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産学官連携のチカラでつくる「日本一起業しやすいまち」

仙台市 の取り組み

産学官連携のチカラでつくる「日本一起業しやすいまち」

過去5年で開業件数が約6倍に急増した施策とは

産学官連携のチカラでつくる「日本一起業しやすいまち」

仙台市長 郡 和子
[提供] 株式会社エンライズコーポレーション

「日本一起業しやすいまち」を目指して起業支援に取り組んでいる仙台市。過去5年で開業件数が約6倍に急増するなど、目覚ましい成果を上げている。なぜ、起業の気運が盛り上がっているのか。市主導で進められている基盤整備や支援メニュー内容、起業支援への想いなどを仙台市長の郡氏に聞いた。

未来を切り開いていく人材が不可欠

―仙台市では「日本一起業しやすいまち」を標榜し、市ではさまざまな支援メニューを拡充しています。まず、なぜ仙台市で起業する人たちが急増しているのか、その理由を教えてください。

東日本大震災以降、本市では、誰かのために、地域のために、という想いを持って新たなビジネスに挑戦しようとする機運が高まり始めました。

職場を失った方、若者、主婦などが、規模は小さくても、被災地の復興や地域課題の解決を目的とした新しいビジネスを始めるといった動きが出ています。被災地では、新たな未来を切り開いていく人材が不可欠であり、起業家は最も重要な人材だと考えています。

このような起業家による動きを積極的に後押ししたいという想いがある一方で、仙台市が起業支援の取り組む理由としては、東北地方の抱える課題があります。

震災前から東北地方は全国的に見ても少子高齢化が進んでいる地域です。最近では、地方創生という言葉をよく耳にするようになりましたが、どうすれば若い方に地元に残ってもらい、地元で働き、子どもを産み、育ててもらうかということは非常に重要なテーマです。

もうひとつは、復興需要の収束です。

―起業支援は地方創生の柱のひとつ、ということなんですね。復興需要の収束とは、どういったことでしょう?

阪神淡路大震災で甚大な被害を受けた神戸の例では、復興需要の収束後、長い間経済の停滞に悩まされました。仙台市も震災後3年くらいは復興需要により景況感がよくなりましたが、その後は徐々に落ち込んでいます。

復興の先の経済成長をいかに実現していくかという課題もあり、地域に根差した強い企業をどのように育成、支援していくかということも重要なテーマだと考えています。

「アシ☆スタ」という核

―具体的には、どのような政策を進めているのですか。

仙台市では、このような東北の抱える課題を踏まえながら、震災復興の先の地域経済の成長を見据えた仙台版成長戦略である「仙台経済成長デザイン」を平成26年2月に策定しました。

仙台経済デザインでは、4つの数値目標を設定し、第一に「新規開業率日本一」を目指すことにしました。この経済成長デザインに基づき、地域経済活性化のエンジンとなる起業家を生み出すために、様々な起業支援の施策を展開しています。

その核となるのが、平成26年1月に公益財団法人仙台市産業振興事業団内に立ち上げました仙台市起業支援センター「アシ☆スタ」です。

仙台市産業振興事業団では、アシ☆スタ立ち上げ以前から、中小企業支援の一環として起業・創業に関する相談やセミナーを実施していましたが、起業支援に力を入れるために、新たに看板を掲げ、ワンストップ相談窓口としての機能を強化しました。

アシ☆スタでは中小企業診断士や税理士、行政書士などが起業や経営の相談に応じているほか、地域の様々な支援機関とも連携し、セミナーや起業家同士の交流会などを展開しています。

―エコシステムの構築を主導し、起業を後押ししようという取り組みですね。ほかには、どのような政策メニューを進めていますか。

震災後、女性の起業気運が高まっているという状況があったため、女性限定のセミナーや全てのセミナーへ託児サービスをつけているほか、女性の相談員が毎日常駐し、女性の起業志望者の相談に応じるなど、女性の起業を促進させる取り組みも行っています。

