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自宅からでも監視できる、ため池の水位監視システムを構築

ICTを活用した水害対策①

自宅からでも監視できる、ため池の水位監視システムを構築

砺波市 総務課 情報政策班 副班長 雄川 孝治
となみ衛星通信テレビ株式会社 業務部 部長兼インターネットメディア事業推進 室長 浅谷 一寛
[提供] マクセル株式会社

※下記は自治体通信 自治体DX特別号(2021年3月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。


近年、ひんぱんに発生するゲリラ豪雨や台風から住民を守るため、多くの自治体が水害対策に取り組んでいる。そうしたなか、砺波市(富山県)では、市内にあるため池の水位監視システムの刷新を行った。取り組みの詳細を、同市の雄川氏と新システム導入を支援したとなみ衛星通信テレビの浅谷氏に聞いた。

砺波市データ
人口:4万8,088人(令和2年12月末現在) 世帯数:1万7,301世帯(令和2年12月末現在) 予算規模:458億6,350万円(令和2年度当初) 面積:127.03km² 概要:富山県西部に位置している。市域を縦貫する一級河川庄川によって形成された砺波平野には、屋敷林に囲まれた家々が点在する散居村が広がっており、その景観は日本の農村の原風景とも言われ、全国的に知られている。また、多種多様な商業施設が揃い、医療や子育て環境・高齢者福祉なども充実。民間調査会社が発表する住みよさランキングにおいて、つねに上位にランクインする日本有数の「住みよさ」を誇っている。
砺波市
総務課 情報政策班 副班長
雄川 孝治おがわ こうじ
となみ衛星通信テレビ株式会社
業務部 部長兼インターネットメディア事業推進 室長
浅谷 一寛あさたに かずひろ

OSサポート終了にともない、システムの見直しが必要に

―水位監視システムを刷新した背景を教えてください。

雄川 以前のシステムでサーバの役割を果たしていたパソコンのOSサポートが終了することになったため、システムの見直しが必要となったのです。機器およびOSをそのまま更新すると多額の費用が発生することもあり、新しいシステムを模索していました。

―新システムにおいて費用以外で重視したポイントはありますか。

雄川 庁内にいなくても、監視ができる点ですね。以前は庁内のイントラネットを使っていたため、庁内でしか使えなかったのです。しかし、ゲリラ豪雨や台風は当然のことながら、勤務時間内に起こるとは限りません。そのため、たとえば自宅にいてもため池の水位が確認できるようなシステムにしたいという要望は、現場の声として上がっていました。

浅谷 そこで当社は、砺波市の条件を満たすNECネッツエスアイの『Symphonictプラットフォーム』を活用した水位監視システムを提案いたしました。こちらは、水位情報をクラウド上で管理でき、担当者が庁内にいなくてもスマートフォンやタブレット端末などで確認することが可能です。また、長期間もつ電池電源システムが機内に内蔵されており、現地に新しくケーブルを敷設して電源を引くといったような工事を必要としません。さらに、長距離のデータ通信や低消費電力などの特徴をもつLPWA(※)という無線方式を採用しているため、コストダウンが図れるのです。

※LPWA:Low Power Wide Areaの略で、低消費電力で長距離伝送を可能とする無線方式のひとつ


水害対策以外にも、活用の場を広げたい

―実際に新システムを導入していかがでしょう。

雄川 令和2年の3月から稼働していますが、端末さえあればどこでも情報を得ることができますので、期待通りの働きをしてくれています。コスト面からみても、OSを更新する場合とくらべて約半分程度ですんでいると思います。

―新システムに関する今後の活用方針を教えてください。

浅谷 『Symphonictプラットフォーム』を活用して、さまざまな提案をしていきたいですね。これまでの自治体は、水位なら水位、降雪量なら降雪量といったように、「ひとつのセンサーにはこのシステム」と、バラバラに導入していたと思います。『Symphonictプラットフォーム』があれば、自治体のあらゆる情報が集まるプラットフォームにすることが可能。用途によって、センサーや通信もフレキシブルに変更できるのもポイントです。

雄川 砺波市には春に「となみチューリップフェア」というイベントがあり、例年多くの観光客が訪れます。そこで人の動線を調べ、観光施策に活かすようなことも可能と考えています。ゆくゆくは、そうしたことにも取り組みたいですね。

