全国の自治体トップ・職員・議員に贈る自治体の"経営力"を上げる情報サイト

全国の自治体トップ・職員・議員に贈る
自治体の"経営力"を上げる情報サイト

コミュニティバス運行を民間委託し、地域交通の持続可能性を確保する

f:id:jichitaitsushin:20220323174846j:plain

千葉県君津市の取り組み

民間委託による地域公共交通運営①

コミュニティバス運行を民間委託し、地域交通の持続可能性を確保する

君津市
企画政策部 企画課 課長 馬場 貴也
[提供] 大新東株式会社

※下記は自治体通信 Vol.37(2022年4月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

人口減少に起因する公共交通機関の撤退が、多くの都市で交通弱者を生んでいる今、自治体が自ら公共交通の担い手となるケースが増えている。しかし、どの自治体も経営資源が限られるなか、いかに持続可能な事業運営を実現するかに頭を悩ませている。そうした状況において君津市(千葉県)では、地域交通の運営を長く民間に委託し、持続的な事業運営を実現してきた。同市担当者に、その取り組みについて詳しく聞いた。

[君津市] ■人口:8万1,913人(令和4年2月末現在) ■世帯数:3万9,055世帯(令和4年2月末現在) ■予算規模:536億100万円(令和4年度当初案) ■面積:318.78km2 ■概要: 房総半島のほぼ中央部に位置し、北西部は東京湾に面している。約4kmにわたる海岸線は昭和30年代から埋め立てられ、現在は世界的な製鉄所が操業している。市街地は、西部の小糸川下流域に形成され、土地区画整理事業により整備された住宅地が続く。平成19年7月には館山道が全線開通し、東京都内から館山市まで高速道路を利用できるようになっている。令和3年9月1日に市制50周年を迎えた。
君津市
企画政策部 企画課 課長
馬場 貴也 ばば あつや

コミュニティバスを新設し、公共交通空白地域を解消する

―君津市ではこれまで、どのような視点から公共交通政策を行ってきたのですか。

 千葉県内で2番目の面積を誇る当市では、都市部と山間部をつなぐ民間バス路線網は住民生活にとって欠かせない存在であり、この機能をいかに維持するかは重要な政策テーマでした。高度成長期には日本製鉄の進出もあり、一気に増加した人口も、その後は平成6年12月の約9万4,000人をピークに減少を続け、バス交通の採算は悪化。路線廃止手続きが緩和されたことで、不採算路線では撤退の動きが出てきました。そこで当市では、検討委員会を立ち上げて議論した結果、公共交通空白地域の解消と地域コミュニティを創出する交通として、平成17年からコミュニティバスを運行する方針を決めました。

―運行開始にあたっては、なにか課題はありましたか。

 当然ながら、市には運転士もいませんし、運行ノウハウもまったくありませんでした。そのため、自家用有償旅客運送という事業形態とし、市が事業主体となり、運行業務は民間企業に委託するかたちをとりました。持続的かつ安定的に移動手段を確保するためには、バス事業者のノウハウが必要だと判断したのです。

―事業者選定にあたり重視したポイントはなんだったのでしょう。

 まずは、自家用有償旅客運送事業で多くの実績があること。特に大新東は当時、すでに全国でコミュニティバスを長期にわたって運行してきた実績がありました。所属する運転士の数が多く、研修制度も充実しているなど、運行計画を安定的に履行してもらえる基盤があると評価しました。

 また、コミュニティバスは利用者の多くが高齢者など交通弱者の方々です。そのため、利用者の安全安心の観点から、運転技術はもとより、運転士の礼節や利用者への接し方なども選定の重要なポイントのひとつでした。その点は、各地での運行実績からも判断できました。

実情に合う移動手段の確保で、持続可能な地域交通を追求

―民間委託により、どのような効果が得られていますか。

 公共交通空白地域を縮小することができたのが、やはり最大の効果です。同じ行政グループを構成する木更津市、富津市、袖ケ浦市の周辺3市を見ても、コミュニティバスを運行しているのは当市だけであり、参考にできる例が少なかっただけに、運行計画を検討する過程では、大新東をはじめとした交通事業者のノウハウに大きく助けられました。そうした実績を評価し、その後一部の地域に導入した予約型のデマンドタクシー、さらには学校統合に伴い運行を開始したスクールバスについても運行を大新東へ委託。現在までに3つの形態で30台の地域交通を運行してもらっています。運行業務を民間委託することで、安全安心な輸送サービスによる移動手段の確保につながっています。

―今後の交通政策の方針を聞かせてください。

 当市では令和3年9月1日に市制施行50周年を迎え、令和4年度からスタートする新たな総合計画において、重点項目のひとつに「移動」を掲げています。

 人口減少やコロナ禍を契機とした新しいライフスタイルの定着などにより、地域公共交通を取り巻く環境は今後ますます厳しくなる一方、高齢化の進展に伴う移動手段の確保は重要性を増してくるものと認識しています。

