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なぜ今自治体のDX化が必要なのか?基礎知識や取り組み事例を解説【自治体事例の教科書】

なぜ今自治体のDX化が必要なのか?基礎知識や取り組み事例を解説【自治体事例の教科書】
<目次>

「自治体のDX化っていう言葉をよく耳にするけど、一体何のことだろう?」
「自治体がDX化すると、そもそもどんなメリットがあるの?」

昨今、「DX」という言葉をよく耳にするようになりましたよね。しかし、中には「DX」とは何なのかがわかっていない人もいるかもしれません。また、DXを知っていたとしても「自治体が行うDXって何だろう?」とイメージできない人もいるかもしれません。

「DX」とはそもそも、IT技術を浸透・データをネットワーク化させることで人々の生活をより良くすること。自治体DXとは、住民の生活をよりよくするために自治体でIT技術の導入やネットワーク化を行う取り組みの事を指します。

それでは、具体的に「自治体のDX化」とはどんな施策の事を言うのでしょうか?例えば、以下のような事を指します。

自治体DXの施策の一例
・自治体の会議をオンライン化して効率化を図る
・各種手続きをオンライン化することで、住民の利便性を上げる
・デジタルマーケティングを行い、ネット通販で特産品の販売を促進する
・住民の通勤や通学のデータをもとに、公共交通機関の運行ルートやダイヤを調整し混雑緩和を図る

以上はほんの一例ですが、自治体DXを行う事で住民の生活が改善されたり、社会の問題解決に役立てていくことができるのです。

とはいえ、自治体DXの導入はそれほど簡単ではありません。技術者不足や個人情報保護に関する議論など、自治体のDX導入には様々な壁があるのです。しかし、その課題点を加味しても、自治体のDX化は導入すべき大きなメリットが存在しています。

この記事では、自治体DXとはどんなものなのかなどの基礎知識をはじめ、導入のメリット、その課題など、以下の事について詳しく解説していきます。

この記事を読めばわかる事

・「自治体DX」とは何なのか
・何故自治体DXが加速しているのか
・自治体DXを行うために必要な6つの事項
・自治体DXの取り組み事例
・自治体DXの取り組みの課題
・自治体DXを推進するポイント

これをお読み頂くことで自治体DXについて詳しく理解でき、自分の自治体では何をすべきか検討できるようになるでしょう。

ぜひ、この記事を参考にして頂ければ幸いです。

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1.自治体のDXとは「デジタルの活用により人々の生活をより良くするもの」

冒頭で解説した通り、自治体のDXとは「デジタルの活用により人々の生活をよりよくするもの」として政府は推進を測っています。

では、そもそもDXとはいったい何のことなのでしょうか?この章では、自治体DXの基礎知識を詳しく解説していきます。

1-1.DXとはデジタルトランスフォーメーションのこと

DXとは、「デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)」の事を指します。意味は「IT技術の発展によって人々の生活をよりよい方向へと変革していく」概念を指すことが一般的です。

初めて「デジタルトランスフォーメーション」という言葉が使われたのは2004年。スウェーデンのウメオ大学のエリック・ストルターマン教授がその考え方を提唱したのがきっかけです。

この時に発せられた「デジタルトランスフォーメーション」という言葉をもとに、英語圏では「Trans」を「X」と表記される習慣が採用され「DX」との表記が定着していきました。

1-2.自治体におけるDXの定義

自治体におけるDXは、これまでアナログで行っていた業務をデジタル化し共有する事でデータや情報を有効活用しやすくなり、人々の生活をよりよくしたり、社会的な問題解決を目指す事ができるものという位置づけとなります。

DX化を行う事で行政手続きがオンラインでできるようになれば、地域住民が手続きのためにわざわざ市役所を訪れ、長い待ち時間を消費する事がなくなります。そうなれば住民の方にとってメリットになるだけでなく、職員の負担も軽減できるのです。

地域の子供の数と保育施設や公園の割合をデータ化する事で、施設が不足している地域を割り出して対策を練ることなども可能となります。

以上のように、地域住民の情報などをネットワーク化して活用する事で、人々の生活をよりよいものにしようとする取り組みが、自治体のDXなのです。

ここでは、自治体DXが加速している理由について詳しく解説していきます。

1-3-1.少子高齢化による加速

近年、政府がよりDX化を後押しするようになった背景には、少子高齢化が上げられます。少子高齢化により役所の職員が足りなくなると、アナログシステムでは対応しきれなくなるといった懸念が出てきたのです。

