
※下記は自治体通信 Vol.52(2023年9月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
自治体が管理する文化施設は、公民館や体育館などと比べて、「接客」の質が問われる傾向にある。そうしたなか、「来館者への接客に課題を抱える施設は多い」と指摘するのは、サントリーパブリシティサービスの見目氏だ。文化施設の運営やスタッフへの研修を専門に手がける同氏は、「非日常空間を体感できるような接客が必要だ」と話す。同社の上村氏も交えて、文化施設の接客の質を高める方法を聞いた。


施設に対する愛着が、接客スキルに磨きをかける
―自治体が管理する文化施設には、どのような課題がありますか。
見目 来館者への接客・サービスに課題を抱えているケースが多いことです。文化施設は、来館者が料金を払ってコンサートや美術展などを楽しむ特別な施設です。そのため、演奏や作品だけでなくスタッフも含めて「想像を超える出逢い」を提供できるような、いわば来館者がその空間自体を「愉しめる」接客が必要だと当社は考えています。当社は37年にわたって、そうした考えに基づく文化施設運営を行っており、その接客は来館者や施設の運営母体から高く評価していただいています。その結果、現在50の文化施設の運営を受託しているほか、約130の文化施設で累計約500回の研修実績があります。
―どうすれば、接客レベルを高められるのでしょう。
上村 まずは、運営スタッフに施設へのロイヤリティ*を醸成することが必要です。それによって、「来館者に愛される施設にしたい」という想いが生まれます。そうした想いから来館者へのサービスマインドが発揮され、自発的な接客スキル向上にもつながると、当社では考えているのです。実際、当社の研修を通じて施設への愛着が育まれ、スタッフの表情や所作が劇的に変わる様子を私は見てきました。ロイヤリティ醸成と接客スキル向上には対話やロールプレイングが効果的なのですが、多くの文化施設で実施できていないというのが実情です。
*ロイヤリティ : 愛着や忠誠心、帰属意識、組織コミットメントの意
オンラインでの研修ならば、受講タイミングを選べる
―それは、なぜですか。
上村 多くの文化施設では、設備や備品の整備が優先され、一般的な対面研修にかかる費用を捻出しにくい傾向があるようです。また、開館中はストップできない業務もあるので、全員での一斉受講が難しいという問題もあります。そこで、当社はパソコンやスマホで場所や時間を問わず、オンラインで安価に受講できる、『文化施設運営 eラーニング』という研修サービスの提供を始めました。
―研修の特徴を教えてください。
見目 「文化施設が地域にとってどういった役割を果たすのか」「そこで働く人はどうあるべきか」などを受講者自身に考えてもらうことで、ロイヤリティを醸成する仕組みになっています。また、文化施設運営に携わっているからこそ用意できる最新のケーススタディを通じて、接客スキルも高められるようにしています。施設に合わせたカリキュラムの変更や、対面研修の追加も可能なので、まずは気軽にご相談ください。


実践的な知識の習得で、障がい者対応への不安が解消された
今回の研修で、私が特に重要だと感じたのは「プライオリティゲスト*対応研修」です。これまでプライオリティゲストに対応する機会は少なく、適切な対応ができるか不安だったからです。なかでも多くの学びがあったのは、目が不自由で白杖を持ったお客さまがほかの人とぶつかりそうになった際の対応といった、視覚障がい者への対応についてです。そのほかにも、多目的化粧室を利用するお客さまのお手伝いなど、実際に起こり得る事例から適切な対応を具体的に学ぶことができました。接客の心構えや、実践的な知識やスキルを数多く身につけることができたので、それらを活かしながら、すべてのお客さまが平等に楽しめる施設を目指したいですね。
*プライオリティゲスト : 身体が不自由だったり、妊娠中だったりと、特別な配慮が必要な来館者

誰もが心地よく過ごせる接客を、最新事例から学ぶことができた
コロナ禍で集合スタイルの研修が難しくなったことに加えて、シフト勤務のためスタッフ全員が揃うことがそもそも困難なこともあり、オンラインの研修を探していました。今回の受講を通じて、在籍期間の長短に関係なく、お客さま対応の基本であるサービスマナーを最新事例から全員で振り返り、改めてマインドを含む接客の基礎に立ち返ることができた点は大きな成果だと感じています。特に「プラスストローク」「クッション言葉」といった、すぐに活用できるコミュニケーションのテクニックはとても勉強になりました。ロイヤリティをより磨きながら、すべてのお客さまにとって気持ちの良い接客ができるように心がけていきたいです。

設立 | 昭和58年3月 |
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資本金 | 1億円 |
売上高 | 68億3,000万円(令和4年12月期・連結) |
従業員数 | 2,603人 |
事業内容 | 劇場・コンサートホール・美術館など文化施設の管理運営・サービス業務、企業PR施設・商業施設インフォメーションなどのサービス業務、人財育成・施設運営のコンサルティング業務ほか |
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