民間企業の取り組み
道路橋の水害対策
河床の「洗掘」状態を遠隔監視し、豪雨による橋梁被害を未然に防げ
インフラマネジメント事業部 東日本事業地域 事業部次長 宮村 正樹
※下記は自治体通信 Vol.42(2022年9月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
集中豪雨の激甚化や頻発化が進む近年、人々が通行する道路橋の安全を河川の増水から守ることは、自治体の重要な責務となっている。しかし、建設コンサルティングを手がける福山コンサルタントの宮村氏は、「水中に隠れた橋梁基礎の部分に関しては、安全性を確保するための状況把握が十分になされていないケースが多い」と警鐘を鳴らす。解決方法を含め、指摘の詳細を同氏に聞いた。

洗掘調査は危険が伴うため、行われていないケースも
―自治体における橋梁被害対策の現状を聞かせてください。
降水量が1時間に80mmを上回る豪雨の発生回数が年々増えるなか、橋梁が傾斜したり倒壊したりする被害も増え、対策がますます求められるようになっています。豪雨による橋梁被害のおもな原因には、激しい水の流れにより橋脚周囲の河床から土砂が洗い流される「洗掘」の進行があげられます。これに対し、国土交通省は平成31年、「水中部の状態把握に関する参考資料」を発表し、従来の橋梁定期点検において、橋梁基礎の洗掘状態を把握することの重要性を示しました。しかし実際の現場では、洗掘調査は十分に行われていないのが現状です。
―それはなぜでしょう。
河床の洗掘状態を把握するには、人が河川に入り込んで洗掘量を測る方法が一般的ですが、水深が人の腰を上回るような河川の場合は危険が伴うため、調査が行われないケースがあるのです。人が河川に入り込まない安全な調査方法としては、ドローンやボートからレーザーや音波を照射するものがありますが、水が濁っていたり、水流が速かったりすると計測が難しく、実用的とは言えません。
―よい解決方法はありませんか。
水中の様子を直接的に把握せずとも、橋梁基礎の安定度合いを測れる仕組みがあればいいのです。たとえば当社が開発したモニタリングシステムでは、橋脚に加速度センサーを取りつけ、橋梁の「固有振動数*1」を計測することで洗掘量を把握できます。これは、橋脚の洗掘状態によって橋梁が揺れる大きさや速度が変化する現象に着目した調査方法です。そのため、人が河川に入る必要がなく、さらに河川の濁度や水流の速さに影響を受けずに洗掘状態を高精度で遠隔から把握できるのです。
この技術は、洗掘が「安全上の限界」を超えていないかをリアルタイムに把握できる点も特徴です。
洪水発生時の橋梁に対し、通行可否を迅速に判断できる
―どのような仕組みで「安全上の限界」を把握するのですか。
個々の橋梁における安全上の限界となる洗掘量は、「道路橋示方書*2」に基づき理論的に算出できます。その際の固有振動数も理論的に導くことが可能ですので、それを安全上の限界となる「しきい値」に設定するのです。洗掘が進むほど固有振動数は低下するため、当社のモニタリングシステムでは、現状の固有振動数がこの「しきい値」を下回ったときにアラートを管理者へ通知できる機能を備えています。また、計測データは10分に1回とほぼリアルタイムに更新されるため、洪水発生時において橋梁の通行可否を迅速に判断するのにも役立てられるでしょう。
―自治体に対する今後の支援方針を聞かせてください。
固有振動数から洗掘状態を把握する当社の技術は、もともと鉄道総合技術研究所と共同で研究・開発し、約30年にわたり鉄道橋の洗掘調査で活用実績を重ねてきました。また、この技術の性能は内閣府の「戦略的イノベーション創造プログラム」でも実証済みです。国土交通省の「道路メンテナンス事業補助制度」における点検や措置・監視といった修繕での活用が期待されます。当社は、この技術の活用を道路橋の洗掘調査に広く適用していき、自治体の安全安心なまちづくりに貢献します。関心のある自治体のみなさんはぜひ、ご連絡ください。
設立 | 昭和38年11月 |
---|---|
資本金 | 4億円 |
従業員数 | 255人(令和4年6月現在) |
事業内容 | 建設コンサルタント(道路、都市、橋梁、鉄道などにおける調査、計画、設計、維持管理、施工管理) |
URL | https://www.fukuyamaconsul.co.jp/ |
お問い合わせ電話番号 | 03-5296-9400 (平日9:45~18:45) |
お問い合わせメールアドレス | infra-tokyo@fukuyamaconsul.co.jp |
ソリューションの資料をダウンロードする