北海道湧別町の取り組み
民間事業者への包括業務委託
包括業務委託による抜本的改革で、行政サービスの持続可能性を高めた
※下記は自治体通信 Vol.41(2022年8月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
業務の多様化・複雑化が進む一方で、財政事情は悪化し、職員数は減少の一途をたどる。このような状況に直面しながら、いかに行政運営の持続可能性を担保するかは、多くの自治体に共通した課題であろう。そうしたなか、多様な業務を一括して民間事業者に委託する「包括業務委託」を行う自治体が増えている。ここでは、そうした自治体の一つである湧別町(北海道)を取材。町長の刈田氏に、取り組みの内容とその成果を聞いた。

指定管理者制度の成果を、他施設へ包括的に適用
―湧別町が包括業務委託を行った経緯を聞かせてください。
今では「平成の大合併」と称される平成17年当時、旧湧別町は単独で自治体として生き残りを図るべく、抜本的な行財政改革が迫られていました。その一環として公共施設の管理運営方法を見直すなかで、検討したのが民間事業者への包括業務委託でした。
当時は、地方自治で制定されたばかりの「指定管理者制度」を活用し、町営の宿泊施設の運営業務を初めて民間に委託した直後でした。そこでの成果を他施設にも包括的に適用し、より大きな効果をあげることを期待したのです。まずは、文化施設やスポーツ施設など17施設の運営業務を包括的に指定管理者へ委託することを決め、平成18年4月から実施しました。
―指定管理事業者の選定は、どのように行ったのでしょう。
事業者は公募で決定したのですが、選定に際しては特別な条件がありました。それは、業務効率化による経費削減を図るのはもちろん、従業員には町民を採用し、雇用の場を確保すること。さらに、町内に事業所を設置することでした。公共施設の運営管理を任せる以上、きめ細かなサービス対応を求めるには、町内に事業所と担当者を配置してもらうことが重要だと考えたのです。さらに、当町特有の事情として、委託事業のなかには、遊園地のように接遇の品質が重視される施設の業務もあるため、サービス品質の維持・向上も重要なポイントと考えました。これらを条件に選定を行い、シダックス大新東ヒューマンサービス(当時:大新東)への委託を決めました。
サービス品質の向上にも寄与、住民の評判も上々
―委託効果はいかがでしたか。
複数施設間での人員配置の最適化や業務改善が図られた結果、運営コストを抑えながら、町職員の業務負担を大きく軽減できています。同時に、各施設の従業員はほとんどを町民から採用することもできました。民間ノウハウ導入は、サービス品質の向上にも寄与しており、住民の評判も上々です。
その後、ほかの事業者の事業撤退を受け、町が委託していたすべての施設を一括してシダックス大新東ヒューマンサービスに委託することを決定。現在は、23施設の指定管理に学校給食など5事業の業務委託を加え、包括業務委託の枠は28事業にまで広がっています。
―今後の方針を聞かせてください。
今後も、民間委託の活用を基本とし、行政運営の効率化と持続可能性を追求していきます。当町は、平成21年10月に旧湧別町と旧上湧別町が合併した結果、町内には類似の施設が複数存在していたので、それら施設にも包括業務委託を適用し、運営の効率化が図られています。課題として残る一部施設も、民間ノウハウを活用し、運営改善を果たしていく考えです。
支援企業の視点
専門性を軸に事業者を選定すれば、包括業務委託を成功に導ける

―公共施設の運営管理をめぐる自治体の課題はなんでしょう。
大きく3つの課題があります。まずは、人口減少に伴う「財政の悪化」。その結果としての「職員の人員不足」と、それに伴う「行政サービスの低下」、この3つは多くの自治体に共通した課題です。これらは互いに関連しているため、人口減少が進めば悪循環が起こりえます。それゆえ、行政サービスの持続可能性を担保するため、公共施設の運営管理をめぐっては、抜本的な見直しを迫られている自治体も少なくありません。
そこで当社では、多岐にわたる施設運営を一括して民間委託することで、これらの課題を解決する「包括業務委託」の導入を推奨しています。
―包括業務委託を導入する際のポイントはなんですか。
受託できる業務は多岐にわたりながらも、それぞれの業務で専門性を発揮できる事業者を選定すべきです。たとえば当社では、380を超える自治体との取引実績を誇り、図書館などの文化施設からスポーツ施設、複合施設などの管理で、国内トップクラスの受託実績を誇ります。そこで培ったノウハウは、充実した教育体制によって全国に横展開し、質の高い行政サービスの提供に役立てています。
―今後の自治体への支援方針を聞かせてください。
当社では、行政からの包括的な業務受託を通じて、自治体の財政健全化や行政サービスの質向上への貢献はもちろん、「まちづくり」そのものをともに担っていきたいと考えています。ぜひお問い合わせください。
設立 | 昭和61年11月 |
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資本金 | 1億円 |
売上高 | 370億5,043万円(令和4年3月期) |
従業員数 | 1万8,714人(令和4年3月現在) |
事業内容 | 社会サービス事業、地域活性化事業、学童保育事業、学校給食事業 |
URL | https://www.shidax.co.jp/corporate/group/shidax-daishinto-human-service/ |
お問い合わせ電話番号 | 03-6731-9111 (担当:及川、平日9:00~18:00、年末年始を除く) |