また、セミナーのアンケートなどでニーズの高かった、起業家や起業を志す方々相互の交流や先輩起業家との人的ネットワークづくりを支援するため、交流の拠点となる「アシ☆スタ交流サロン」を平成27年10月に開設しました。
交流サロンでは、起業家および起業を志す方々が自由に利用できるオープンスペースやミーティングスペース、起業関連図書を備え、起業に関するさまざまなセミナーや交流会などのイベントを開催しています。

アシ☆スタ開設前と開設後で起業相談件数、開業支援件数を比べてみると、相談件数で約5倍、開業件数では約6倍となり、平成28年度では110件を超える起業家を輩出しています。

また、政令市と東京都の新規開業率の状況を見ますと、平成26年度の経済センサス(※脚注1)においては、福岡市に次いで、2位という結果となりました。

このような成果をさらに雇用創出など地域経済活性化につなげていくために、平成29年度より新たな取組みを行っています。

起業家が起業家を育てるエコシステム「東北アクセラレーター」

―大きな実績が出ているんですね。平成29年度からの新たな取り組みの内容を教えてください。

ひとつは先輩起業家メンター制度です。アシ☆スタにおける新たな支援メニューで、“起業家が起業家を生み出す”エコシステムの構築に向けて、現役経営者である先輩起業家にメンターとして登録していただき、希望者に対し、経験に基づく経営ノウハウなどに関する実践的なアドバイスを行っていただいています。

もうひとつは、起業家集中支援プログラム「東北アクセラレーター」です。アクセラレーター自体はご存じの方も多いかと思いますが、面接選考やプレゼンテーションなどにより選抜された起業家を対象に、専門家によるレクチャーやメンタリングを通じたビジネスプランのブラッシュアップ、投資家・金融機関・大企業とのマッチングの場を設定するなどの集中支援を行うものです。

東京や大阪、神戸、福岡などでも行われており、本市では平成29年度よりスタートさせたものですが、本プログラムの特徴は、仙台だけでなく、東北全体を巻き込んだ広域的なアクセラレーターであるというところです。

―仙台市のみならず、東北全体を見据えた取り組みを行っているんですね。

先ほどもお話したように、東北地方は少子高齢化が顕著な地域です。東北の衰退は仙台の衰退につながります。広域的な視点で東北全体にムーブメントを巻き起こすべく、仙台、東北からロールモデルとなる起業家の輩出することを目指して、本事業を行っています。

実際に東北各地の起業家から応募がありましたし、アクセラレータープログラムに採択された起業家もいます。現在、採択企業の皆さまは専門家によるレクチャーやメンタリングを受け、起業家自身も、ビジネスプランも成長させている最中です。

最終的にはこのプログラムを通じて成長した起業家がレクチャーやメンタリングを行う側となり、東北全体で“起業家が起業家を育てるエコシステム”を構築できればと考えています。


産学官連携で「世界へ羽ばたくベンチャー」

―スタートアップ・ベンチャー育成・振興について、産学官連携のあるべきあり方について市長のお考えを聞かせてください。

産学官連携においては、大学発ベンチャー創出・育成に力を入れて取り組んでいく必要があります。

大学発ベンチャーは大学などの先端技術を基に事業化する場合が多いわけですが、一方で経営人材の不足が課題です。事業戦略や経営感覚に優れた人材と組むことが、その後の成功につながる可能性が高まりますので、そのような部分で産学官が協力できるのではないかと考えています。

一例ですが、東北大学では中小企業基盤整備機構などと連携し、学内にアントレプレナー育成拠点の整備や経営人材育成プログラムを実施しているとうかがっております。

また、大学発ベンチャーの大きな課題となっている資金調達についても、産業支援機関や行政機関の支援が不可欠であると考えています。仙台市は現在、東北大学青葉山キャンパスに立地する「東北大学連携型起業家育成施設(T-Biz:ティービズ)」に入居する東北大学発ベンチャー等に対して、宮城県とともに賃料補助や各種支援メニューの展開等を行うとともに、運営主体の中小企業基盤整備機構に対して施設運営費を支援してきたところです。

こうした取組みが功を奏し、これまで株式会社TESS(テス)(※脚注1)やボールウェーブ株式会社(※脚注2)などがベンチャーファンドからの資金調達に成功し、事業拡大につながっています。

