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奈良県斑鳩町 の取り組み

図書館を活用した地域ブランディング

いにしえの歴史を持つ町の図書館が取り組む『斑鳩の記憶アーカイブ化事業』

斑鳩町立図書館 館長 竹口 万五市
聖徳太子歴史資料室 職員 藤岡 久子 / 林 知子
[提供] NECネクサソリューションズ

平成5年12月、日本初のユネスコの世界文化遺産に登録された『法隆寺地域の仏教建造物』があり、聖徳太子ゆかりの地として知られる斑鳩町(奈良県)。同町にある斑鳩町立図書館には聖徳太子歴史資料室があり、観光客や学生、研究者の来館も多い。近年は変わりゆく町の情景を記録に残していくため、住民が所有する古い写真や映像を収集して公開する『斑鳩の記憶アーカイブ化事業』に取り組んでいる。町の変遷を後世に伝える以外にも、地方都市が共通して悩みを抱えている人口減少を見据えた上での取り組みだという。館長の竹口氏と、聖徳太子歴史資料室の職員である藤岡氏と林氏に、詳細を聞いた。

奈良県斑鳩町データ

人口: 2万8,347人(平成30年9月30日現在) 世帯数: 1万1,742世帯(平成30年9月30日現在) 予算規模: 180億2,957万円(平成30年度当初) 面積: 14.27km² 概要: 古い歴史を持つ町で、聖徳太子が飛鳥から斑鳩宮に移り住んだことで一躍脚光を浴びた。中世以降は、太子信仰の中心地となった。近世に入ると、法隆寺の門前や龍田村は宿場町として栄え、明治の廃藩置県を経て、昭和22年に龍田町、法隆寺村、富郷村が合併して現在の斑鳩町となった。世界文化遺産の法隆寺をはじめとする寺社や文化財、藤ノ木古墳などの豊かな歴史文化と、南に大和川、東に富雄川、西に竜田川が流れる水と緑豊かな自然に恵まれている。JR法隆寺駅から大阪へ約40分、奈良へは約12分と近く、国内外から多くの観光客が訪れる。

―まずは斑鳩町立図書館の概要を教えてください。

竹口:図書館として、平成9年にオープン。729席の大ホールを有する『いかるがホール』内に併設され、1階は閲覧室、書庫、対面朗読室、多目的室などを備えています。2階には平成22年に開室した聖徳太子歴史資料室があります。図書館全体の蔵書数は約20万8,400冊です。

 本の貸し出しは、斑鳩町内のみならず奈良県在住者を対象に、幅広く開放。また、県外在住者でも斑鳩町に在学、在勤している人にも貸し出しをしています。利用登録者数は平成30年3月末時点で2万2,455人。そのうち、斑鳩町在住者は1万3,494人です。

―斑鳩町立図書館ならではの特徴はなんでしょう。

竹口:長い歴史を持つ町ならではの蔵書があることですね。たとえば、聖徳太子歴史資料室は、法隆寺および同寺の元管主で長老の故・高田 良信(たかだ りょうしん)氏からの寄贈資料を基礎に、聖徳太子および法隆寺を中心とした地域資料を豊富に所蔵しています。また、平成29年には初代斑鳩町文化財活用センター長で考古学者の故・樋口 隆康(ひぐち たかやす)氏が所有していた奈良県に関する発掘調査報告書など考古学関係資料や蔵書をご遺族から寄贈していただき、「樋口文庫」として聖徳太子歴史資料室の一角に開設しました。地域資料は開館当初から収集してきたものを含め、現在約8,000冊の蔵書および古写真約420点を有します。

 さらに、国立国会図書館がデジタル化した、絶版などで入手困難な資料の送信サービスも行っているため、法隆寺や聖徳太子に関する資料、情報量には自信があります。

―レファレンスサービスが高く評価されているそうですね。

竹口:はい。聖徳太子歴史資料室を開室して以来、レファレンスが急増しました。多いのは、法隆寺の観光ボランティアガイドの方々からの、観光客の質問について不明な点や確認の専門的な問い合わせです。また、大学生の卒業論文や課題レポート、小中学生の宿題などの問い合わせも多く、斑鳩町や奈良県内のみならず、県外からも日々様々な問い合わせをいただき、随時対応しています。

―『斑鳩の記憶アーカイブ化事業』に取り組んだ背景を教えてください。

藤岡:そもそも斑鳩町は歴史ある町ですが、大阪のベッドタウンとして、特に昭和40年から50年にかけては人口が約2倍に急増し、その後も町並みは大きく変貌し続けています。図書館では聖徳太子歴史資料室を開室する前から地域資料の収集に注力してきましたが、「私たちの生活の場で育まれてきたモノや風景、習わしや記憶などの資料以外の貴重な斑鳩の宝物を丁寧に集めていきたい」という想いがありました。そこで、斑鳩町出身で金沢大学新学術創成研究機構助教の谷川 竜一(たにがわ りゅういち)氏の提言にもとづき、住民が所蔵する斑鳩町の古い写真や映像資料を収集して公開する『斑鳩の記憶アーカイブ化事業』を開始。その成果として平成27年、『斑鳩の記憶データベース』を正式公開しました。

