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愛知県安城市 の取り組み

集客力のある「図書館」を核に市内中心街を活性化へ導く

安城市 市民生活部アンフォーレ課長兼図書情報館長 岡田 知之

全国各地でみられる「中心市街地の空洞化」。平成12年から人口が3万人も増えている安城市(愛知県)ですら、それは例外ではなかった。平成14年には駅前にあった市内最大の病院が撤退したことで、空洞化に拍車がかかる状況に。どうすれば、にぎわいを創出できるのか。さまざまな意見が錯綜する中で、浮上してきたのは「図書館を核にしたにぎわいづくり」だった。施設の名は『アンフォーレ』。平成29年6月に開業すると、連日多くの人が訪れる施設となり、にぎわいを取り戻すことに成功した。ほかの自治体からの視察も絶えない、図書館を核とした複合施設誕生の経緯を館長の岡田氏に聞いた。

愛知県安城市データ

人口: 18万8,693人(平成30年4月1日現在) 世帯数: 7万4,628世帯(平成30年4月1日現在) 予算規模: 1,068億3,200万円(平成30年度当初) 面積: 86.05km² 概要: 愛知県西三河地方に位置している。明治時代に明治用水が開通したのを機に、農業において先進的な取り組みが行われたことから、1900年代前半には農業先進国デンマークになぞらえて「日本デンマーク」と呼ばれた。終戦後は、自動車関連の企業の進出によって、人口は増加傾向が続き、1952年の市制施行当時3万7,704人であった人口が今では18万人を上回るほどに成長し、農・工・商業のバランスのとれたまちとなっている。

―『アンフォーレ』設立以前に、安城市が抱えていた課題を教えてください。

 平成8年から9年にかけて郊外型の大型店が相次いでできたのをきっかけに中心市街地の空洞化が顕著になりました。平成14年には、JR安城駅から徒歩5分のところにあった市内で最も大きい総合病院が郊外に移転し、空洞化に拍車がかかりました。病院は1日3,000人もが来院していたと言われており、にぎわいが徐々に失われていき、その影響かどうか分かりませんが、駅前にあった大型スーパーも閉店してしまいました。

 当市は今でも人口こそ増えていますが、中心市街地のにぎわいは失われ、高齢化率も上がっている状況にありました。病院の跡地は市がすぐに取得したものの、うまく活用できる方法はないかと模索を続けていました。

―どのような経緯で、図書館を核としたにぎわいづくりに着手することになったのでしょうか。

 当初、さまざまな議論がありました。「大学の誘致」や「公園の整備」といった案など議論百出でしたが、どれもにぎわい創出の決め手に欠けているという結論に。そんな中、市内における公共施設の入場者数を見てみると、昭和60年に郊外に移転していた中央図書館が1日1,300人、年間約45万人前後の人を集めており、「図書館を核にすることでにぎわいづくりができるのではないか」と候補にあがりました。当時、市内では安城産業文化公園『デンパーク』が年間47万人ほどで最も多かったのですが、それに匹敵する数です。3位の市体育館は20万人余りでしたので、集客力という意味では中央図書館は圧倒的な力を持っていました。

―それで、中央図書館を病院の跡地に建てるという話になったのですね。

 ええ。中央図書館はまだ築25年程でしたが、蔵書の収容能力が限界にきていました。また、高齢者、子ども、ビジネスパーソンなどへの対応を考えた場合でも、市民のニーズに応えるのが難しい状況に。そこで、図書館を新たにつくることで市民のニーズを満たし、さらに中心市街地の活性化にもつながるだろうと、病院跡地に図書館を核とした中心市街地拠点施設、愛称『アンフォーレ』を建設することが決まりました。

―そうした経緯で、新たに完成した『アンフォーレ』の特徴を教えてください。

 施設としては、図書館だけにとどまりません。本館2階から4階の「図書情報館」に加え、1階には250席のホールやカフェ、市民課窓口などがあります。隣接して273台の「立体駐車場」、スーパーマーケットやカルチャースクールなどの「商業棟」の3棟からなっています。大型店が相次いで閉店した影響で、市内中心部は近くにスーパーマーケットがなく、住民は買い物に不便さを感じている状態でした。高齢化率も高いため、徒歩で買い物に行けるニーズが高かったことから、スーパーマーケットの要望が強かったと思われます。

 また、「にぎわい創出」のために、さまざまなスペースを設けています。そのひとつが広場。広場でイベントを開催することで、にぎわいにつなげようという狙いがあります。現在、定期的にマルシェなどが開催されています。ホールではコンサートや映画上映会などが行われ、エントランスでも展示即売会や作品展など様々なイベントが連日開催されています。

