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10cm精度3Dデータによる予測で、局所的な水害に備えよ

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民間企業の取り組み

水害シミュレーションの活用

10cm精度3Dデータによる予測で、局所的な水害に備えよ

アドソル日進株式会社
ソリューション事業本部 デジタル・イノベーション事業部 ソリューション部 次長 GISコンサルタント 安田 章展
[提供]アドソル日進株式会社

※下記は自治体通信35号(Vol.35・2022年1月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

「過去に経験のない大雨」「未曾有の災害に警戒を」などの言葉がニュースで飛び交う昨今、水害対策は各自治体にとって重要な課題となっている。そうしたなか、企業のBCP対策支援を行ってきたアドソル日進の安田氏は「これからは正確なデータにもとづいた水害対策を行う必要がある」と話す。同氏に、現状における水害対策の課題と具体的な対策方法を聞いた。

アドソル日進株式会社
ソリューション事業本部 デジタル・イノベーション事業部 ソリューション部 次長 GISコンサルタント
安田 章展 やすだ あきのぶ

現状のハザードマップでは、局所的な対策が不十分

―自治体における水害対策の課題を教えてください。

 全国の自治体で、水害発生時の浸水ハザードマップの作成および河川の整備が進められています。ただし、一級河川といった大きな河川が中心で、二級河川や支流では整備が不十分です。また、自治体や企業が管理する工場や大規模施設などの一部局所エリアでは、高度経済成長期に整備された基準で排水設備を構築しています。結果、昨今のゲリラ豪雨発生時に、内水氾濫*1による水害被害が多発しています。

―過去の排水設備では、昨今のゲリラ豪雨に対応できていないと。

 ええ。特に内水氾濫は、雨が降り始めてから数時間程度で発生したり、近隣に河川がなくとも発生したりします。よって、河川氾濫だけでなく内水氾濫への対策が必要ですが、世の中には内水氾濫を考慮したソリューションはあまり多くないのが現状。しかし、住民の安心・安全や事業継続の観点から、こうした局所エリアにおいて、なんらかの水害対策が必要なのです。

―そのような対策を行っていくにはどうすればいいでしょう。

 大切なのは、「予測」という観点です。過去の経験や目視による対策ではなく、想定されるエリアの地理状況を把握したうえで、降雨量や降雨時間といったパラメータを取り入れ、正確なシミュレーション結果を得られる仕組みが必要でしょう。たとえば当社では、そうした予測が可能な『水災害アセスメントソリューション(特許出願中)』の開発を進めています。

―詳細を教えてください。

 GIS(地理情報システム)を活用したシステムで、慶應義塾大学との産学連携で研究を進めています。具体的には10㎝単位の高精度な地形3Dデータを作成し、そこに雨を「降らせる」シミュレーションを行い、浸水エリアと浸水深を時系列で予測できるソフトウェアを開発。予測結果にもとづき、土嚢の設置や排水設備増強などの対策を行えるよう、被害軽減までのシミュレーションを支援するのです。3Dデータの作成には、地形のオープンデータやドローンで測量したデータを活用。また、建築図面から排水溝データの取り込みも実施し、内水氾濫対策にもつなげられます。雨を「降らせる」ことに関しては、国土交通省策定の「河川における洪水流数理解析モデル」をベースにシミュレーションを実施。当社の開発技術と、慶應義塾大学・厳網林研究室の知見を融合させ、浸水状況予測から水害レジリエンス強化を図っているのです。

SDGsの観点から、社会貢献をしていきたい

―データ予測の正確性に関してはいかがでしょう。

 幾度か工場敷地内が浸水被害に見舞われている、岐阜県大垣市にある神鋼造機の協力を得て、2年前に実証実験を行いました。ドローンを活用した構内地形図の作成および、降雨量ごとの浸水シミュレーションを実施。その結果、平均誤差で±20㎜、最大・最小誤差で±20%の精度でシミュレーション結果を得ることができました。

 実証実験では工場を対象としましたが、ここを近隣住民の避難場所として考えた場合、自治体での水害対策を考えるうえで参考になるデータだと言えるでしょう。

―今後の自治体への支援方針を教えてください。

 今回は、神鋼造機の協力を得て、一定の成果をあげましたが、今後は自治体に協力を仰ぎながら、「PLATEAU*2」のデータと連携し、水害対策プラットフォームとしてブラッシュアップを図っていきたいと考えています。ただ「水害対策」は、あくまで切り口のひとつ。当社では、GISを使ったシミュレーション技術をさまざまなカタチで応用することが可能です。SDGs*3の観点から、地域のレジリエンス強化に向けた活動を通じて、社会貢献をしていきたいですね。

安田 章展 (やすだ あきのぶ) プロフィール
昭和56年、大阪府生まれ。平成16年に広島市立大学を卒業後、アドソル日進株式会社に入社。入社後、自治体向けの防災業務を担当し、平成23年よりGIS(地理情報システム)ソリューションビジネス業務を担当し、共同研究や提案・コンサルティング活動を行っている。

協力大学の視点

浸水による被害の予測は、シミュレーションが特に有効

慶應義塾大学 環境情報学部教授 厳 網林
[提供]アドソル日進株式会社
慶應義塾大学
環境情報学部教授
厳 網林 げん もうりん

当研究室では空間情報科学を専門とし、地図情報にさまざまなデータを落とし込む研究をしています。アドソル日進とは、各種センサーやドローンなどから得られたデータや気象情報をGIS上の空間情報と融合させた、新たな情報プラットフォームの確立に向けて、産学共同研究を行っています。浸水による被害は、目視で予測することが難しく、シミュレーションが特に有効な分野だと考えます。今後は、「地形情報から街の緑化による吸水能力の変化を測定する」取り組みのように、この技術をさまざまな分野に応用させることで、まちのレジリエンス強化に貢献したいですね。


協力企業の視点

実証実験の結果データを得ることで、具体的な対策基準の策定が可能に

神鋼造機株式会社 代表取締役社長 笹木 博
[提供]アドソル日進株式会社
神鋼造機株式会社
代表取締役社長
笹木 博 ささき ひろし

当社では、これまで複数回の浸水被害に悩まされてきた経験から、水害対策が大きな課題に。そこで、『水災害アセスメントソリューション』の実証実験をアドソル日進とスタートしました。ドローンを使って詳細な3D地図を作成し、そのデータに排水溝の図面情報なども反映。シミュレーション結果は平成25年に冠水した際の水位記録に極めて近く、データの信頼性を確かめることができました。降雨量ごとの危険域が詳細に判明したことで、警戒発令や防災準備、操業停止などの基準作成も可能に。今後は、得られたデータを自治体や周辺の住民および企業とも共有し、防災面から地域に貢献していきたいですね。


アドソル日進株式会社
設立 昭和51年3月
資本金 5億5,000万円
売上高 135億1,874万円(令和3年3月期)
従業員数 1,164人(グループ全体)
事業内容 企業・公共向け情報システムの開発およびソリューションの提供ならびに商品化と販売
URL https://www.adniss.jp/
お問い合わせ電話番号 03-5796-3139(平日10:00~17:30)
お問い合わせメールアドレス gis-sol.business@adniss.jp

*1:※内水氾濫:市街地に排水能力を超える多量の雨が降り、排水が雨量に追いつかずに建物や土地が水に浸かる現象のこと

*2:※PLATEAU:国土交通省が主導する、日本全国の3D都市モデルの整備、活用、オープンデータ化プロジェクト

*3:※SDGs:特に「11.住み続けられるまちづくりを」に注力している