熊本県天草市 の取り組み

時間のかかる単純作業を大幅軽減し、コア業務に集中できるようになった
民間企業の間で急速に進んだRPAの導入は、財源や人手の不足などに課題を抱える多くの自治体に広まっている。近年の人口減を背景に職員の人手不足に悩む天草市(熊本県)も、平成30年12月から3ヵ月かけて、職員の業務をRPAでロボット化する実証実験を実施。その効果や職員の反応などについて、情報政策課の後迫氏に聞いた。
※下記は自治体通信 特別号(2019年8月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
熊本県天草市データ
人口: 8万202人(令和元年6月末現在)世帯数: 3万7,003世帯(令和元年6月末現在)予算規模: 809億1,559万3,000円(令和元年度当初)面積: 683.78km²概要: 熊本県南西部に位置し、天草上島や天草下島、御所浦島などで構成される。2市8町が合併し、平成18年に誕生。面積は県内最大で、地形のほとんどを山林が占める。産業は、温暖な気候を活かした農業や、豊かな水産資源を活かした漁業が主。世界遺産に登録された﨑津集落の潜伏キリシタンの歴史や南蛮文化など、多くの観光資源に恵まれている。
1ヵ月分の処理時間を削減
―RPA導入の実証実験を行った背景を教えてください。
生産年齢人口が減少するなかで、限られた財源と人手による住民サービスの向上が課題となっていました。そうした折に、定型業務を自動化できるRPAの存在を知り、「既存業務の負担軽減に役立てられるのではないか」と考えました。そして、具体的な効果を検証するために、実証実験を行ったのです。対象とする業務は、すでにExcelやシステムを使い、PCだけで処理を完結できるフローをもっていることを条件に、情報政策課が選定しました。
―どのような業務をRPAで自動化したのでしょう。
ひとつは、健康増進課の健康診断関連業務。各医療機関から送られてくる健康診断の受診結果に、受診者個人のIDを紐づけ、専用のシステムに取り込む作業です。作業自体は単純ではあるのですが、保健師など専門の知識をもつ臨時職員が年間で最大244時間もの時間を費やしていたので、その業務負担をRPAで軽減しようと考えました。
もうひとつは、財産経営課の公共料金関連業務。これは、庁内の各部署における電気料金といった公共料金請求データを、財務会計システムに取り込む作業です。公共料金はデータ受領後2、3日で伝票を作成しないと、料金の引き落としに間に合わないため、手作業で入力していた担当職員にとって精神的な負担になっていました。
―実証実験の効果を聞かせてください。
健康診断関連業務では、RPA導入によって処理時間を約80%削減。年間ベースで最大244時間かかっていた処理をわずか49.8時間まで短縮できる効果を検証できました。勤務日数ベースではほぼ1ヵ月分に当たる年間24.2日を減らせた計算です。
公共料金関連業務の削減率は約48%で、年間では105時間の処理時間を54.3時間に短縮できる結果になりました。
「いくらでも協力する」現場職員から喜びの声
―職員からはどのような反応がありましたか。
健康増進課の職員からは、「業務負担を削減したことでコア業務に集中することができるようになった」と喜ばれました。はじめはこちらから実証実験への協力をお願いするカタチだったのですが、効果を実感できたことで、「このような取り組みならいくらでも協力したい」と言ってくれたのはうれしかったですね。
公共料金関連業務を担当していた職員は、時間がかかっていた単純作業をエラーの確認だけに減らすことができました。「期日を気にしなければいけない作業をロボットが自動で正確に処理してくれることで、大きな精神的負担から解放された」と数値以上の効果を実感していました。
―数値的な効果も職員の反応も上々だったのですね。
ええ。今後は、実証実験で得られたRPA導入効果を庁内で宣伝し、全庁的にICTを活用した業務効率化への関心を高めていきたいですね。
まずは、データの確認などを手作業で行っている既存のシステム周りで業務の自動化を進めていき、確実に職員の業務効率化につなげていきたいと考えています。
