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自著書評(大阪市 職員・山中 正則)
福祉知識ゼロからわかる!

生活保護ケースワーカーの仕事の基本

プロフィール
山中 正則
《今回の「自著書評」の著者紹介》
大阪市 職員
山中 正則やまなか まさのり
大阪市 天王寺区 保健福祉課 担当係長(2022年5月現在)。1993年に大阪市に入庁。「福祉経験ゼロ」で生活保護ケースワーカーになり、その後、住所の無いケガ人・病人が入院した時の生活保護業務を担当する緊急入院保護業務センター、天王寺区でケースワーカー、SV(スーパーバイザー)を経験。生活保護関連通知・通達をキーワードから横断的に探すことができる「生活保護通知・通達総索引」を制作。防災士、地域の魅力を食を通じて紹介するグルメライターとしても活動している。2022年4月に『福祉知識ゼロからわかる! 生活保護ケースワーカーの仕事の基本』(学陽書房)を出版。 <Blog>https://utatane.asia/ <連絡先>gar@utatane.asia

さまざまな自治体業務のなかでも生活保護は特に難易度が高い仕事、と言われます。そのため新しく生活保護担当になった自治体職員のほとんどは“不安からのスタート”を余儀なくされているとも。そうしたなか、数多くある生活保護関連の専門書とは一味違う、実践的なノウハウや実務の「ざっくりした流れ」に焦点を当てたユニークな書『福祉知識ゼロからわかる! 生活保護ケースワーカーの仕事の基本』(学陽書房)を大阪市職員の山中 正則さんが出版しました。自身の経験に基づき、生活保護ケースワーカーが直面しやすい「どうする?」「困った…」に応えた本書の内容や特徴などを山中さんに解説してもらいます。

「福祉知識ゼロ」の人の不安を解消!

「生活保護は役所一の不人気職場」などと言われることがあります。

そんな生活保護の現場への異動は「異動ガチャ」とも呼ばれる畑違いの部署への異動に慣れた事務職の自治体職員にとっても不安が大きいことだと思います。

こんにちは、大阪市職員の山中 正則と申します。現在は天王寺区役所保健福祉課で、医師や保健師、栄養士、臨床心理士といった専門職の方に囲まれながら、健康推進や感染症対応などの事務を日々こなしている一般の事務職員です。

そんな専門職ではない一般の事務職員の私が、このたび『福祉知識ゼロからわかる! 生活保護ケースワーカーの仕事の基本』(学陽書房)を書かせていただきました。

この本は、私のように「福祉知識ゼロ」で生活保護を担当することになった新人担当者の疑問や不安を少しでも解消できるようにと考えて書いた一冊です。

初めて生活保護に携わることになった方にも、生活保護担当と関わることがある他部署の方にも、スムーズに仕事をするためのきっかけの一冊になれば嬉しい限りです。

《目次》第1章 はじめて生活保護ケースワーカーになるあなたに/第2章 ケースワーカー最初の一歩~生活保護の基礎知識~/第3章 家庭訪問をしよう!/第4章 まだまだ頑張るケースワーカーのお仕事~調査、指導・助言~/第5章 さけて通れない生活保護の適正運用の基礎知識/第6章 一人前のケースワーカーに導く+αの知識/第7章 新人ケースワーカーのお悩み相談室

“現場で使える知識”に特化

新しい仕事につくと、多くの場合、新人研修が行われます。

ところが、そういった研修の多くは、通り一遍の制度紹介や事務処理方法を詰め込むばかりで、新人担当者の疑問や不安を解消できるものになっていないように思います。

もちろん、即戦力として仕事するために必要な知識や事務を学ぶことは大切です。

ですが、そのもう一つ前に新人担当者が「よし、やるぞ!」と、思い切って仕事に取り組めるようなきっかけがあればいいなと考えました。

そのため、本書では生活保護の新人ケースワーカー向けにこんな工夫をしてみました

まず、各章の項目の多くを見開きの2ページで簡単にまとめました。

ページの最後にはその項目のポイントを一言で残し、どの項目から読んだとしてもひとつの気づきが得られ、すいすいと読み進められる構成を目指しています。

法律や制度の解釈など専門的な解説は、専門家が書く他書に譲り(そういえば、自治体通信Onlineでも素敵な書籍が紹介されていましたね)、初めてケースワーカーになった1999年の自分自身に話しかけることを想像しながら、書名どおり「福祉知識ゼロ」だった私が戸惑ったことや最初に知りたかったことにフォーカスをあて説明しています。

「最初に知りたかったこと」にフォーカス(画像は本書より)

一連の流れをザクッとつかめる

その一方で、被保護者への家庭訪問、そして不正受給の対応に関してはそれぞれ一章をあてました。

生活保護の業務にあたる中で、最初に戸惑うのが被保護者への家庭訪問や面接、指導や助言といったものです。様々な家庭環境や身体状況にある被保護者に適切な助言をしようと思うと、幅広い知識、そして経験が必要ではないかと思うかもしれません。

しかし、そういった知識、経験は一朝一夕に積むことはできませんので、本書では面接のテクニックなどは少なめに、家庭訪問に行く前の準備から、面接時に何を話したらよいのか、何を聞いたらよいのか、子どもとの面接の要否、そして訪問記録の書き方など一連の流れをザクッと把握できるように整理しています。

「フリマアプリで得た収入はどう処理する?」

不正受給の対応については、生活保護の業務の中でもネガティブな情報が巷に溢れていることもあって、事前の知識がない新人にとっては心理的な負担も大きくなります。

生活保護の不正受給を取り上げると、その善悪や不正受給額、裁判になれば福祉事務所、ケースワーカーの対応が正しかったのかなどに焦点があたりがちですが、ここでも新人ケースワーカーとして知っておいて欲しい不正受給への取り組み方を書きました。

また第7章は、現役のケースワーカー、SV(スーパーバイザー)の方に、新人だったときに対応に困ったことや分からなかったことをアンケートし、私がその相談を持ちかけられたSVならどう答えるだろうかと考えて回答を書く「新人ケースワーカーのお悩み相談室」を用意しました。

  • 「話し好きのおばあさんとの面接はどうする?」
  • 「家庭訪問時にお茶を出されたらどうする?」

といったほのぼのとした内容もあれば、

  • 「フリマアプリで得た収入はどう処理する?」
  • 「動画配信者になりたいと言って仕事を探さない人への指導は?」

といった私がケースワーカーだったときには考えられなかった質問もあって、回答の作成にも悩みましたが、そのおかげで今、生活保護の最前線のリアルな質問を収録することができました。

章間には、私自身がお世話になった先輩や、同じ福祉事務所で仕事をしていた後輩、他の自治体の現役ケースワーカーなどにお話を聞いた「はみ出しインタビュー」を入れました。

先輩や後輩など一緒に仕事をしていたときに聞くことのなかったことを聞けて、このインタビューは私自身も楽しかったのですが、それぞれの立場や経験からくる言葉は、本編とは違った視点から生活保護ケースワーカーの仕事の面白さなどを知ることができます。

生活保護ケースワーカーという仕事の魅力

生活保護ケースワーカーの仕事は、人々の「普通」を支えるプロの仕事です。

個人情報が満載で、仕事での悩みを職場以外では家族にすら打ち明けにくく、自身の想定外の出来事への対応を求められることも多く辛く感じることもあるでしょう。

ですが、幅広く様々な事例に対応する生活保護ケースワーカーの仕事での経験は、あなたの今後の公務員人生の大きな財産になると思います。

ぜひ、生活保護ケースワーカーの仕事を恐れずに、最初の一歩を本書を通じて歩んでいただければ幸いです。


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