全国の自治体トップ・職員・議員に贈る自治体の"経営力"を上げる情報サイト

全国の自治体トップ・職員・議員に贈る
自治体の"経営力"を上げる情報サイト

「見やすいフォント」を活用し、誰一人取り残さない日本語教育を

専門家の取り組み

「見やすいフォント」を活用し、誰一人取り残さない日本語教育を

崇城大学 就職課 課長補佐 地方経済総合研究所 特別研究員 前田 和則
[提供] 株式会社モリサワ

※下記は自治体通信 Vol.48(2023年3月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

外国人労働者が年々増えるなかで、令和元年に施行した「日本語教育推進法*1※(以下、推進法)」。そこでは、「日本語教育推進の施策立案と実行」が自治体の責務として定められ、各自治体とも取り組みを進めている最中だ。そうしたなか、「誰一人取り残さない教育が必要。そのための学習ツールがある」と語るのは、日本語教育の専門家である崇城大学の前田氏。その学習ツールの詳細を、同氏に聞いた。

崇城大学
就職課 課長補佐 地方経済総合研究所 特別研究員
前田 和則 まえだ かずのり

日本語教育に不可欠な、初学者にわかりやすいツール

―自治体における日本語教育の現状を教えてください。

 代表的な例では、地域在住の外国人を対象に、公民館などで日本語教室を開くなどの取り組みが見られます。多くの自治体で、日本語教師の不足から十分な教育が行えないという問題を抱えながらも、「推進法」の施行をきっかけに、日本語教育に取り組む機運は高まっています。たとえば熊本県では、令和4年度から「外国人材活躍促進支援事業」を実施し、そこには私も日本語教育の講師として参画しています。そうした経験から、今後自治体が日本語教育を推進していくなかで、私は根底に置くべき重要な考えがあると思っています。

―どのような考えでしょう。

 「誰一人取り残さない」という考えです。外国人労働者の増加に伴い、初めて日本語に接する外国人はこれまで以上に増えるでしょう。そうした人にもわかりやすく教えなければ、真の意味で「日本語教育の推進」は実現できません。そのために重要なのは学習ツールです。私は熊本県の事業で、「やさしい日本語*2」を活用して教えています。これは、難しい言葉を簡単な言葉に言い換えたり、一文を短くしたりするといった工夫で、まずは日本語に慣れてもらうことを重視しているものです。そしてもう1つ、日本語教育を効果的に進めるツールに求められる大切なアプローチがあります。

―具体的に教えてください。

 「見やすい文字で教える」というアプローチです。初めて日本語に接する外国人に対し、明朝体、ゴシック体など複数ジャンルの書体を初期学習に使うと、「あ」「お」など似た字形の識別時に混乱する要因となります。また、書体に装飾があれば文字の一部と認識し、間違って覚えることもあります。その意味では、年齢や母国語、障がいの有無を問わず、誰にでも読みやすくつくられた「UDフォント」、なかでも学習指導要領に準拠した『UDデジタル教科書体』は、日本語教育に不可欠なツールと言えます。熊本県の事業では、「やさしい日本語」とあわせて活用しています。

大学の留学生から、「圧倒的に見やすい」の声

―「見やすい文字」の反応はいかがですか。

 私が所属する崇城大学の留学生に、一般的なMS明朝体と見比べてもらったところ、「文字がくっきりしていて、圧倒的に見やすい」という意見でした。日本語に接していない初心者なら、なおさらその違いを感じると思います。

前田 和則 (まえだ かずのり) プロフィール
昭和55年、熊本県生まれ。大学卒業後、国内の日本語学校で日本語教師として勤務。平成18年に崇城大学へ転職し、おもに外国人留学生の受け入れやキャリア指導に携わる。令和4年からは公益財団法人地方経済総合研究所で特別研究員も兼任。

支援企業の視点

見やすさを追求した「教科書体」なら、読みやすい文字が書けるようになる

株式会社モリサワ 営業企画部 公共ビジネス課 野村 陽香
[提供] 株式会社モリサワ
株式会社モリサワ
営業企画部 公共ビジネス課
野村 陽香 のむら はるか

―「見やすい文字」で教える効果とはどのようなものですか。

 文字の「識別のしやすさ」以外に、「書きやすさ」という効果があると考えています。外国人が日本語を書く際、ゴシック体や明朝体の字形に沿って書き、読みにくくなってしまうことは多いです。それは、日本語を教える際のフォントが影響していると思います。当社の『UDデジタル教科書体』は、一般的な教科書体特有の線の強弱を抑え、多くの人に見やすさを追求すると同時に、「点」や「はらい」など細部にわたって「手書き」の形状を意識したフォントです。そのため書きやすく、日本語教師や外国人留学生に支持される傾向にあり、日本語教育の現場に貢献できると感じています。

―自治体に対する今後の支援方針を聞かせてください。

 自治体が日本語教育を推進する先に見据えているのは、「多文化共生」だと思います。そこで当社は、地域の住民と外国人が安心して共生できる社会を目指し、日本語教育支援以外にも、自治体の情報を外国人にしっかり伝えるための支援をしています。たとえば、多言語翻訳ツール『MCCatalog+』は、約220の自治体が導入し、広報誌の翻訳などに活用しています。日本語教育の推進、ひいては多文化共生を図りたい自治体の方々は、ぜひ当社にご連絡ください。

多文化共生の取り組みを推進する多言語翻訳ツール『MCCatalog+』
野村 陽香 (のむら はるか) プロフィール
平成9年、福井県生まれ。平成31年、株式会社モリサワへ入社。おもにUDフォントの拡販・販促業務を担当し、現在は日本語教育現場への普及活動を中心に行っている。
株式会社モリサワ
設立 昭和23年12月(創業/大正13年7月)
資本金 1億円
売上高 125億円(令和4年2月期)
従業員数 348人
事業内容 フォント事業、ソフトウェア事業、ソリューション事業
URL https://www.morisawa.co.jp/
お問い合わせ電話番号 03-3267-1378 (平日 9:00〜17:00)
お問い合わせメールアドレス public-biz@morisawa.co.jp
この記事で支援企業が提供している
ソリューションの資料をダウンロードする
\ たった1分で完了! /
 資料ダウンロードフォーム

*1:※正式名称は「日本語教育の推進に関する法律」

*2:※やさしい日本語 : おもに日本語が不慣れな外国人に対して、素早く的確に情報を伝えることを目的に考案された日本語