データ手続をデジタル化することで、こうした問題も解説を目指せます。

人口減少により地方の行政が立ち行かなくなることを懸念し、2018年に総務省は「地方自治体における業務プロセス・システムの標準化及びAI・ロボティクスの活用に関する研究会」を立ち上げました。

その報告書の中で、総務省は自治体のDX化について「スマート自治体」と表現し推進について言及。

具体的な施策案の一つに「システムの標準化」を掲げ、「行政サービスをデジタル社会においてあるべき姿にデザインしなおす」ための取り組みを行うとしています。

このように、近年の少子高齢化への懸念により自治体DXは加速しているといえます。

1-3-2.経済産業省の「DXレポート」の危機感による加速

2018年に経済産業省が発表した「DXレポート」もDX化を加速させるの大きな理由の一つです。

発表当時、約8割の企業がDX推進ができておらず、古いシステム(レガシーシステム)にコストをかけている事がDXレポートにより明らかになりました。レガシーシステムによってDXを進められていない事を企業側も理解しているにも関わらず、様々な要因により変革ができずにいたのです。

また、DXレポートの中にはさらに衝撃的な内容も含まれていました。「2025年の壁」と言われる経済リスクが指摘されたのです。

現在(2018年当時)のままレガシーシステムをそのまま運用した際に、システムを保守・運用するコストはどんどん膨れ上がります。そして2025年には個々の企業の経営だけでなく、日本経済全体に大きな打撃を与える可能性があるというものです。

具体的には、このままだと2025年以降には日本全体で最大12兆円の損失を生む可能性があるとの研究結果が出ています。

もちろんこれは日本の経済界全体に言える事ですが、自治体においても例外ではありません。日本はDX化を推し進める必要があるのです。

1-3-3.新型コロナウィルスによる加速

新型コロナウイルスの感染拡大により、DX化はますます加速したと言えます。

新型コロナウイルスの対応において、地域間や組織間でデータ活用やネットワーク化が進んでいない事が明らかになりました。未だに様々な行政手続きがオンライン化されておらず、住民はわざわざ役所に赴いて手続きをせざるを得ません。

民間企業ではペーパーレス化や脱ハンコが進められているにも関わらず、行政においては紙文化が残っている点も指摘されています。感染防止のため、なるべく紙を使わずに手続きを行ったり、対面ではなくオンラインなどで会議を行う必要が出たにもかかわらず古いシステムのせいでそれができずにいるのです。

また、コロナ禍では押印が必要な紙ベースの書類のやり取りには手間がかかり、また感染リスクもあるとして「ハンコ問題」も注目されました。

2020年11月13日の記者会見において河野太郎行政改革担当大臣は、「行政手続における認印の全廃する」と発表。2020年12月には、内閣府が「地方公共団体における押印見直しマニュアル」を作成し、脱ハンコを進める取り組みを行っています。

これらの事情が相まって、近年では急速に自治体でもDX化が叫ばれるようになったのです。

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2.自治体DXするために必要な6つのこと

では具体的に、政府は自治体DXのためにどのような施策を進めているのでしょうか。その指針に関しては、2020年12月に総務省が「6つの重点取組事項」としてその考え方を明示しています。

以下は総務省が作成した「6つの重点取組事項」の一部です。

(参考:自治体DX推進計画概要|総務省

自治体はこれら6つの事項を中心に取り組みを行います。この章では、それぞれの内容について自治体の事例を交えながら詳しく解説していきます。

2-1.①自治体の情報システムの標準化・共通化
①自治体の情報システムの標準化・共通化

目標時期を2025年度とし、「(仮称)Gov-Cloud」の活用に向けた検討を踏まえ、基幹系17業務システムについて国の策定する標準仕様に準拠したシステムへ移行

現在、アナログで行われている基幹系17業務について、2025年までの完了を目標に新システム「(仮称)Gov-Cloud」への移行が進められています。その17業務とは以下の通りです。

