民間企業の取り組み
行政サービスのデジタル化
部署の垣根を越えた「システム連携」が、DXの波及効果を最大化させる
第一営業統括本部 エンタープライズ営業本部 兼公共・社会インフラ営業本部 営業本部長 野澤 さゆり
ソリューション コンサルティング統括本部 エンタープライズ・公共・社会インフラSC本部 アドバイザリー ソリューションコンサルタント 山田 一也
今年9月にデジタル庁が設置され、自治体でもDX推進の機運がさらに高まりを見せている。こうしたなか、クラウドサービスのプロバイダーであるServiceNow Japanの野澤氏は、「DX推進のポイントは、その効果を最大限に引き出すために、いかにシステム同士の連携をスムーズにできるかだ」と指摘する。その指摘の詳細について、同社の山田氏を含めた2人に聞いた。
※下記は自治体通信34号(Vol.34・2021年11月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。


デジタル化の際に留意すべき、「エンドツーエンド」の視点
―DXに取り組む自治体の動きが活発化していますね。
野澤 はい。すでに多くの自治体で、行政サービスのデジタル化を進める動きが見られています。そうしたなか、私たちは自治体がDX推進に取り組むうえで、留意すべき重要なポイントがあると考えています。それは、「データ連携」を前提とした業務システムの構築、すなわち、すべての行政サービスがデジタル上で完結するようにデータ連携を図る「エンドツーエンド」の視点を持ったシステムの構築です。この視点が抜けてしまえば、本来デジタル化によって得られるはずの恩恵を、住民も職員もほとんど享受できなくなることも考えられます。
―それはどういうことでしょう。
野澤 たとえば、庁内のA課とB課がそれぞれ担当する補助金について、住民がデジタル申請できるようにシステム化を進めたとしましょう。この場合、両課のあいだでデータ連携ができていなければ、住民は氏名、住所、連絡先といった基本情報を、補助金ごとに入力する手間がかかります。また、同じ課内でも、デジタル化された申請データを既存の給付システムに取り込めなければ、申請データをPDFに変換するなどして、職員が給付システムへ再度手で入力するというムダな作業が発生します。
山田 こうなると、たとえ個別の行政サービスごとにシステムを構築して業務のデジタル化を進めても、得られる業務改善効果はきわめて限定的と言わざるを得ません。いったんデジタル化されたデータを、そのまま他のシステムでも使えるようにシステム同士の連携を図ることが、行政全体のDX推進のうえでは重要なポイントです。
ワークフローをつなげれば、データをそのまま活用できる
―どのようにすればシステム間の連携を進められますか。
山田 さまざまなワークフローをつなげて、ひとつのデジタル情報を多用途で有効活用できるようにする仕組みを構築すればいいのです。先ほどの補助金申請の例で言えば、住民が基本情報を入力するワークフローをA課とB課の両方の補助金申請システムとつなげるのです。これにより、住民は基本情報を1回入力すれば済みます。また、申請システムと給付システムのワークフローをつなげれば、職員は申請システム内に取り込んだデジタル情報をそのまま活用でき、給付システムへ別途入力するといった作業負担がなくなります。
野澤 このように、入力されたデジタルデータを多くの業務にフル活用するための「デジタルワークフロー」を構築することが、システム連携を進める際の肝となる部分です。そして、それを実現するプラットフォームとして当社が開発したのが『Now Platform』です。
―『Now Platform』の詳細を教えてください。
野澤 『Now Platform』では、従来のように「申請ごと」もしくは「部署ごと」ではなく、部署間を横断してデジタル情報を活用できるようにワークフローが設計・実行されます。そのため、まったく異なる内容の行政サービス、たとえば、「住民票の発行」と「子育て支援手続き」の申請フローが、『Now Platform』上でつながり、利用者は基本情報を1回入力するだけで、その情報が双方の申請手続きに自動で同期されるのです。
山田 さらに、行政サービスにおけるデジタル化の領域を広げるために不可欠なワークフローとして、「本人確認」と「電子決済」があります。この2つのワークフローも、「マイナンバーカード認証サービス」や「電子決済サービス」など、世の中で一般的に使われているシステムと連携してつなげられます。庁内だけでなく、庁外の多様なシステムとも連携できるのが『Now Platform』の特徴です。
東広島市では行政サービスの、「ポータルサイト」として活用
―システム連携により、デジタル化のメリットが大きく広がると。
山田 そのとおりです。DXの波及効果を最大化させる重要なカギが、「システム連携」なのです。ですから、『Now Platform』は、住民と自治体をつなぐ「ポータルサイト」のベースになりうると考えています。実際に東広島市(広島県)は今年4月から、インターネット上における行政サービスの窓口機能を有した「市民ポータルサイト」を、『Now Platform』をベースに開設しました。いまは数種類の行政サービスが対象ですが、今後はさまざまな業務に対応できる体制を整え、サービスメニューを増やしていくと聞いています。
東広島市には弊社の年次イベントでもご講演頂きましたので、宜しければこちらからご登録の上、ご視聴ください。
―システム間の連携を謳うプラットフォームはほかにもありますね。『Now Platform』の強みはなんでしょう。
山田 ほかのプラットフォームと決定的に異なるのは、システム連携の際に必要なAPIについて、個別にコーディングする必要がないという点です。設計思想が異なるシステム同士の連携は、豊富なIT知識を有するベンダーといえども簡単なことではありません。また、異なるベンダーのシステムと連携すること自体を歓迎しないというケースも存在します。そのため、システムを連携させるには、どうしてもコストと時間がかかってしまいます。そうなると思うように連携が進まず、行政サービスのデジタル化は進みません。
野澤 その点、『Now Platform』は、システム同士の連携をスムーズに進められるといった大きな強みがあるのです。
スピーディな連携が可能な、独自モジュールの力
―どのようにして連携をスムーズ化しているのですか。
野澤 各種システムを提供するメーカーの協力を得て、それぞれのサービスと『Now Platform』を簡単につなぐモジュールを提供しているのです。私たちはそれを『Spoke』と呼んでいますが、わかりやすく表現すると、「『Now Platform』と各種システムをつなげる専用のコネクタ」です。さまざまなシステムに活用でき、API連携の際にはシステム側が個別にコーディングする必要がないため、コストを抑え、柔軟でスピーディなシステム連携が実現するのです。現在、850種類以上のシステムを『Spoke』を介して『Now Platform』につなげることができます。『Spoke』を活用することで、必要に応じて多くのシステムを取り入れられるため、時代に合ったデジタル行政サービスの提供が可能になるでしょう。
山田 そのほか、システムのアップデートが行われた際には自動更新される仕組みなので、アップデートごとに動作確認をしなければならないといった運用上の負担もかかりません。
―自治体に対する今後の支援方針を聞かせてください。
野澤 システム連携がスムーズに進む『Now Platform』を通じて、住民は「いつでも」「どこからでも」「どんなデバイスからでも」「迷うことなく」行政サービスを受けられるようになります。DXを推進したいと考えている自治体のみなさんは、ぜひ当社にお問い合わせください。
設立 | 平成25年9月 |
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事業内容 | クラウドアプリケーションおよびクラウドプラットフォームの提供 |
URL | https://www.servicenow.co.jp/ |
お問い合わせ電話番号 | 03-4572-9200 (平日9:00~18:00) |
問い合わせフォーム | https://www.servicenow.co.jp/contact-us.html |
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