民間企業の取り組み
行政サービスのデジタル化
シームレスなシステム連携が、DX推進を成功に導く
営業事業統括 サービス営業統括本部 公共営業本部 本部長 野澤 さゆり
ソリューション コンサルティング統括本部 エンタープライズ・公共・社会インフラSC本部 アドバイザリー ソリューションコンサルタント 山田 一也
※下記は自治体通信 Vol.40(2022年7月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
昨年9月にデジタル庁が創設されたことを受けて、DX推進に向けた自治体の取り組みは一層、勢いを増している。こうした動きのなか、クラウドサービスのプラットフォーマーであるServiceNow Japanの野澤氏は、「DX推進の重要なポイントは、システム同士をシームレスに連携させ、入口から出口までエンドツーエンドでデジタルデータを活用すること」だと指摘し、「それを実現するプラットフォームの導入が求められる」と語る。同氏が推奨するそのプラットフォームとはどのようなものか。同社の山田氏をくわえた2人に、詳細を聞いた。


デジタル化の恩恵を、職員が受けられないことも
―DX推進に向けた自治体の動きをどう見ていますか。
山田 住民の利便性向上を目指したデジタル技術の導入が活発化しており、この動きはさらに加速していくと思います。私たちはその際に、自治体が留意すべき重要なポイントがあると考えています。それは、デジタル化の恩恵を自治体職員も受けられるようにしなければならない、ということです。
―どういうことでしょう。
山田 実はこの視点が抜けた自治体は意外に多く、住民の利便性は向上しても、職員の業務負担が改善されない例が多く見られます。一例として、補助金の申請を住民がデジタル申請できるようにシステム化すれば、住民の利便性は格段に高まります。しかし、既存の給付システムにデジタル化された申請データを取り込めなければ、たとえば申請データをPDFに変換して出力し、職員が給付システムに再度手入力する負担が生じます。
野澤 いわば、システム同士の連携を「人手」で行うため、職員の業務負担が改善されないのです。住民側の利便性を高めたとしても、このような不十分なかたちでデジタル化を進めてしまえば、デジタル化により得られる効果は限定的なものになるばかりか、DX推進自体を阻害しかねません。いったんデジタル化されたデータをそのままほかのシステムでも使えるように、システム同士の連携をシームレスに行い、入口から出口までエンドツーエンドでデジタルデータを活用することが、DX推進のうえで重要なポイントです。
ワークフローをつなげて、デジタルデータのまま活用
―どうすれば、システム同士の連携をシームレスに行えますか。
野澤 さまざまなワークフローをつなげて、1つのデジタルデータを多くの業務に活用できる「デジタルワークフロー」の仕組みを構築すればいいのです。先ほどの例だと、補助金の申請システムと給付システムのワークフローをつなげ、申請システムのデジタルデータをそのまま活用できるようにすれば、職員が給付システムに別途手入力する負担がなくなります。この「デジタルワークフロー」の仕組みを構築するプラットフォームとして当社が提供するのが、『Now Platform』です。
―詳細を教えてください。
野澤 『Now Platform』では、システム間を横断して、デジタルデータを活用できるようにワークフローが設計・実行されます。そのため、異なるシステムを活用する行政サービス、たとえば「転入手続き」と「住民票の発行」の申請フローが『Now Platform』上でつながり、利用者は氏名や住所といった基本情報を1回入力するだけで、その情報が双方の申請手続きに自動で同期されるのです。実際の導入事例として、横浜市(神奈川県)では、『Now Platform』をベースに、「予算・財務情報管理システム」の構築を進めています(次ページ参照)。これは、「データを活用した行政経営」の推進を目的としたシステムで、ここでは各課と財政局のシステムを連携させて、各課からの予算要求、執行状況、決算、事業評価などあらゆる情報をデジタルデータで処理できるように、ワークフローを設計します。
山田 このように、システム同士の連携を可能にするプラットフォームはほかにも存在するかもしれません。しかし、『Now Platform』には、ほかとは一線を画した大きな特徴があるのです。
システム連携の際に、個別のプログラミングが不要
―具体的にどんな特徴でしょう。
山田 システム連携の際に必要なAPIについて、個別のプログラミングが不要である点です。異なるシステム同士を連携させるのは、専門のITベンダーにとっても簡単なことではありません。そのうえ、システム連携には多大なコストと時間もかかるため、行政サービスのデジタル化がなかなか進まない原因にもなってきました。