基幹系17業務

住民基本台帳
・選挙人名簿管理
・固定資産税
・個人住民税
法人住民税
・軽自動車税
・国民健康保険
国民年金
・障害者福祉
・後期高齢者医療
・介護保険
・児童手当
・生活保護
・健康管理
・就学
・児童扶養手当
・子ども・子育て支援

現時点で自治体ごとバラバラに運用されてきたこれらの業務システムの統一化を測ることで、住民と職員双方にメリットがあると期待されています。

国民健康保険や国民年金、税務手続きなど、様々な面でシステムを同一化する事で、手続きのオンライン化が可能となります。そのため、窓口で待ち時間が短縮できるなどがその一例です。

システムを統一化する事で、自治体間でのデータのやり取りも簡略化できます。転居などの際には、その役所に申し出る必要がなくなり、作業の効率は飛躍的に上がるのです。また、これまでのように職員がデータを手入力する機会が減れば、人的ミスなども起きにくくなるという点もメリットと言えるのです。

新システムの運用に関しては、国が新システムを整えるのを待って各自治体が実行する流れとなります。

2-2.②マイナンバーカードの普及促進
②マイナンバーカードの普及促進

2022年度末までにほとんどの住民がマイナンバーカードを保有していることを目指し、交付円滑化計画に基づき、申請を促進するとともに交付体制を充実

未だに普及率が低いと言われているマイナンバーカード。国はマイナンバーカードでできること(メリット)を着実に増やし、普及促進の取り組みを行っています。

マイナンバーカードでできること

・住民票の移しや印鑑登録証明などをコンビニの端末で取得できる「コンビニ交付サービス」の利用
・確定申告や児童手当、保育所の入所申請など様々なオンライン手続き
・健康保険証としての利用(2021年10月予定)
・運転免許証としての利用(2025年予定)

例えば、自治体によっては「コンビニ交付サービス」と言い、住民票の移しや印鑑登録証明書などをコンビニの端末で取得できるサービスが導入されています。

その他、マイナンバーカードがあれば確定申告や児童手当、保育所の入所申請なども可能です。2020年には新型コロナウイルス感染拡大による特別定額給付金も、マイナンバーカードでオンライン申請するなら早めに受け取れるとのことで話題になりました。

また、今後は引っ越しに伴う転出や転入手続きも、マイナンバーカードを利用したオンライン化を推進するとしています。

既にマイナンバーカードは健康保険証として利用できるように進められており、2021年10月ころから運用を予定。2025年には、マイナンバーカードが運転免許証の代わりとして使えるようになることが決まっています。

マイナンバーカード普及は国民の生活の利便性をあげ、生活が良くなるとされています。また、行政側としても効率的に手続きなどが行えるためメリットが多く、普及に力を入れているのです。

2-2-1.北海道帯広市の普及活動事例

北海道帯広市は、マイナンバーカードを利用して予防接種や検診の必要な時期などを携帯電話やテレビで確認できるワンストップポータルサービス「帯広市すこやかねネット事業」を昨年から開始。

以下のようなサービスを展開しています。

帯広市すこやかネットでできること

・公的個人認証機能
・お知らせ配信昨日(各種サービス、教室開催情報など)
・子育て差支援サービス機能
・電子お薬手帳機能(検診情報、投薬情報、母子健康手帳情報の閲覧)

このシステムにより必要な情報をどこからでも確認できるようになります。このサービスの利用にはマイナンバーカードが必要となり、サービス普及とともにカード申請を促す結果となっています。

2-2-2.宮崎県都城市の普及活動事例

宮崎県都城市では、マイナンバーカード普及に向けて「都城方式」と呼ばれる独自の取組を展開しました。これは、スマートフォンやタブレットなどのデジタル機器を使い慣れていない人に向け、商業施設や自治公民館に職員が訪問して申請手続きをサポートするもの。

また、温泉施設でマイナンバーカードを提示すればポイントが2倍になるキャンペーンなど行い促進に努めています。

これらの活動の結果、マイナンバー申請率は市民全体の46.5%(2020年12月1日地点)となり、全国の市区で一位をキープしています。

2-3.③自治体の行政手続のオンライン化
③自治体の行政手続のオンライン化

2022年度末を目指して、主に住民がマイナンバーカードを用いて申請を行うことが想定される手続(31手続)について、マイナポータルからマイナンバーカードを用いてオンライン手続を可能に

