
- 1.【データで解説】自治体のRPA導入状況
- 2.RPAは何ができる?自治体でのRPA活用方法3つ
- 3.RPAの効果は?自治体での活用事例4選
- 4.RPAを導入する4つのメリット
- 5.RPAを導入する際の課題3つ
- 6.RPAの導入を失敗しないための3つのポイント
- 7.RPAの検討から運用までの進め方
- まとめ
・「自治体でICTを導入するならRPAが良いって聞くけどどのようなことができるの?
・「自治体でRPAを導入すればどのような効果があるの?」
このように自治体でRPAを導入した方が良いと耳にするが、実際にどのように活用すればよいのか、どのくらいの効果があるのか知りたいですよね。
自治体でRPAを導入すると以下のようなことが自動で行うことができます。

そして実際にRPAの導入実験を行った富山県南砺市では、入力作業をメインとした4業務で約56%削減することができました。

しかし、効率化を目指して全ての業務でRPA化することはおすすめできません。RPA導入までに時間や人手が必要となり、結局効率化されなかったりコストがかかりすぎたりと逆効果になることもあるからです。
RPAは向いている業務と向いていない業務があり、適切な業務を選定する必要があります。ご自身の自治体では、どのような業務に時間がかかりRPAを導入するとどのくらい削減できるのか知るために他の自治体の事例などを参考に検討してみましょう。
この記事では、
・自治体のRPA導入状況と活用方法
・自治体での活用事例
・RPAを導入するメリットと課題
・RPAの導入を失敗しないためのポイント
・RPAの検討から運用までの進め方
をご紹介します。この記事を読めば、自治体でのRPAの活用方法が分かり自治体でどのようにRPAを導入していくか決めることができるでしょう。
自治体でのRPA導入をお考えの方は、ぜひ参考にしてください。
1.【データで解説】自治体のRPA導入状況

まずは自治体のRPA導入状況についてご説明します。
下記の表は、総務省の2019年5月の「地方自治体におけるAI・RPAの実証実験・導入状況等調査」の結果です。
表を見て分かるように都道府県では、RPAを導入済みまたは導入予定が60%以上となっているにも関わらず、その他の市区町村では10%にも達していません。
さらにその他市区町村では、「導入予定もなく検討もしていない」が約70%とほとんどの自治体でRPA導入予定がないことが分かります。
このように都道府県と地方自治体とでは、RPA導入の温度差がありなかなか地方自治体ではRPAの導入が進んでいません。
しかし、このままでは人口減少に伴い地方自治体の職員も減り、業務が多忙化することが目にみえています。
そういった状況を改善するためにも早急にRPAの導入を進めていく必要があるのです。
2.RPAは何ができる?自治体でのRPA活用方法3つ

RPAの導入を検討している自治体はどのようにRPAを活用していくべきか悩みますよね。
ここでは、自治体でのRPA活用方法を3つご紹介していきます。

どのように活用できるのか一つ一つみていきましょう。
2-1.データの入力・登録作業の自動化
まずデータの入力・登録作業は、RPAで自動化しやすい作業です。
データ入力や登録作業はとても時間をとられ、労力もかかります。RPAを導入すれば、それらの作業も大幅に工程を削減でき、効率化が図れます。
具体的にはWebからダウンロードしたデータをシステムへ入力したり、申請データをシステムへ入力・登録することができます。
代表的な活用業務は、以下の通りです。
2-2.データの確認・照合作業の自動化
2つ目は、データの確認・照合作業の自動化です。
最初に設定したルールにのっとり、データの正誤を見極めることができます。
人が確認作業を行うと、ミスが発生することもありますが、RPAにはその心配がないのもメリットといえます。
代表的な活用業務は、以下の通りです。
2-3.集計作業の自動化
3つ目は、集計作業です。
たくさんの申請書や明細書の集計をとることも地方自治体の仕事の1つですが、1つ1つ確認しながら行う集計作業は気が遠くなる作業です。
RPAで集計作業を自動化すれば、正確かつ短時間で終えることができます。
代表的な活用業務は、以下の通りです。
3.RPAの効果は?自治体での活用事例4選

