民間企業の取り組み
窓口申請のデジタル化
マイナンバーカードの利活用に備え、対面窓口のさらなるDXを進めよ
※下記は自治体通信 Vol.43(2022年10月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
オンラインでの行政手続きなど、自治体の窓口申請は着々とDXが進められている。そうしたなか、自治体に業務システムの提供や導入支援を行うフライトシステムコンサルティングの代表、片山氏は「自治体は、マイナンバーカードのさらなる利活用の拡大に備え、対面窓口のDXをより一層進める必要がある」と話す。いったいどういうことか。同氏に詳細を聞いた。

マイナンバーカードの普及で、読み取り端末の整備が急務に
―自治体の窓口申請における課題はなんでしょう。
対面窓口におけるデジタル化が進んではいるものの、まだまだ十分ではありません。自治体のDXというと、まず行政手続きのオンライン化をイメージする人が多いかと思います。実際、さまざまな行政手続きの申請がオンラインで行えるようになっています。ただ、オンライン化のみを突き進めてしまうと、デジタルデバイドによって取り残される人たちが出てきてしまう。そのため、リアルの窓口対応をデジタル化することで、来庁者がより便利なサービスを安心して受けられる体制を整える必要があります。自治体が目指すべきは、デジタルツールを自分では十分に扱えない人もDXの恩恵を十分に受けられる「人にやさしいデジタル化」なのです。
―具体的には、どういったことが必要なのでしょうか。
総務省の「自治体DX推進手順書」にもあるとおり、さらなるデジタル化の施策として、マイナンバーカードとタブレット端末を活用して、さまざまなサービスとの連携を早急に図るべきです。具体的には、マイナンバーカードの読み取りによる、手軽な本人確認や電子署名の実施。氏名、性別、住所、生年月日からなる基本四情報の取得と活用による、誤りのない申請書の作成などがあります。ゆくゆくは、マイナンバーカードの機能を活かした医療、介護、防災の分野などで官民連携のサービス提供が求められるでしょう。
―なぜ、マイナンバーカードへの対応を急ぐ必要があるのでしょう。
マイナンバーカードの普及率が急速に高まっており、今後はその利用シーンの拡大が予想されるからです。令和2年7月末時点で18.2%だったマイナンバーカードの普及率は、今年の8月1日時点では45.9%と、2年間で約2.5倍に上昇しており、政府は令和4年度末までにほとんどの住民が保有することを目指しています。今後、マイナンバーカードは、デジタル庁が推進している「引越しワンストップサービス*1」での活用も想定されています。そのほか、婚姻届や死亡届を提出する際の電子署名、在留カードとの一体化など、予想される利用シーンはあげればきりがないほどです。そのため、自治体の窓口は、マイナンバーカードを十分に活用するための環境を急いで用意する必要があるのです。
サービスの広がりを見すえた、拡張性の高いシステムが必要
―システムを選ぶ際に、注意すべき点はなんでしょう。
まずは、1つの読み取り端末で複数の業務を行うことができる、拡張性が高いシステムを選ぶことです。現在はマイナンバーカードの利用拡大への対応が急務となっていますが、今後はキャッシュレス決済にも対応していく必要があります。そうなったとき、窓口の読み取り端末が1つの業務しかこなせなければ、住民は受付窓口から本人確認窓口、決済窓口へと複数の窓口を転々とすることになり、利便性が損なわれます。また、提供するサービスが増えるごとに、自治体は新たな読み取り端末を導入しなければならなくなります。そして、これらを防ぐためのシステムの選択肢はあまり多くありません。
―それはなぜでしょう。
マイナンバーカードによる公的個人認証を利用したサービスを提供するには、国の「プラットフォーム事業者制度」に認定される必要があります。しかし、個人情報を扱うため、そのハードルが非常に高く、認定事業者の数自体が少ないのが現状なのです。そうしたなか、当社の『myVerifist(マイ・ベリフィスト)』は、マイナンバーカードの読み取りからキャッシュレス決済までを1台でこなせる読み取り端末『Incredist Premium II(インクレディスト・プレミアム・ツー)』と、それを操作する端末の2つで運用します。これは、情報セキュリティが厳しいクレジットカードをはじめとする、キャッシュレス決済に関する支援を長年提供してき当社だからこそ実現できたサービスだと自負しており、特許も申請中です。
―どのような特徴がありますか。