自治体の行政手続きをオンライン化する事で、住民側と行政側双方の効率化を目指します。

働いていたり育児や介護など様々な事情で、手続きをする際に役所の窓口に行くのが困難な住民は少なくありません。手続きをオンライン化する事で、いつでも必要な時に手続きを行えるというメリットがあります。

また、少子化により人員不足で職員が足りていないなどの場合でも、窓口での対応を減らす事で効率的に処理が行えるようになります。

行政手続きのオンライン化は、このように住民側と行政側双方にメリットがあるのです。そのため、自治体にはオンライン化を進めるための取り組みが求められています。

2-3-1.山形県の行政手続のオンライン化導入事例

山形県は行政手続のオンライン化のために、2020年「やまがたe申請」という電子申請サービスを開始しました。このサービスでは、主に以下のような手続を行う事が出来ます。

やまがたe申請で可能な手続

・各種イベント、研修の申し込み
・各種行政手続の申請、届出の受付
・上記1、2に係る申し込み内容の集計
・申込者への連絡メールの一斉送信、添付書類の返送

これらの内容をもとに、市町村でも様々な取り組みを行っています。

市町村

やまがたe申請でできること

山形市

児童手当関係届出(新規認定請求など)(マイナンバーカード利用手続き)

消防訓練通知書

舟形市

舟形町学生応援特産品給付事業申込フォーム

令和2年度舟形町職員採用試験受験申込

南陽市

粗大ごみの収集申込

水道開栓・閉栓受付票(マイナンバーカード利用手続き)

これは県が作ったシステムをもとに、それぞれの自治体でできることを進めた好例と言えるでしょう。

2-3-2.新潟県の行政手続きオンライン化導入事例

新潟県も行政手続のオンライン化を積極的に行っています。

具体的には、2020年11月から2020年12月にかけて各自治体に棚卸調査を実施しました。これは、現段階でどの程度オンライン化できているのかを把握する目的のものでした。

その結果、県民が県に対して行う申請手続き(県単独で変更できる手続き)のうち、既にオンラインされているものは74.5%ということがわかりました。

それを受けて今後の方針として、まだオンライン化されていない手続きに関しては、処理件数の多いものからオンライン化を実現。最終的には2025年までに原則としてすべての手続のオンライン化を目指すとしています。

2-4.④自治体のAI・RPAの利用推進

④自治体のAI・RPAの利用推進

①、③による業務見直し等を契機に、AI・RPA導入ガイドブックを参考に、AIやRPAを導入・活用を推進


自治体での業務にAIやRPAなどのシステムを導入し、膨大な事務作業を自動化するための取り組みです。「①自治体の情報システムの標準化・共通化」「③自治体の行政手続のオンライン化」とともに、導入する事で作業の大幅な効率化が見込めるため、導入を促進しています。

特に近年では少子高齢化に伴い人材不足が叫ばれていますが、AIやRPAを導入する事でその問題の多くは解決されるでしょう。

ここで、既にAIやRPAのシステムを導入している事例も解説していきます。

RPAとは?

「RPA」とは、「ロボティックプロセスオートメーション(Robotic Process Automation)の略語で、事務作業をコンピューター上で職員が行っている作業を自動化できるソフトウェアロボットのこと

2-4-1.福岡県会津若松市のAI導入事例

会津若松市は、市民からのよくある問い合わせや各種証明書発行の手続の仕方などを対話形式で自動応答する仕組みを構築しました。

そうする事で、役所がやっていない土日や夜間でも問い合わせができるようになりました。24時間365日問い合わせが可能なサービスとなり、市民アンケートでは80%以上の方から好意的な反応が寄せられたとのこと。

簡易的な問い合わせに職員が応じる必要がなくなったため、時間短縮にも効果的だったとの結果が出ています。

また、AI導入により問い合わせ内容や件数、問い合わせ者の年代や属性などのデータを集める事ができ、分析する事でより良いサービスへと発展できるというメリットもありました。

2-4-2. 茨城県つくば市のRPA導入事例

茨城県つくば市は職員へのアンケートをもとに、定型的で膨大な作業量が発生する業務を抽出。その結果市民窓口課と市民税課の業務においてRPAを導入して、業務プロセスの自動化を実施しました。