 そういった課題に対する解決の糸口を、民間ノウハウの活用によって見出せないかと考えています。企業などとの連携によりMaaS*1や自動運転といった新しい技術の導入可能性を検討するとともに、地域の実情に合った持続可能な公共交通のあり方を追求していきます。

f:id:jichitaitsushin:20220323175250j:plain


支援企業の視点

民間委託による地域公共交通運営②

民間の運行ノウハウを導入すれば、「住民の足」地域公共交通は守れる

大新東株式会社
取締役執行役員 事業本部長 加倉井 啓雄
[提供] 大新東株式会社

民間のノウハウを導入したコミュニティバスの運行により、地域公共交通網を維持してきた君津市。この取り組みを支援したのが、早くから自家用自動車管理業を展開してきたシダックスグループの大新東である。運行業務の民間委託でどのような効果が得られるのか。同社で、車両運行サービス事業を統括する加倉井氏に聞いた。

大新東株式会社
取締役執行役員 事業本部長
加倉井 啓雄 かくらい ひろお

コミュニティバスの運行では、自治体も人手不足が深刻

―地域公共交通を取り巻く現状をどう見ていますか。

 人口減少に直面する多くの地域で、バス路線の維持がより困難になっています。くわえて近年は、2つの要因が働き、路線バスの撤退を加速させています。1つは、道路運送法改正により、路線バスの撤退が容易になったこと。もう1つは、大型二種免許保有者の減少で、運転士の確保がさらに難しくなっていることです。ここに、コロナ禍による需要低迷が重なり、今後路線バスの撤退に拍車がかかることも予想されています。

―一方で、近年は高齢者の免許返納が増えていて、地域交通の重要性は高まっているとも聞きます。

 その通りです。交通弱者を生まないよう、いかに移動手段を確保するかは自治体の重要課題となっています。コミュニティバスやデマンド交通を導入する自治体が増えているのはそのためです。ただし、そこにも課題があります。

―どういった課題ですか。

 マンパワー不足が深刻なのは、自治体も同様です。国土交通省の調査によると、地方公共交通を運営する自治体のうち、専任担当者がいるのは、24.6%に過ぎない、との結果もあります。大型二種免許保有者の確保も難しいなか、運行ノウハウをもたない自治体が新たに地域公共交通事業を始めるのは大変難しい。そこで当社では、運行の民間委託を提案しています。

―運行を民間委託する自治体は多いのでしょうか。

 現在当社では、全国19の自治体において地域公共交通の運行管理を行っています。車両数はコミュニティバスが89台、デマンド交通17台となります。さらに近年では、学校統廃合によるスクールバスの運行委託も増加しています。全国55自治体で330台を受託しており、自治体経営効率化の観点から、スクールバスを活用した地域公共交通などもご提案しています。そのほか、首長車・公用車の運行委託も増えています。当社の運行車両約3,600台のうち、約1,000台が自治体車両であり、取引自治体は約150に上ります。

f:id:jichitaitsushin:20220323175258j:plain

運行管理は「サービス業」

―選ばれる理由はなんでしょう。

 ひとつは、全国に64事業所のネットワークを有し、約4,100人と豊富な運転士を抱えていることです。地域間で運転士を柔軟に融通し合えるので、マンパワー不足で運行計画に支障を来たす事態は回避できます。また、全国規模の会社である一方で、地域に根差したサービスを追求し続けていることも選ばれる理由だと思っています。当社では、地域公共交通の運行管理の仕事を「サービス業」、運転士を「運転サービス士」と呼んでいます。運転スキルはもちろん、車両の保守管理や健康管理、礼節教育にも力を入れ、自治体職員と変わらぬ意識で運行管理を行っています。

―今後の自治体支援方針を聞かせてください。

 シダックスグループでは、車両運行サービス以外でも学童保育・学校給食・施設管理など多岐にわたる業務を受託しています。外部に委託できる業務は積極的に委託し、職員の限られたリソースをコア業務に向けるのは、自治体を取り巻く大きな流れです。この流れを支援し、これまでのノウハウを活かして、各地域のニーズに合った運行計画で、地域公共交通の維持に課題を抱える自治体を支援していきます。

f:id:jichitaitsushin:20220323175302j:plain

加倉井 啓雄 (かくらい ひろお) プロフィール
昭和34年、東京都生まれ。昭和61年12月に大新東株式会社に入社。各地の支店長などを経て、平成24年4月より、現職。

大新東株式会社
設立 昭和37年2月
資本金 1億円
売上高 229億5,300万円(令和3年3月期)
従業員数 4,853人(令和3年6月現在)
事業内容 車両運行サービス事業
URL https://daishinto.co.jp/
お問い合わせ電話番号 03-6373-4760 (担当 : 藤代・石井、平日 9:00〜18:00、年末年始を除く)
お問い合わせメールアドレス dst-toiawase@shidax.co.jp
この記事で支援企業が提供している
ソリューションの資料をダウンロードする
\ たった1分で完了! /
 資料ダウンロードフォーム

*1:※Maas : Mobility as a Serviceの頭文字をとった略語。複数の公共交通やそれ以外の移動サービスを組み合わせ、検索・予約・決済などを一括で行うサービス