今後も産学官連携を密にしながら、大学発ベンチャーの創出・育成に取り組んでまいりたいと考えています。そして世界へと羽ばたいていくベンチャー企業が、東北大学をはじめとした地元の大学から数多く輩出されていくことを期待しています。

※脚注1
株式会社TESS:脳の病気や脊髄損傷で歩行困難な方でも、両足でスイスイ漕いで自由に移動できる「足こぎ車いす」を開発し、海外へも展開中。

※脚注2
ボールウェーブ株式会社:半導体技術を活用した超小型、高感度、低価格の微量水分センサを開発。水素社会に向けて、微量水分でも含有を嫌う国内外のプラントメーカーなどから注目されている。

チャレンジする人たちを全力で応援

―地方創生に向けてスタートアップやベンチャー企業にどんなことを期待していますか。

やはり雇用の創出ですね。少子高齢化で市場が縮小していくなかで、いかに新たなビジネスを生み出し、そこに雇用を創出していくか、それが起業家に期待することであり、果たすべき役割だと考えています。

また、仙台市は「女性活躍・社会起業の改革拠点」として平成27年8月に国家戦略特区に指定されました。この強みを生かすべく、仙台市を含む東北各地のソーシャル・イノベーション創出を促進するために、社会起業家の育成にも今年度より取り組んでいます。

課題先進地の東北から、課題解決先進地へと生まれ変わり、それを日本全体に波及させるべく、セミナーやワークショップにより社会起業家を志す人材のすそ野を拡大し、集中支援プログラムによる社会起業家の育成を図り、ロールモデルの輩出、社会課題の解決を進めてまいりたいと考えています。

また、仙台市は東北の中枢都市として、東北全体の持続的発展を牽引していく立場であり、そのためには、先に述べたとおり、地域に根差した強い企業をどのように育成、支援していくかが肝要であると考えています。そのためには、スタートアップ・ベンチャー企業を含めた、市内企業の99%を占める中小企業の支援、中でも成長意欲のある地元中小企業のみなさまがさらなる活躍をしていただき、地域経済を牽引していく存在になっていただけるような環境を整備していきたいと思います。

地元企業のみなさまは、地域における経済や雇用のみならず、まちづくりや地域活動の重要な担い手でもあります。今後、地域課題の複雑化かつ多様化が見込まれる中で、地域のキープレイヤーである地元企業のみなさまの事業を通じた社会貢献・地域貢献は、ますます重要性を増すものと考えています。

この地域を課題解決先進地に生まれ変わらせるためにも、地元企業のみなさまと軌を一にしながら、さまざまな取り組みを進めてまいりたいと思います。 

―仙台で起業している人たち、仙台での起業を志している人たちへメッセージを聞かせてください。

人口減少により市場が縮小していくなかにおいては、新たなビジネスにより市場を生み出していくことが重要です。それを担うのが、スタートアップやベンチャーであると信じています。

さまざまな起業支援以外にも、豊かな自然、コンパクトな都市機能なども仙台市の大きな魅力です。仕事と住居が近い距離にあり、いろいろなことに取り組める街です。おいしいものもたくさんあります(笑)。こうした仙台市を「チャレンジの場」として選んでいただいた方たちを応援していきたい。それが、元気のある街、にぎわいのある街づくりにつながるはずですから。

私たち仙台市は、仙台・東北でチャレンジする人たちを全力で応援します。ベンチャーファンドやシェアオフィスなどの創業支援を通じて「チャレンジする人を応援する人」も仙台市では増えており、こうした方々とも連携していけたらと考えています。これからも豊かに住み続けられる未来を一緒に創っていきましょう。

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(受付時間:9:00~21:00)

 

郡 和子(こおり かずこ)プロフィール

宮城県仙台市出身。東北学院大学経済学部を卒業し、東北放送株式会社に入社。放送報道制作局部長などを歴任。平成17年に衆議院議員選挙で初当選(以降、4期連続当選)。内閣府大臣政務官兼復興大臣政務官などを歴任。平成29年に第35代仙台市長(1期目)に就任。