善経験をプロットしてご自身のキャリアマップを作成していけば、今後のキャリア開発に役立てることが可能となります。

進化は「協創するチーム」で実現していくもの

進化を実現するプロセスは、ひとりの能力で果たすものではなく、異なる強みを持つメンバーが、変革プロセスの段階に応じて、力を発揮しながらチームとして実現していくことが重要です。

  • 予め計画や指示命令がないことに対しても、主体的に変化をとらえること。
  • 「おかしいな」と感じたことを声に出して発信し、周りに働きかけて一緒に対話する場をつくること
  • 前例にないことでも、柔軟に今ある制約要件を超えたゼロベースの発想で、どうすればいいかのアイデアを生み出していくこと
  • 失敗してもくじけずに試行錯誤していくこと

上記の変革プロセスと職員それぞれのキャリアマップから強みを把握し、力を合わせる組み合せを図ることによって、組織としての進化力を高めていくことが可能となります(下画像参照)

本書より

本書では、これら進化を実現するプロセスに求められる能力・スキルについては、社会人基礎力をもとに詳述しています。

ぜひご一読のうえ、みなさんご自身の、そして、今後の職場や自治体の進化力の養成にお役立ていただければと存じます。現在事例執筆メンバーと出版後の記念イベントを企画検討中です。読書会、セミナーなどのご要望がございましたら、読後の感想とともに、ぜひお気軽にお寄せください。

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■元吉 由紀子(もとよし ゆきこ)さんのプロフィール

株式会社スコラ・コンサルト 行政経営デザイナー/プロセスデザイナー
特定非営利活動法人 自治体改善マネジメント研究会 理事長
神戸市出身。大手鉄鋼メーカーを経て、株式会社スコラ・コンサルトへ。
企業風土改革を支援する一方、阪神・淡路大震災の被災経験から、組織・地域を越えて連携する公務員のコーディネート機能の重要性を痛感して、自治体の風土改革に活動の中心を移す。
1999年以降三重県や横浜市をはじめとした地方自治体、中央省庁、公共組織への支援を行う。階層、部門、組織を超えた対話から協創関係を築き、時代最適の価値を創造し続ける、進化する経営を実現できるよう、首長や職員と一緒に変革プロセスをつくっている。行政組織開発、行政経営システム機能強化、組織マネジメント力向上、次世代リーダー育成等の伴走支援型コンサルティング、セミナー、各種委員、講演を全国各地で行う。
2000年から「公務員の組織風土改革世話人交流会」を立ち上げ、運営・支援。2013年から公務員有志と「自治体改善マネジメント研究会」を発足、2017年特定非営利活動法人として理事長を務める。2020年から「オフサイトミーティング活用セミナー」で組織変革にチャレンジする公務員の実践とネットワークづくりを支援。
著書に『どうすれば役所は変われるのか』(日本経済新聞出版社)、『期待される役所へ~行政経営のムリ・ムダ・ムラを突破する!』(ぎょうせい)、『地方が元気になる自治体経営を変える改善運動』(編著、東洋経済新報社)。研究論文「地方分権時代における首長の政策ビジョンと政策過程に関する一考察」(自治体学会「自治体学」)他。
新著『自治体を進化させる公務員の新改善力~変革×越境でステップアップ』(編著、公職研)を2022年9月に刊行。
スコラ・コンサルトでは行政経営デザインラボ代表を務める。
〈行政経営デザインラボ〉http://gyousei-design.jp/
〈自治体改善マネジメント研究会〉http://jichitai-kaizen.net/

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