実際に自治体でRPAを活用している4つの事例をご紹介します。

他の自治体はどのようにRPAを取り入れているのか、ぜひ選考にしてみてください。
3-1.一歩進んだRPAの実践的活用(東京都多摩市)
東京都多摩市ではRPA実践的活用を行い、実証実験では約50%の業務時間削減に成功しています。
多摩市は、定型業務の多くが紙の書類のためOCRの活用を期待して、RPAだけではなくOCRとAI-OCRの実証実験を行った結果がこちらです。

児童手当や所得異動の入力作業をRPAで行うと年間で約22時間、17%の削減となりました。また、保育園入所申請書の入力作業はRPAとOCRで行い年間約237時間、62%削減し効果が顕著に現れました。
さらに法人設立届出書の入力作業は、年間で約2時間、14%の削減でした。
このように業務によって削減率が大きく変わるので、どの業務にRPAを導入するのかよく検討する必要があります。
多摩市ではRPAによる効率化だけでなく、実験に参加した担当課の若手を中心に意識が変わり、庁内にRPAの効果を伝える専門的な人材の素地ができたのも大きな成果です。
3-2.シナリオの内製化がカギ!85.2%の時間削減効果(大分県別府市)
大分県別府市では、入力・点検作業が多い保険年金課と情報推進課の業務にスポットをあて、RPA導入効果を検証しました。
その結果85.2%の時間削減に成功し、庁内のRPAに対する関心がぐっと上がったといいます。
一部の職員しか使えないシステムにしないためにも、シナリオ(RPAへの指示書)の内製化にこだわりました。
RPA導入後は、職員が日常においてもしっかりと使いこなせることが大事だと考え、シナリオ作りは職員が行い本格導入後もシナリオ作成を担う人材育成に力を入れていくそうです。
3-3.RPA導入で行政の未来を担う人材を育成(富山県南砺市)
富山県南砺市では、RPA導入に伴って行政の未来を担う人材育成に力を入れています。
南砺市は、会計課の2業務とこども課の2業務の計4業務でRPA実証実験を行い結果は以下のようになりました。

4業務で年間407.9時間、約56%の削減が実証されました。
南砺市は、総務省の「RPA導入補助事業」に採択され、4業務に加え複数業務でも運用を始めていきます。さらに若手人材を集めプロジェクトチームを発足させ、若手の人材育成も同時進行で行っていくそうです。
3-4.処理時間削減・100%の正確性を実現(高知県)
高知県では処理時間削減と、100%の正確性を実現するためにRPA導入を進めています。
RPA導入に向けて事前にヒアリングを行ったところ、業務効率化に繋がりそうな提案が140件も上がったそうです。その中から処理時間や発生頻度、定型作業なのかなどに着目し、適用させる優先度を決めていきました。
将来的に全庁展開も視野に入れ、人件費推計業作成業務でRPAを導入。
実証実験では、ロボットがデータを扱えるようにテキストデータで入手し表計算ソフトに転記、所属ごとに分ける作業を丸ごとロボットに代替えさせました。
そして、数値項目の集計と分配などの作業正確性は100%という結果です。
4.RPAを導入する4つのメリット