となみ衛星通信テレビ株式会社
設立 平成元年1月
資本金 4億9,860万円
従業員数 42人
事業内容 有線テレビジョン放送による有線テレビジョン放送事業、有線放送を利用した電気通信事業法による電気通信事業、前記に付帯するいっさいの業務
URL https://www.tst.ne.jp/

支援企業の視点

デジタル技術を活用することで、場所やデバイスを選ばない監視が可能

NECネッツエスアイ株式会社 ビジネスデザイン統括本部/DXビジネス推進本部
第二サービス企画グループ グループマネージャー 山崎 匡人

※下記は自治体通信 自治体DX特別号(2021年3月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。


NECネッツエスアイ株式会社
ビジネスデザイン統括本部/ DXビジネス推進本部
第二サービス企画グループ グループマネージャー
山崎 匡人やまざき まさと

―水位監視システムを導入するうえでの課題はなんでしょう。

 砺波市のように、庁内でしか監視ができないという課題はありますね。また近年は、多くのポイントを監視する必要性が出てきています。たとえば大きな河川にはすでに監視システムを設置していても、ゲリラ豪雨が起こる昨今、枝葉の分かれたより小規模の河川も見なければならない。ため池にしても、域内に数千ヵ所ある自治体もあります。さらに、水害の恐れがあるポイントは必ずしも電源を引けたり、電波が届いたりする環境とは限らない。大がかりな工事を行えば、当然コストがかかります。ポイントごとにそんなコストをかけることは現実的ではありませんから、限定的な対策を行わざるをえないのです。

―どうすればいいのですか。

 デジタル技術を活用することで、そうした課題は解決できます。当社の『Symphonictプラットフォーム』で水位情報を管理すれば、場所やデバイスを選ばずに確認することが可能。定められている水位を超えた場合には、担当者にメールが送られ、突発的な災害にも即時対応ができます。また、公衆回線のLPWAと電池式IoT通信システムを採用することで、基地局の設置や電源を引くなどの工事を必要とせず、コストを抑えられます。

―自治体における今後の支援方針を教えてください。

 『Symphonictプラットフォーム』は、水位監視システムにとどまらず、さまざまな用途に活用できます。パートナー企業とともに、そうした支援を行っていきたいですね。

山崎 匡人 (やまざき まさと) プロフィール
昭和52年、京都府生まれ。平成11年に国立奈良工業高等専門学校を卒業後、NECネッツエスアイ株式会社に入社。電話交換機施工業務を担当する。その後、ITインフラSE経験を経て、令和2年からサービス企画グループのグループマネージャーとして、『Symphonictプラットフォーム』を含むサービスの企画・開発業務を担当している。

民間企業の取り組み

ICTを活用した水害対策②

水害対策にとどまらない、IoTソリューション

NECネッツエスアイ株式会社 ビジネスデザイン統括本部/DXビジネス推進本部
第二サービス企画グループ グループマネージャー 山崎 匡人
マクセル株式会社 エナジー事業本部 電池事業部 技術部 担当部長 宮本 真
株式会社アイ・オー・データ機器 営業本部 市場開拓部 パートナー開拓課 課長代理 土井 健司

※下記は自治体通信 自治体DX特別号(2021年3月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。


前ページで紹介した砺波市の水位監視システムには、NECネッツエスアイをはじめ、パートナー企業の技術が活かされている。このページでは、同社のほか、マクセル、アイ・オー・データ機器を取材、水害対策にとどまらない、各社の取り組みを聞いた。


NECネッツエスアイ株式会社
ビジネスデザイン統括本部/DXビジネス推進本部
第二サービス企画グループ グループマネージャー
山崎 匡人やまざき まさと

―改めて、『Symphonictプラットフォーム』の役割を聞かせてください。

 マクセル、アイ・オー・データ機器のソリューションと、利用者である自治体とをつなぐプラットフォームの役目を果たしています。砺波市のケースで言えば、水位監視システムから受信したデータをパソコンやスマートフォンで確認するインターフェースの部分ですね。優れたソリューションをもっている企業と、課題解決を望んでいる自治体を、当社が独自のデジタル技術でマッチングを図っているのです。