野澤 これに対し、私たちは、各種システムを提供しているメーカーの協力のもと、それぞれのサービスと『Now Platform』を簡単につなぐツールとして、『Spoke』というモジュールを提供しています。「『Now Platform』と各種システムをつなげる専用のコネクタ」のようなもので、それを私たちもしくはパートナー企業がシステムごとに事前に用意しておくのです。そのため、システム連携の際には『Spoke』につなげるだけで済み、個別のプログラミングが不要なため、コストを抑え、システム構成もスピーディかつ柔軟に設計・変更できるのです。さらに、アップデートの際は自動更新される仕組みであることから、継続的に生じる運用負荷の軽減にもつながります。現在、850種類以上のシステムが、『Spoke』を介して『Now Platform』につなげられ、必要に応じてシステムを導入できるようになるため、時代にあったデジタル行政サービスの展開が可能になります。
―そのほか、『Now Platform』の特徴はありますか。
山田 システム連携だけでなく、導入先自らが新たなサービスや機能を実装しやすい特徴があります。これは、『Now Platform』がローコード開発の考え方を導入しているからです。たとえば、『Now Platform』を導入した東広島市(広島県)の例を紹介しましょう。同市は令和3年4月に、『Now Platform』をベースとしてインターネット上における行政サービスの窓口機能を有した「市民ポータルサイト」を開設しました。開設以来、新たなサービスを次々に追加しています。その1つが「マイナンバーカードの受取予約のWeb化」で、住民からの電話による問い合わせが大幅に減り、職員の業務効率化につながっていると聞きます。
「誰一人取り残さない」デジタル行政の実現へ
―自治体に対する今後の支援方針を聞かせてください。
野澤 『Now Platform』は、住民と職員をシステムでつなぐハブとなり、業務の整流化と可視化を行います。それによって職員の負担は軽減され、そこで得られた時間を職員にしかできない「人に寄り添う業務」に使えます。そうすることで、すべてをデジタルにするのではなく、デジタルとアナログのダブルスタンダードによる、「誰一人取り残さない」本当のデジタル行政を実現できるでしょう。
山田 世の中には多くの優れたデジタルソリューションが提供されています。それらをいまは人がつないでいるケースでも、あいだに『Now Platform』が入ることで、優れたシステム同士をエンドツーエンドでつなぐ仕組みを、ご提案できます。ぜひ当社にご連絡ください。
導入自治体 横浜市
財政データをシステムで集積し、行政経営を支える新たな基盤に

―『Now Platform』をベースに、「予算・財務情報管理システム」の構築を進めているそうですね。
はい。令和6年度予算編成に向け、予算の編成、決算、事業評価といった財政事務の中核を担うシステムを構築中です。従来は、個別のシステムやファイルで業務を管理し、メールでデータをやり取りしていたため、業務量の多さやデータ活用の煩雑さが課題でした。予算編成から決算までの一連の事務を『Now Platform』上でデジタル化し、一体のシステムとして構築することで、重複入力の解消、進捗状況の可視化、業務を通じてのデータの蓄積を実現します。
―「予算・財務情報管理システム」をどのように活用していきますか。
持続可能な行政経営を支えるプラットフォームとして活用します。「施策の推進」と「財政の健全性の維持」の両立には、経営資源である「お金と資産」のデータを一元的に管理・活用していく必要があります。具体的には、施策と事務事業をデータで結び付け、目的や効果に着目した評価を行うとともに、予算編成を通じて最適な財源配分を行っていきます。また、建物などのファシリティマネジメントの推進、市職員はもとより市民のみなさまや議会への「財政の見える化」などに活かしたいと考えています。
設立 | 平成25年9月 |
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事業内容 | クラウドアプリケーションおよびクラウドプラットフォームの提供 |
URL | https://www.servicenow.co.jp/ |
問い合わせ先 | 03-4572-9200 (平日 9:00~18:00) https://www.servicenow.co.jp/contact-us.html |
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