RPAを導入することにより、考えられるメリットは以下の4つです。

何となくRPA導入したら良くなるのだろうとお考えの方も、具体的なメリットを知っていきましょう。
4-1.業務の効率化
RPA導入の最大のメリットと言っても過言ではないのが業務の効率化です。3章で紹介した事例でもあったようにデータの入力などの削減率はかなり高い割合となっています。
今まで人の手で1枚1枚入力していた申請書等の入力作業などの単純作業に割いていた時間を企画の検討や業務改善など人間にしかできない業務に集中して取り組むことができます。
また人間と違ってコンピューターは24時間365日稼働が可能なのも効率化の理由です。
ただし、RPA化するために作業が増えてしまいそれほど削減されないケースもあるので、どの業務をRPA化するかはしっかりと吟味する必要があります。
4-2.住民の満足度が上がる
RPAを導入することで自治体の住民サービスが向上され、住民の満足度も上がります。
例えば、24時間365日問い合わせができるようになると、日中働いている人などにとっては時間を気にせず問い合わせることができるのでとても便利です。
さらにRPA導入に伴い人件費や紙などの雑費が軽減されることにより、お金を他の住民サービスに使うこともできます。
このようにRPAの導入は、働いている職員だけではなく住民にとっても大きなメリットとなるのです。
4-3.人的ミスが少なくなる
どうしても入力・確認・集計などの単純作業を続けていくと、人的ミスが発生します。
RPAでは最初に設定するルールさえ間違っていなければミスはありません。
人的ミスが少なくなることで、ミスが起こった際の対処する時間の削減や情報漏えいのリスクの回避などにも大きく影響してきます。
4-4.労働環境の改善・人手不足の解消
近年の人口減少に伴って、人手不足は深刻な問題になっています。
そうなると一人当たりに割り当てられる仕事量が増し、時間内に終わらず残業や休日出勤をしなければならない人も増えてくるでしょう。
RPAに任せられるところを任せ、効率化を図ることで労働環境は改善されます。
RPA導入で浮いた職員を他の部署に移せば、人手不足解消にも繋がり一石二鳥です。
5.RPAを導入する際の課題3つ

RPAは、自治体の住民にとっても良いことだからといって安易に導入することを進めてはいけません。
RPAを導入する際には、以下のような課題があるからです。

これらの課題をクリアしてからRPAの導入を進めていかないと、途中で不具合を起こしたり管理することができなくなってしまったりするので注意してください。
5-1.RPAを扱える人材の確保
まずRPAを導入するにあたり、絶対に必要なのが管理者の確保です。RPAを推進・実行できる人材は少なく、人材不足のためRPA導入を断念している自治体も少なくありません。
RPAにはプログラム言語が必要というわけではないのでプログラマーでなくても比較的簡単に設定することは可能です。しかし、ある程度のITリテラシーは必要であり、さらに継続的にメンテナンスができ流人が必要となります。
そのため1人だけ精通した人がいても上手く運用していくことはできません。定期的に研修を行うなどして、RPAに携わることができる職員を増やしていきましょう。
また、自治体で働く職員は異動も多く、管理者が異動してしまっても変わらずに管理を行うことができる人材育成もRPA導入の際には同時に進めていく必要があるのです。
5-2.セキュリティ対策
自治体の業務は住民の個人情報を扱うことも多いため、セキュリティ対策も万全にする必要があります。
RPAシステムを導入することで、インターネット回線などを通じて第三者が不正アクセスやアカウントの乗っ取りが行われてしまう危険があります。
RPA導入前に必ずネットワークやパソコンの情報セキュリティ対策をしっかりと行っておきましょう。
さらに職員のセキュリティ教育も十分に行う必要があります。
セキュリティを甘くみていて後々に住民に被害を被るような大きな問題となってしまうこともあるので、徹底して行うようにしてください。
5-3.業務の電子化・標準化
RPAを導入する際には、業務を自動化しやすいようにしなければなりません。
マニュアル化されていない業務やイレギュラーな対応が多い業務は、標準化する必要があります。
また、申請書など紙ベースのものが多く業務をRPA化しても紙ベースを電子化しなければならず、時間がかかってしまうということも大きな課題です。
データの電子化や作業の標準化は必須事項であり、RPAがスムーズに運用されるポイントともなります。
6.RPAの導入を失敗しないための3つのポイント