マイナンバーカードやクレジットカードといった読み取るカードの切り替えや、取得データの処理といった操作を行うには、おもにタブレット端末を活用する点です。『myVerifist』とタブレット端末を用意するだけで、出先機関を含むすべての窓口を安全で確実性の高い「マイナンバー&キャッシュレス対応窓口」に変えることができるのです。
端末にデータを残さないため、情報漏洩のリスクが低減
―そのほかに特徴はありますか。
「シンクライアント型」のソリューションである点です。シンクライアント型とは、端末内でデータを処理するのではなく、サーバ内で処理したデータを端末に送信する形式のアプリケーションです。この形式のサービスには、いくつものメリットがあります。
―具体的に教えてください。
高いレベルで情報セキュリティが担保されている点です。たとえば、端末の紛失や盗難が起こっても、端末側にデータがいっさい残っていないため、端末からデータが流出する心配がありません。紛失や盗難が発覚した場合、すぐにその端末からアクセス権限を取り上げて、不正アクセスによる情報漏洩を防ぐこともできます。
また、サーバ内のアプリケーションを拡張することで、窓口端末を入れ替えずに、さまざまな新サービスを展開可能です。さらに当社では、高い情報セキュリティを担保する取り組みを行っています。
―どのような取り組みですか。
情報セキュリティに厳しいクレジットカード業界で培った知見をもとに、独自のデータセンターを整備しました。そのデータセンターは、ハザードマップなどを参考に災害に強い立地を選んでいます。こうした細かな取り組みが評価され、我々はタブレット端末を用いたシンクライアント型のサービスを提供する企業のなかで唯一、「プラットフォーム事業者制度」の認定を受けられたのです。J-LISのマイナンバーカード読取端末認定や、各種カード決済にかかわるセキュリティ認定も取得済みです。
タブレット端末を使った、無人機としての運用も視野に
―情報セキュリティ面以外の特徴はありますか。
たとえば、カードを読み取る『Incredist Premium II』を操作する端末の種類を選ばない点です。サーバと操作端末とは画面情報と入力情報をネットワーク経由でやり取りするだけなので、タブレット端末の使用を推奨しつつも、さまざまなOSの端末でサービスを利用できます。既存端末もそのまま使えるため、コストを抑えつつ、短期間での導入が可能です。
一方で、読み取り端末をタブレット端末で操作する場合、対面窓口ならではのメリットもあります。
―それはなんでしょう。
タブレット端末は、窓口で住民に対して行政サービスの内容や手続き方法などを解説する際に、相手に画面を見せながら、タッチで操作できる点です。また、設置にスペースをあまりとりません。さらに、タブレット端末と読み取り端末を1つにまとめ、行政サービスの手続きや案内ができる無人機として運用することも可能です。限られたマンパワーで住民サービスの質を保つために、無人機を本庁舎や出張所などの出先機関に導入する自治体が増えてくるでしょう。
―自治体に対する、今後の支援方針について教えてください。
今後、自治体窓口は、「誰ひとり取り残さない」住民サービスを実現するために、さまざまな課題に直面することになるでしょう。我々には、これまでの公共システム整備とキャッシュレス化に携わってきた実績と経験があります。それらを活かして、各自治体の現状に寄り添いながら、窓口からオンラインまで、高度なセキュリティを確保したDXソリューションを提供し、「人にやさしいデジタル化」をお手伝いします。まずは、気軽にお問い合わせください。
設立 | 平成25年6月 |
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資本金 | 1億円(令和4年3月31日現在) |
売上高 | 32億5,570万円(令和4年3月31日現在) |
従業員数 | 108人(令和4年3月31日現在) |
事業内容 | システムコンサルティング事業、アプリケーション開発事業、システム保守事業、電子決済ソリューション事業 |
URL | https://www.flight.co.jp/ |
サービスURL | https://www.myverifist.com |
お問い合わせメールアドレス | product@flight.co.jp |
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*1:※引越しワンストップサービス : 引越しに伴う、行政機関や民間事業者に対する手続きを一括で行うことができるサービス