民間企業の取り組み
保存食の備蓄
賞味期限を統一した長期保存食で、緊急時に慌てない効率的な備蓄を
代表取締役会長 池上 一彦
顧問 消防庁防災アドバイザー 鎌田 修広
※下記は自治体通信 Vol.33(2021年10月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
毎年のように全国で大規模災害が相次ぐなか、その備えとして、保存食の備蓄に注力する自治体は多い。しかし、備蓄品の企画・開発を手がけるユニーク総合防災の池上氏は、「いざ、備蓄食料を配布する際、その仕分け作業に混乱が生じれば、必要な食料が確実に行き届かなくなることすら起こりうる」と指摘する。一体、どういうことか。同社の防災アドバイザーを務める鎌田氏を含めた2人に、その詳細と解決策を聞いた。


備蓄品を一式にまとめれば、仕分け作業で戸惑わない
―自治体における食料備蓄の現状を教えてください。
池上 東日本大震災を機に食料備蓄の重要性がより強く認識され、多くの自治体が備蓄食料の種類や量を増やしています。しかし、これだけでは十分と言えません。震災時に生徒を一泊させたある学校は、生徒に食料を手渡す際、一人ひとりに食料や水をどのくらい、どのような手順で配布すべきかわからず、少なからず混乱が生じたそうです。緊急時でも職員が慌てることなく、食料を確実に住民の手元に行き届くようにできることが肝心なのです。
鎌田 また、備蓄品管理の見直しは、災害時の行政判断を早めることにもつながります。
―どういうことでしょう。
鎌田 じつは、「職員向けや住民向けの食料がそれぞれ何日分備蓄されているか」といった詳細な状況を職員が把握できていないことは珍しくありません。そのため、災害が発生した段階になって備蓄品の現状を確認することになり、結果、避難指示や避難所の開設が遅れてしまうというケースが現実に起こっています。災害時における行政判断や職員の初動を早めるためにも、誰もがわかりやすいカタチで備蓄品を普段から管理しておくことは大切でしょう。
―どうすればよいのですか。
池上 当社では、備蓄食料の賞味期限を統一することを提案しています。一般的な備蓄食料の保存期間は3~5年間とさまざまです。この年数を揃えれば、期限切れに伴う在庫の入れ替えに手間取ることなく、複数種類の食料をまとめて管理できます。これにより、「1セットで1人1日分」と、わかりやすいカタチで備蓄品一式をまとめておけば、万が一の際にも慌てることなく、必要な食料を確実に配布できるようになるでしょう。そこで当社では、パンやかゆ、菓子といったさまざまな備蓄食料を、「6年間」という長期保存期間に揃えて開発しています。
誰もが安心して食べられる、アレルギー対応品も用意
―保存期間を6年間に統一しているのはなぜですか。
池上 小学校や中高一貫校の教育期間を目安としているためです。当社では、こうした備蓄食料を1日3食分まとめた『防活セット』も提供しています。入学時の児童や生徒に手渡しておけば、卒業まで各人が「1日を生き延びられる食料」を保管できるのです。水については、保存期間がさらに6年長い「12年保存水」を提供し、在庫入れ替えの負担軽減に貢献します。
鎌田 備蓄食料を事前に一人ひとりに手渡しておくことで、個々人の防災意識の向上も期待できます。また、誰もが安心して食べられるアレルギー対応品も用意しているので、災害弱者を減らすセット内容を提供できます。インフラが停止してしまうケースも想定し、たとえば、主食となる「だしがゆ」は、パウチを開ければ付属のスプーンを使ってそのまま食べられるよう開発しています。
―自治体に対する今後の支援方針を聞かせてください。
池上 「安心安全」はもちろんのこと、「おいしさ」も当社がこだわる大切な要素です。たとえば、当社は「だしがゆ」だけでも、鮪や昆布など7種類の味を提供しています。誰もが不安になる災害時だからこそ、心の満たされるおいしい食事が求められるものです。そうした食品の開発を当社は今後も追求し続けていきます。
設立 | 平成25年4月 |
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資本金 | 1,000万円 |
売上高 | 2億9,500万円(令和3年3月期) |
従業員数 | 5人(令和3年8月1日現在) |
事業内容 | 防災用品、防災グッズ等の輸出入、製造、運搬および販売など |
URL | https://unique-sb.co.jp/ |
お問い合わせ電話番号 | 03-3770-3446 (平日10:00〜17:00) |
お問い合わせメールアドレス | info@unique-sb.co.jp |
導入自治体の声
安芸市(高知県)
長期保存水の調達により、管理頻度を2分の1以下に抑えた

当市では、各避難所に想定避難者数の1人3日分、津波避難タワーには1人1日分の保存水を備蓄しています。保存水は、一般に普及している保存期間5年間のものを備蓄していましたが、期限切れに伴う在庫の入れ替えに負担を感じていました。作業は、段ボールをトラックに積み上げる労力がかかるもので、危機管理課の職員4人で2~3日間を要します。こうしたなか、ユニーク総合防災が提供する「12年保存水」の存在を知り、平成28年度に備蓄を始めました。入れ替えを行う頻度は12年に1回と、従来の2分の1以下に減らせました。調達コストも約30%削減でき、備蓄品管理を効率化できたと感じています。将来は、ユニーク総合防災が提供する6年保存食の備蓄も検討したいですね。