ではRPAの導入を失敗しないためにはどんなことに気を付けると良いのでしょうか。そのポイントは3つあります。

それぞれ詳しくみていきましょう。
6-1.使いやすいRPAツールを選ぶ
第一に使いやすいRPAツールを選ぶことが重要です。
職員の多くは事務職として紙での処理を行ってきました。パソコンやデジタル化に抵抗を持っている方も少なからずいると思います。
RPAを継続して導入していくためには、一部の人が使えれば良いというわけではありません。誰でも簡単に操作ができるものを選ぶ必要があります。
RPAツールの中には、無料トライアル期間があるものや専門知識がなくても使いこなせるもの、スマホのような操作で簡単にロボットを作成できるものまで様々です。
他の自治体なども参考に、導入実績が豊富なRPAを試してみてはいかがでしょうか。
RPAの導入実績が多いおすすめのツールは以下の3つです。
6-2.導入範囲は少しずつ広げる
庁内にはRPAに置き換えできる業務がたくさんあります。
庁内で行われる定型作業は多く、RPAを導入することで業務時間削減の可能性は大きいです。
あれもこれもRPAにお任せできたら効率が上がりそう!と期待が膨らみますが、導入範囲は少しずつ広げていくのが無難です。
一気に導入してしまうと、不具合が起きてしまったときに対処に追われ、業務に支障をきたしてしまうかもしれません。
まずは処理時間や発生頻度を考慮し、最適な業務からRPAを導入していきましょう。
6-3.サポート体制を整える
職員の中に専門的な知識を持つ人がいない場合には、RPAベンダーのサポートは必須になります。
RPAに連携させるソフトウェアのバージョンアップや不具合によって、異常をきたしてしまった場合、すぐに頼れる場所を確保しておきたいものです。
スタート時だけでなく、アフターフォローがしっかり付いているRPAツールを選ぶと安心です。
7.RPAの検討から運用までの進め方

最後にRPAの検討から運用までどのような流れで進めていくのか、4つのステップに分けてお話していきます。

それでは、進め方を詳しくみていきましょう。
7-1.導入前に情報を収集し検討する
まずは導入前に情報を収集し、検討していきます。RPAができることを把握し、自動化したい業務を洗い出します。
ICTリテラシーが高くない方もいるでしょうから、まずは出来る・出来ないに関わらず、自動化になったら楽になるなーという業務を洗い出してもらいましょう。
その中で負荷が高いものなどに優先順位をつけ、具体的にどの業務で運用・効果の実証を行うか決めていきます。
7-2.RPA導入に関して企画・予算化する
次にRPAの導入のために企画、予算化していきます。
以下のように実際にRPAを導入する前に決めておくべきことや確認すべきことを明確にしていきましょう。
7-3.RPA導入・運用で必要なものを調達する
企画・予算化が終わればRPA導入後に自動化する作業をさらに具体化していきます。同時に処理手順や方法も具体化していきましょう。
そして、実際にRPAツールを調達していきます。以下のRPAツールを決める際の基準をもとに決定していきましょう。
これらの基準をもとに自治体で適したRPAツールを選定すると、導入もスムーズに行われ運用もしやすくなります。
7-4.テスト・運用・効果の実証を行う
RPAツールを調達した後は、作業手順でもあるシナリオを作成していきます。シナリオの作成はRPAツールごとに異なりますが、基本的にはドラッグ・アンド・ドロップで処理手順を追加したり入れ替えたりして行います。
シナリオ作成後はテストを行い、シナリオが想定通りに実行されるか確認します。
そしてテストも上手くいけば、運用が開始されます。運用後は、効果目標に対してどのくらい効果が出ているのか評価しなければなりません。
評価することで、導入後の業務時間や改善点が明確になるからです。RPAを導入すること自体が目的にならず、しっかりと運用していける体制を整えることが重要です。
まとめ
RPAはまだまだ自治体において導入が少ないのが現状ですが、高齢化や人口減少の問題に直面する今、RPAは大きな助けになります。
RPAを導入する際には活用方法を理解し、自治体の状況に合った業務に適切なRPAツールを導入する必要があります。

エンジニア等がいなくても、RPAベンダーのサポートや少しずつ導入範囲を広げていけば不可能ではありません。まずは情報収集や使いやすいRPAツールを検討し、導入に向けて動き出していきましょう。
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