その結果、これまで職員が受付や発送簿の作成などを行い、年間85時間かかっていた業務が14時間に短縮できたという事です(約83%減)。

その他にも、RPA化により入力ミスが減少した他、職員が住民のサービスに集中できるなど様々な面で効果を実感。2019年にはRPAを5課で導入することとなりました。

2-5.⑤テレワークの推進

⑤テレワークの推進

テレワーク導入事例やセキュリティポリシーガイドライン等を参考に、テレワークの導入・活用を推進

2020年の新型コロナウィルス感染拡大に伴い、民間企業ではテレワーク化が加速しましたが、行政でも取り組みは進められています。

テレワークを進めるのには「①自治体の情報システムの標準化・共通化」「③自治体の行政手続のオンライン化」における業務見直しと平行して行う必要があります。

ここからは、その主な事例として総務省が作成した「地⽅公共団体におけるテレワーク推進のための⼿引き」をもとに事例を解説していきます。

2-5-1.長野県松本市のテレワーク導入事例

長野県松本市は新型コロナウイルス感染拡大を受け、在宅勤務の推進を本格的に始めました。取り組みの内容としては、以下の通りです。

長野県松本市のテレワーク導入事例

・管理職から在宅勤務を経験させ、部署全体に浸透させる
・「担当業務の見える化シート」を活用し、自身の業務を見直す仕組みを作る
・Web会議やチャットツールの試行
・2020年11月9日~2021年1月29日に「松本市役所版テレワーク・デイズ」を実施し、在宅勤務を推奨
・個人所有のPCと各課配備のタブレット型PCの両方を利用可能にすることで、計500台で在宅勤務ができる佳境を整備…etc.

これらの取り組みを実施し、テレワーク・デイズの後にはアンケートを実施して効果や課題を抽出しました。

その結果、回答者すう477名のうち、約8割弱が在宅勤務を「満足」とし、「普段と比較して時間の有効活用が実感できた」とした割合も約8割を超えたのです。

2-5-2.静岡県掛川市のサテライトオフィス導入事例

静岡県掛川市では、合併した町村の空き会議室を活用してサテライトオフィスを設備しました。オフィスを本庁1か所から計3か所に設置する事で職員の移動時間の削減や効率的な業務を行う事に成功しています。

空きPCを活用する事で庁内ネットワークへのアクセスが可能となり、自席と同じネットワークが整備される仕組みです。

また、申請を行う事でテレワークも可能です。申請も2021年の1月に導入した庶務事務システムにより電子決裁にてオンラインで可能となっています。

その結果、職員は自宅の近くのサテライトオフィスで勤務ができ、通勤時間が削減できるようになりました。また、これらの取り組みは空いている施設や設備を利用しているため、経費も抑えて実現できたものとなります。

2-6.⑥セキュリティ対策の徹底
⑥セキュリティ対策の徹底

改定セキュリティポリシーガイドラインを踏まえ、適切にセキュリティポリシーの見直しを行い、セキュリティ対策を徹底

DX化の推進には、セキュリティ対策の徹底は不可欠な項目です。例えば、サイバー攻撃の標的になるなどのトラブルの際には国民の情報が危険にさらされてしまうためです。

自治体によってはIT人材の不足や、ネットリテラシーが低いなどの問題によりセキュリティの向上が難しい状態にあることも。自治体がDXを進めるためには、人材確保やシステムによるセキュリティ対策、ネットリテラシーの向上なども必要不可欠です。

セキュリティ対策の課題

システムのセキュリティを強化すればするほど、データ閲覧や利用に制限ができるなど利用しづらくなるというデメリットも出てきてしまうという課題が指摘されてきました。

こうした状況はコロナ禍に伴うテレワーク実施においても問題となりました。強固なセキュリティ対策によりWeb会議などが制限されるなど、様々な課題が浮き彫りになったのです。

総務省は2020年5月に「自治体情報セキュリティ対策の見直しについて」というレポートを公表しました。その中で、2015年に強化した情報セキュリティ対策を見直すとの見解を示しました。