 地域資料の蓄積機能としての役割はもちろんですが、斑鳩町の歴史や魅力を住民に再認識してもらうことに加え、移住者の促進に繋げていくことも期待しています。谷川氏は地方都市が共通して抱えている人口減少問題も見据えていて、「広げ過ぎた町をコンパクトに創り直していく場合、過去の町の写真や映像が未来のまちづくりの参考になる」とも言及しています。

 また、『斑鳩の記憶データベース』を若い世代にも認知・活用してもらうための取り組みも行っています。

―どういう取り組みですか。

林:町内の学校とも連携しながら、小学生の図書館見学や1日図書館員体験、中学生の職場体験学習や高校生の図書館ガイダンスの中で紹介するほか、先生方にもワークショップに参加してもらうなど、『斑鳩の記憶データベース』の理解促進を図っています。

 また、これも谷川氏の提案によるものですが、斑鳩町のまちづくりに役立つ図書を外部の研究者や専門家に推薦してもらう「これからのまちを考えるブックリレー」を平成29年11月から始めました。推薦本を読んでもらうことで、斑鳩町の未来のまちづくりを担う次世代の人たちが考え、将来具現化していくことを期待する取り組みです。推薦者の選定も谷川氏にしていただき、第1回は関西学院大学人間福祉学部人間科学科教授の山 泰幸(やま よしゆき)氏、京都大学大学院工学研究科講師の前田 昌弘(まえだ まさひろ)氏の推薦図書5冊が選ばれました。

―取り組みの中で見えてきた効果について教えて下さい。

藤岡:たとえば古くから住む住民にとっては、「聖徳太子さんのお創りになった町」という誇りと愛着を持っていることに加え、古い記憶を思い出しあって共有することで、改めて「斑鳩は歴史も文化もたくさんあるよい町だ。住んでいてよかった」ということを再認識してもらっています。

 また、町外から引っ越してきた住民からは「知らないことが多かったが、自然や文化に愛着が湧きました」「連綿と続く生活や文化、自然環境に意味や深みを感じました」などの感想が寄せられていて、斑鳩町に親しみを深めるきっかけとなっています。

林:ブックリレーも好評で、平成30年末まで計4回重ねてきましたが、推薦図書は常に貸し出しが続き、同じコーナーに設置したまちづくり関連図書も貸し出されて読まれるようになりました。

 現在、インターネットで公開されている『斑鳩の記憶データベース』への訪問者数は、月平均1,156人で、ブックリレー開始前の平均1,089人より微増しました。ブックリレーの開始以前は期間的に写真投稿の有無によってアクセス数に幅がありましたが、開始後はコンスタントに訪問が続いています。紹介する図書を読んでもらうことで、まちづくりのための素地が住民に養われ、斑鳩町への愛着や誇りを古い時代の姿に学ぼうとする機運が高まり、今後の斑鳩町をよりよくしてくれるものと期待しています。

―近年は、積極的なICT化にも取り組んでいるそうですが、どのような取り組みですか。

竹口:夏休みに開催された子ども模擬議会における要望に応えて平成29年4月1日より、「電子図書館サービス」を開始しました。開始初年度より人口規模に対して大変高い利用率を誇っています。

 旅行雑誌、小説、子ども向け動く絵本などをはじめ、当館独自資料として、斑鳩に関する作品を国立国会図書館デジタルコレクションからセレクトして閲覧しやすくレイアウトしています。

 また、住民サービス向上を図ることを目的として、平成30年10月よりNECの図書館システムを更新してクラウド型にしました。さらに、読書履歴を残すことに同意してもらうと、同意以降に借りた本の履歴がわかる「My本棚」という機能を導入。ある利用者から「いままで自分がシリーズ本のどの号を借りて読んだのかを覚えきれていなかったが、管理ができるようになってとても読書活動が豊かになった」といった意見をもらうなど好評です。加えて、読書目標を設定すれば現時点の読書量が把握できる「読書マラソン」も導入しました。町内小学校の児童や保護者と図書館に来られる子どもたちに対し、より本を読んでもらおうというのが狙いです。

 こうした取り組みが浸透することによって、「町内で読書が盛り上がっていけば」と考えています。

―今後の展望について教えて下さい。

竹口:地域資料は、住民にとっての歴史の財産です。過去に学び、そこから得たものを未来へ繋げていくために、親しみを持って利用してもらえる図書館運営を今後も展開していきます。

 さらに2021年には、法隆寺で聖徳太子1400年御遠忌が計画されています。そのため、斑鳩町立図書館も特別な展示を企画するなど、様々な計画を検討しています。1400年の蓄積された歴史を基盤として、未来へ飛躍、躍進する斑鳩町のために知恵を結集して積極的に取り組んでいきたいですね。

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