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「連携と配信の分離」が実現する、これからの一斉配信の新標準

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福島県福島市の取り組み

防災情報配信システムの整備

「連携と配信の分離」が実現する、これからの一斉配信の新標準

福島市 危機管理室 防災係長(防災士) 小澤 周一
[提供] 福島通信有限会社

※下記は自治体通信 Vol.33(2021年10月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。


全国で大規模災害が頻発する昨今、いかに迅速かつ的確に防災情報を住民に伝達するかは、あらゆる自治体にとって重要な課題となる。多くの自治体が最適な手法を模索するなか、福島市(福島県)では、「ベンダーロックイン」を排除した一斉配信の新たな仕組みを導入し、注目されている。同市担当者の小澤氏に、システムの詳細やその導入効果などを聞いた。

[福島市] ■人口:27万4,223人(令和3年7月末現在) ■世帯数:12万4,460世帯(令和3年7月末現在) ■予算規模:1,920億889万5,000円(令和3年度当初) ■面積:767.72km2 ■概要:福島県の北部に位置し、西は吾妻連峰、東は阿武隈高地に囲まれた盆地に広がる。盆地の特徴である夏は暑く、冬は寒い気候を有し、この寒暖差により、果物をはじめとした農産物が名産。作曲作品総数は5,000曲におよぶ日本を代表する作曲家、古関裕而氏の生地としても知られる。
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福島市
危機管理室 防災係長(防災士)
小澤 周一 おざわ しゅういち

避けたかった一斉配信での、「ベンダーロックイン」

―防災対策をめぐり、どのような取り組みを進めていますか。

 昨今の災害の激甚化・頻発化を受け、防災情報伝達手段の多重化・多様化を推進しています。その一環として、新たに屋外スピーカー、戸別受信機、各種スマホアプリなどの導入を進めています。当然、伝達手段が増えることで配信操作の煩雑化が予想されますので、一斉配信機能の導入も検討しました。

―どのような検討をしたのでしょう。

 一斉配信機能の導入には、メリットと同時に看過できないデメリットも存在します。仕組みが複雑になるがゆえに、システム全体の処理時間、セキュリティ、構成の柔軟性などが犠牲となる恐れがあるのです。当市ではデメリットも勘案した選定基準*1を設けたうえで、福島通信社が開発した『群雲(むらくも)』を採用しました。単独では配信機能を持たない、「連携機能」に特化したシステムです。

―従来の一斉配信機能とは、どういった点が違うのでしょう。

 従来の一斉配信機能は、特定の伝達手段と一体化しており、その箇所が将来のベンダーロックインになりかねません。そのため、「連携機能」と「配信機能」は、システムとして明確に分離すべきと考えました。『群雲』は同社が提供するアプリ*2やHPとすら疎結合で、それらをいつでも他社製品に置き換えできます。

 過去には単一ベンダー構成が合理的な時代もありましたが、製品寿命が短い昨今ではいかに柔軟にマルチベンダー構成を取りえるかが、機能面でもコスト面でも長期的な最適解につながるのです。

「連携機能」に特化したゆえの、使い勝手の良さ

―ほかに特徴はありますか。

 「連携機能」に特化しているからこその使い勝手の良さです。たとえば、職員が単一のテキストを入力するだけで、Twitterには「140文字の本文」、屋外スピーカーには「定型文+本文×2」など、各伝達手段の特性を活かした配信内容が自動生成されます。配信先の指定においては、行政区画、大字、浸水想定区域など、利用シーンごとに最適な単位の選択肢を自動表示してくれます。アカウントごとに表示させる選択肢を間引くこともできるので、仕組みとして操作ミスを防げます。

 また、多機能にもかかわらず、マニュアルを一切見なくても直感的に操作ができる点もうれしいですね。これらの特徴により、従来の一斉配信機能に比べて操作時間が半分以下で済んでいます。

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―今後、このシステムをどのように運用していきますか。

 『群雲』は、対応業務の幅広さにも特徴があります。たとえば、地図情報、カレンダー情報、各種文書などを一斉公開するシステムとしても活用できると思います。今後は、危機管理室担当職員以外にも、日常的に『群雲』を使い慣れてもらうことにより、人事異動直後や激甚災害時にも配信オペレーターを確保しやすい体制をつくっていければと思っています。


支援企業の視点

多忙な職員の負担は、積極的にシステムで肩代わりを

福島通信有限会社 専務 菅野 紀弘
[提供] 福島通信有限会社
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福島通信有限会社
専務
菅野 紀弘 かんの のりひろ

―防災情報の伝達をめぐる自治体の課題とはなんですか。

 防災担当の職員さんが、慢性的に多忙であることだと思っています。多忙が過ぎると、判断や操作の精度が衰えかねません。ですので、有事の際にひとりでも多くの住民の生命と財産を守るためにも、システムに肩代わりさせられる類の負担は、積極的に肩代わりさせるべきです。

 私は、地場の一通信技術者としてこの課題を解決すべく『群雲』の開発に至っています。「目の前で慌ただしく働く福島市役所の職員さんが、少しでもラクになれば」という素朴なきっかけからです。

―システムの特徴はなんでしょう。

 人の運用にシステム側が柔軟に合わせられることです。その逆では、むしろ職員さんの負担を増やしかねません。『群雲』は、現行の業務フローを極力変えずに運用できます。たとえば、配信の上長承認においては「システム上で完結させる」ことも、「帳票に印刷して上長に承認印をもらう」ことも可能です。かりに、後者のほうが実用的なのであれば、わざわざシステム化する必要はありません。システムの使い勝手は、際立った機能性よりも、むしろ目立たない運用性の良し悪しで決まります。

―今後のビジョンを聞かせてください。

 ひとりでも多くの多忙な職員さんに『群雲』を体感していただきたいです。予算感にも柔軟にお応えしますし、導入や運用を地場企業に担わせたい場合は、当社からノウハウを伝授します。まずは、お気軽にお問い合わせいただけるとうれしいです。

菅野 紀弘 (かんの のりひろ) プロフィール
昭和46年、福島県生まれ。大手電子機器メーカーを経て、福島通信有限会社に入社。平成24年10月より現職。市役所や消防本部などにおける、無線通信機器の整備、消防車両の整備、建柱工事、ICTシステムの開発・導入などに携わる。
福島通信有限会社
設立 昭和47年1月
資本金 300万円
売上高 6億1,300万円(令和3年度見込み)
事業内容 通信機器および放送設備の販売・修理、公共団体向けシステムの開発・保守
URL https://mura-kumo.io/
お問い合わせ電話番号 024-533-5289 (平日9:00〜18:00)
お問い合わせメールアドレス info@mura-kumo.jp

*1:※選定基準 : 総務省消防庁『災害情報伝達手段の整備等に関する手引き(令和3年6月改訂) - p56 -』に掲載 https://mura-kumo.io/#use-case

*2:※アプリ : 全国防災行政アプリ https://bosai-gyosei.app/