―PFI方式を採用しながら、図書館は市直営ですね。

 当市では初めての試みとなる、PFI方式を採用しました。PFI方式は、民間企業が事業主体となって事業資金を調達し、設計・建築と維持管理まで行い、自治体は民間企業に事業費を支払うという仕組みです。この方式なら財政負担を縮減できることもあり、採用しました。

 ただ、PFI方式は施設運営も含めたすべてを民間企業に委ねることでより一層縮減効果が表れますが、施設の核となる図書館運営だけは市直営にこだわりました。図書館は以前から年間45万人も集まるなど、市民にとっても大切な場所です。利用者サービスの継続性を担保するには、直営が最もふさわしいだろうという判断でした。図書館の最大の特徴は蔵書構成にありますので「選書」は最も重要です。また「レファレンス」という、利用者が学習や調査研究などの目的で必要とされる資料を迅速的確に提供するサービスの拡充を考えていましたので、スムーズに実現させるためにも直営を維持すべきと考えました。

―新たな図書館において、運用面でこだわった点があれば教えてください。

 『図書情報館』では「4つの挑戦」を掲げて取り組んでいます。

 図書館の移転が決まったあと、市長から「従来のイメージを打ち破ってほしい」と要望されました。そこで職員全員で議論を重ねたうえで、次の4つの取り組みをすることにしました。

 ひとつは、会話と飲食を原則認めたことです。図書館は静かにしていなければいけない場所とされていましたが、吹き抜け構造による1階エントランスでのにぎわいを伝えるためにも、あえてその不文律を破ることにしました。

 次に、図書館独特の分類方法(NDC)に捉われないジャンル別排架に変更しました。それを象徴するコーナーが『らBOOKS』というコーナーです。「ライト」「ライク」「ラブ」の頭文字をとったもので、子どもたちの本離れを解消すべく、中高生や図書館初心者でも手に取りやすい内容のものをジャンルわけして、従来のティーンズコーナーを充実させました。

 3つ目は、ICTを活用して業務の自動化・省力化を徹底的に行い、スタッフはレファレンスやフロア案内に徹することとしたことです。その一例が、商工課と連携した「ビジネス支援センター」の設置です。商工課職員のビジネス相談に、図書館スタッフが必要に応じて、資料やデータベースを活用したレファレンスに応じるという取り組みです。

 そして4つ目が、市内小中学校の図書館との連携です。公共図書館と学校図書館のシステムを統合したことで、小中学校などの図書館で公共図書館の本を検索して予約できるようになり、週2回配送便を廻すことで、小中学校にいながらにして、「朝の読書用読み物」や授業で活用する「テーマ本」が借りられる仕組みを構築しました。

―開業後の効果について教えてください。

 平成29年度10か月間の『図書情報館』の入館者は1日平均約3,100人で、週末には4,000人を超えることもあります。以前が1日1,300人前後でしたので、2倍以上に増えています。本の貸出数も以前より2~3割ほど増加し、小中学校等への本の団体貸出数も2.8倍に増えています。ちなみに、『アンフォーレ』全体の利用者は1日約3,500人ですので、9割弱が図書館目的で来ていることになります。

 利用者で大きく変わったのは、乳幼児を連れたお父さんお母さんたちがとても多くなったことです。子どもの声がうるさいと来館をためらっていたお母さんたちが、会話・飲食が認められたことで、来やすくなったのだと思います。利用者の中には、「図書館にしてはうるさい」という声をいただくこともありますが、図書情報館3階・4階の奥に静かな空間を用意して、ご理解をいただくように案内しています。

―今後の展開の展望を教えてください。

 まちなかに人を呼び戻すことは、ある程度達成できました。ただ、開業からまだ日も浅いこともあり、来館者が中心市街地の商店街に流れて、まちなか全体の活性化につながるのにはもう少し時間がかかると思います。商店街でも『アンフォーレ』のイベントに参加してPR活動をしている店も出てきています。そうした動きがさらに活発になれば、にぎわいも戻ってくると思います。

 また、この地域はまだ土地区画整理事業の真っ最中ですので、更地になっている所も多くあります。そうした所にマンションなどが建ち、子育て世帯が定住すれば、地域もより活性化されると思っています。

 アンフォーレ来館者の中心は、やはり図書館利用者ですので、今後も、選書とレファレンスの充実などでよりきめ細かいサービスを行い、さらなる集客力アップをめざします。

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