これは、基本的な「三層の対策」の方向性は維持したまま、政府が定めた条件下においては情報の開示や手続のオンライン化が可能となる仕組となるよう見直されたと言えます。

2-6-1.神奈川県のセキュリティ対策への取り組み

神奈川県は、「1件の個人情報流出も許さない」という覚悟でクラウドによる高度な統合セキュリティ対策を実現しました。

2015年に総務省から発せられたセキュリティ対策の強化を求める通知を受け、神奈川県は「神奈川県情報セキュリティクラウド(以下KSC)」を構築。全県を挙げてセキュリティ対策に取り組み、「三層の対策」も実施しました。

KSCは総務省が求めた自治体情報セキュリティ対策のクオリティを大きく上回るものでした。そして2017年には全ての市町村の移行を完成させたのです。

神奈川県はセキュリティシステムの維持を進めながらも、職員へのリテラシー格差に対する課題改善に向けても取り組みを進めています。

3.自治体DXの取り組みの課題

ここまで解説してきたように、自治体のDX化は社会にとって様々なメリットがあり、住民がより快適に暮らせる仕組みとなり得る取り組みと言えます。

しかし、自治体のDXには様々な問題点が指摘されており、それが理由で日本では導入が遅れているのが実情です。

そこでこの章では自治体DXを取り組む上での課題について詳しく解説していきます。

世界各国がITを戦略として取り入れる中で、日本はその取り組みに遅れを取っているのが実情です。その事実は、以下のように実際の数値にも表れています。

日本の行政DX化の国際的評価

日本は前回の10位から14位に順位が下がる(資料:United Nation Department of Economic and Social Affairs “e-Government Survey 2020”

オンラインでの行政手続き利用率が2018年の調査で、対象30か国中最下位(資料:OECD Statistics)

では、何故日本ではDX化が遅れているのでしょうか?ここでは、以下の3つのポイントを中心に解説していきます。

3-1.職員の意識の課題

デジタル化において最も重要なポイントとなるのが、職員の意識を変える事です。

1990年代にパソコンの導入が始まり、インターネットの普及やソフトの導入よって様々な作業が既にデジタル化しています。そのため、職員の多くは既に十分業務効率化が進んでいると見なして積極的にDX化を進めようとません。

とはいえ、近年総務省が推進しているDX化とは、これまでの作業のデジタル化とは似て非なるものです。テクノロジーの導入によって作業の効率化を進める事は結果として求められるものであって、本来はテクノロジーの導入で住民にどのような利点があるかを考える必要があるのです。

例えば表計算ソフトやその他さまざまな情報管理ツールは既に導入されており、職員はそれでも十分だと思うかもしれません。確かにそれにより作業の効率化はかなえられているのは間違いがありません。

一方で、こうした取り組みは職員にとって利点があったとしても、果たして住民にとっては何かメリットがあるのでしょうか?

もちろん、職員の業務環境が改善されることは無意味とは言えません。しかし、今日総務省が推進しているDX化とは、テクノロジーの導入により住民の生活がよりよいものになるための取り組みです。そしてその結果、作業が効率化されるなどで職員にも多大な恩恵があるのです。

その「意識」を職員一人一人が持てないでいると、DX化はなかなか進まないのです。

3-2.人材不足の課題

いざDX化を行おうという段階に至って問題となるのが、IT人材の確保です。組織においてDX化がいくら重要だという意識を共有できたとしても、それを行うための人材が不足しているのが現実です。

DX化はアナログ作業をデジタルに移行するだけの問題ではありません。DX化を行う事で、住民にとってどのようなメリットがあるのかを見据えた上でのデザイン設計が必要となるためです。

こうした人材不足は非常に深刻な問題と言えるでしょう。

デジタル人材の育成や確保の取り組みに関しては、「4-3.デジタル人材の確保と育成」でも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてみてください。

3-3.組織や権限の課題

職員が意識を持つようになり、人材不足が解消されてから問題となるのが、組織や権限の問題です。いざDX化を進めようと思っても、その役割に権限が与えられていなければ実行する事はできません。

一方で、DX化における権限をどこに置くかは簡単な問題ではありません。民間企業では役員のような、組織全体を俯瞰してまとめられるような人物が権限を持っている事が一般的です。