―ほかにどんな課題解決ができますか。

 当社では「災害対策」はもちろん、「都市開発」「住みやすいまちづくり」といったテーマで課題解決に貢献したいと考えています。これからもパートナー企業と「共創」することで自治体をサポートし、地元に密着したエコシステムをどんどんつくっていきたいですね。


NECネッツエスアイ株式会社
設立 昭和28年11月
資本金 131億2,200万円(令和2年3月31日現在)
売上高 3,036億円(令和2年3月期:連結)
従業員数 7,818人
事業内容 ネットワークをコアとするICTシステムに関する企画・コンサルティングや設計・構築などの提供、および日本全国にわたるサポートサービス拠点による24時間365日対応の保守・運用、監視サービスならびにアウトソーシングサービスの提供
URL https://www.nesic.co.jp/
お問い合わせ電話番号 03-4582-2950(平日9:00~17:00)
お問い合わせメールアドレス dt-contact@ml.nesic.com

マクセル株式会社
エナジー事業本部 電池事業部 技術部 担当部長
宮本 真みやもと まこと

―マクセルはどのようなソリューションを提供しているのでしょう。

 電池だけで長期間駆動する、新コンセプト電源を提供しています。防災用の水位監視システムには太陽電池を使うケースが多いのですが、太陽電池の汚れや鉛電池の劣化などにより使用できる電力が低下するため、メンテナンスが必要になります。当社のIoT電源システムの場合、機器構成によっては10年間の電池駆動が可能ですので、実質、電源のメンテナンスを意識せずに使用できます。さらに、大容量の電池と省電力制御により、電源部を小型化できるので、工事費も削減できます。

―自治体に対する今後の支援方針を教えてください。

 IoTを導入するには、電源は非常に重要です。今後は獣害対策やインフラ監視といった分野などにも、それぞれの用途にあった最適な電源を提供していきたいですね。


太陽電池を使った危機管理型水位計(緑枠)と、マクセルのIoT電源システムを使った危機管理型水位計(赤枠)
(ソーラーパネルはイメージ)
宮本 真 (みやもと まこと) プロフィール
昭和36年、東京都生まれ。昭和63年に北海道大学を卒業後、株式会社日立製作所に入社し、研究業務を担当。その後、マクセル株式会社に移籍し、海外勤務を経て、平成19年からエネルギー関連製品の企画・開発業務を担当している。
マクセル株式会社
設立 平成29年4月
資本金 50億円
従業員数 1,755人
事業内容 エネルギー、産業用部材料および電器・コンシューマ製品の製造・販売
URL https://www.maxell.co.jp/
お問い合わせ電話番号 075-957-8115(平日9:00~17:00)
お問い合わせメールアドレス contact-maxelldengen@maxell.co.jp

株式会社アイ・オー・データ機器
営業本部 市場開拓部 パートナー開拓課 課長代理
土井 健司どい けんじ

―アイ・オー・データ機器の役割を教えてください。

 おもに水位監視を目的とした、電池式IoT通信システムを提供しています。こちらはマクセルのIoT電源システムをベースにし、当社で通信アンテナと通信モジュールを組み込んで製品化しています。電源工事が不要なうえに、LPWA通信に対応しているため、低コストで通信できます。現在は『ELTRES』と『ZETA』のLPWAに対応しており、将来的には対応種類を増やす予定です。通信アンテナは基板アンテナを筐体に内蔵しているため、風雨によって動いてしまったり、飛来物で破損してしまうリスクを防いでいるのもポイントですね。

―今後は自治体にどんな用途で利用してほしいですか。

 水位監視だけでなく、降雪監視や地下水路の水位監視といった分野にも活用してほしいと考えています。


アイ・オー・データ機器の電池式IoT通信システム。小型化、搭載電池のみでの長期運用を実現
土井 健司 (どい けんじ) プロフィール
昭和47年、兵庫県生まれ。平成26年、株式会社アイ・オー・データ機器に入社。BtoC向け販売部門を経て、令和元年から市場開拓部パートナー開拓課に配属。おもに公共・農業分野の新規開拓を担当している。
株式会社アイ・オー・データ機器
設立 昭和51年1月
資本金 35億8,800万円
売上高 562億400万円(令和2年6月期)
従業員数 540人(連結)
事業内容 デジタル家電周辺機器の製造・販売
URL https://www.iodata.jp/
問い合わせ先 https://wssl.iodata.jp/report/entry/?cid=biz_udns2contact
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