しかし自治体ではどのような人物に権限を与えるのか、それをどのようにして決定するのか。その議論は未だに結論が出ていないのです。

3-4.行政と国民とのコミュニケーションの課題

行政と国民とのコミュニケーションがとれていない事でDX化が進んでいないという一面は否定できません。

その問題について、特にマイナンバーカード普及おける問題点を例に出して解説していきます。

2-2.②マイナンバーカードの普及促進」で、政府がマイナンバーカードの普及に力を入れている事を解説しました。その一方で、未だにマイナンバーカードの普及は進んでいない状況です。

マイナンバーカードが思うように普及していないのには様々な理由がありますが、行政と国民がうまくコミュニケーションをとれていない事が原因といえます。


マイナンバーカードを申請しない人の多くが、マイナンバーカードを作った事で得られるメリットを理解していないのが原因の一つです。

2-2.②マイナンバーカードの普及促進」でも解説した通り、マイナンバーカードを持つことで住民ができることは様々です。行政手続きをオンライン化できたり、本人確認書類として機能したりなど時間短縮ができるようになることは間違いがありません。

しかし、そうした点を理解している住民が少ないのが問題です。政府や自治体が十分な説明を行っていないためにマイナンバーカードで何ができるか伝わっていない、との声も少なくありません。

また、マイナンバー制度自体を疑問視している人がいる事も見逃せない課題点と言えます。これまでも解説してきたように、マイナンバー制度は行政にとっても国民にとっても導入によりできることが多いため、政府は導入を進めてきました。

その一方で、以下のような意見からマイナンバー制度そのものに疑問を持つ人が少なくないのです。

マイナンバー制度を疑問視する声

情報管理の面での疑問視

  • 国の情報管理を信頼できない
  • 情報一つ漏洩したら、紐づけられている全ての情報が丸裸になる危険性がある

プライバシー面での疑問視

  • 国家に管理されてしまう事に疑問がある

国の説明不足による疑問視

  • 国民への説明が足りないため、全体像がつかめない
  • メリットやデメリットが分からない
  • 知らないうちに決まっていた

このように、国民がマイナンバーカード普及に関しては内容をよく理解していなかったり、国と国民の対話がうまくいかないことで遅れているという点は否定できません。

このことはマイナンバーカードだけに言えるのではありません。DXは国が国民の情報を用いて行うことが前提となります。そのため、国がDXを推し進めるのであれば、国民に対して理解を促すように対話をしていく必要があるのです。

4.自治体DXを推進する5つのポイント

ここまで解説してきたように、自治体のDX化には課題点もあるため、簡単に推進できるものではありません。

そのため、自治体のDX化は以下のようなポイントを押さえて進めていく事をおすすめします。

4-1.組織全体で取り組む

まずは、組織全体でDX化の必要性などを理解し、取り組んでいく必要があります。自治体のDX化は組織の一部が初めて普及できるものではありません。抜本的なシステムの改善など、施行は大がかりになることが多いからです。

そのためには、自治体DXを促進するための推進体制を作る事が効果的です。以下は、実際に自治体が作った体制です。

自治体DX推進体制の例

自治体名

体制名

群馬県

知事戦略部デジタルトランスフォーメーション課

長野県

企画振興部先端技術活用推進課

広島県

デジタルトランスフォーメーション推進本部

市川市

情報政策部デジタルトランスフォーメーション課

 

こうした体制を作った上で、具体的にDX化に必要な取り組みを洗い出し、現場への落とし込みを行います。注意すべきは、小さな組織や少人数のチームの中だけでDX化を推進しようとしない事。

DX化は組織全体に影響を及ぼす事になるため、現場の理解を得ることは重要なのです。

4-2.職員のITリテラシーの向上を図る

職員のITリテラシーの向上は、自治体DXを進める上で非常に重要な項目です。ITリテラシーとは、「ITや情報に対する理解力」という意味合いで近年用いられている言葉です。

ITリテラシーを持たずにDX化を測ると、思わぬところで個人情報の漏洩やデータの紛失などが起こりかねません。

例えば、近年では誰もがプライベートで活用しているSNS。「個人のアカウント出しフォロワーもいないから大丈夫」と、仕事上で得た情報を発信してしまい情報漏洩につながる例は少なくありません。

また、「2-6-2.神奈川県のセキュリティ対策への取り組み」でも職員のITリテラシーが問題になった事象がありました。

既に解説した通り、神奈川県で導入したセキュリティ対策は総務省を驚かせるようなクオリティのものでした。しかし、実は人的ミスによって一度個人情報漏洩の危機にさらされたのです。それは、危険度が高いと判定され隔離されていたファイルを庁内のPCに取り込んでしまうというものでした。

このことからも分かるように、いくら強固なセキュリティシステムを完備していても、ITリテラシーが低い事で危機的な状況に陥ることは少なからずあるのです。

そのためには、職員のITリテラシー向上を図ること。具体的には定期的なセミナーを行ったり、勉強会を行うなどが望ましいでしょう。

4-3.デジタル人材の確保と育成

3-1-2.人材不足の課題」でも解説したように、自治体におけるDX促進には人材確保が必須となります。ここでいう人材とは、プログラミングなどの知識を持つデジタルに強い人の事です。

デジタル人材は一般企業からも求められているため、確保をすることは簡単ではありません。

この実状に危機感を覚えた政府は、「デジタル専門人材派遣制度」を作りました。これは、協力企業が自治体に対し、裁量2年間の専用人材を派遣する制度の事。同制度にはNTT東日本やITbookなど22社(2020年11月時点)が参画しています。

また、デジタル人材は外部からの補填に頼るのではなく、育成に力を入れる事も推奨されます。

株式会社ベネッセコーポレーションは2021年5月より、オンライン学習ツール「Udemy for Business(ユーデミー・フォー・ビジネス)」を活用する事で人材育成に関する実証研究を開始しました。Udemyのオンライン教材を提供する事で不足しているデジタル人材を育成する事を目的としています。

このように、民間企業と協力しながらデジタル人材の育成を行う事も視野に入れて取り組む必要があるのです。

4-4.計画性をもって取り組む

自治体DXを導入する際に注意すべき点は、効果が表れるまでに時間がかかることを理解する必要があるという点です。

ITツールの導入により業務効率化を行う、というシンプルなものなどすぐに効果が見える施策もありますが、大幅な改革や住民の利便性の向上には数年の時間がかかることも少なくありません。自治体のDX化は長期的な視点で取り組む必要があります。

そして、「長期的に取り組む」という考え方は組織全体で共有すべき考え方です。長期的に取り組む姿勢を理解されずに行うと、結果が出ないことへの焦燥などから中途半端な状態で中断せざるを得なくなることもあるからです。

自治体のDX化に取り組む際には、計画をきちんと立ててそれを組織全体で共有し、理解を仰ぎましょう。

4-5.常に目的を把握する

自治体DXを行う際には、具体的な目的を把握する必要があります。

自治体に限らずDXなどの改革を行う際に、目的や問題点・課題などを設定せずに初めてしまうと、取り組みを行う中で目的を見失いがちになってしまいます。特にDX化は複雑な問題も多く時間もかかる取り組みです。そして、実行には多くの人の理解が必要となるのです。

そのため、自治体DXを行う際にはその目的をを常に見据えて取り組む必要があるのです。

目的がぶれなければ具体的に必要となる技術リソースも見えてきます。まずは目的を明確にし、そのうえで必要な作業や技術リソース、人材確保などに目を向けていきましょう。

ここまで解説してきたように、自治体DXには様々なメリットがある一方、導入には課題もあるが分かりました。特にデジタル人材の不足などによるデジタル化の遅れは、すぐに解決ができないような根深いものがあることは否定できません。

とはいえ、中にはツールの導入などによって解決できる問題もあるのです。例えば、脱ハンコが進んでいなかったり、データが紙保管であるためにテレワークが進まないなどの問題は、電子決裁システムを導入する事ですぐに解決が可能です。

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6.まとめ

この記事では、「自治体DX」に関して以下の内容を詳しく解説してきました。

この記事を読んで分かったこと

・「自治体DX」とは何なのか
・何故自治体DXが加速しているのか
・自治体DXを行うために必要な6つの事項
・自治体DXの取り組み事例
・自治体DXの取り組みの課題
・自治体DXを推進するポイント

自治体DXは住民の暮らしをよくするための取り組みです。導入する事は簡単ではありませんが、進める事で大きなメリットがあるのです。

ぜひ、この記事を参考に自治体DX化を進めてみてはいかがでしょうか? あなたの自治体がより暮らしやすい場所になるように心からお祈りしております。

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