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情報発信力を高めるUDフォントは、業務効率化の基盤にもなる

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三重県いなべ市/茨城県行方市の取り組み

広報活動の強化

情報発信力を高めるUDフォントは、業務効率化の基盤にもなる

いなべ市 企画部政策課 課長補佐 佐藤 祐孝
行方市 企画部 政策秘書課 広報広聴グループ 課長補佐 関野 健一
[提供] 株式会社モリサワ

※下記は自治体通信 Vol.33(2021年10月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。


住民に対し生活に必要な情報をわかりやすく正確に伝えるために、多くの自治体が広報活動に工夫を重ねている。たとえば、いなべ市(三重県)と行方(なめがた)市(茨城県)は、UD(ユニバーサルデザイン、以下同じ)フォントによる情報発信で、広報活動の強化に取り組んでいる。さらに両市は共同で、UDフォントが職員の業務効率にどう影響するかの有益性について検証を行ったという。両市の担当者2人に、UDフォントを導入した経緯や、有益性の検証結果について話を聞いた。

[いなべ市] ■人口:4万3,114人(令和3年8月1日現在) ■世帯数:1万7,314世帯(令和3年8月1日現在) ■予算規模:362億6,382万9,000円(令和3年度当初) ■面積:219.83km2 ■概要:三重県最北端に位置し、岐阜県と滋賀県に隣接。「さくらポーク」は、いなべ市産のブランド豚として全国に発信している。
[行方市] ■人口:3万3,270人(令和3年8月1日現在) ■世帯数:1万2,942世帯 (令和3年8月1日現在) ■予算規模:282億4,570万4,000円(令和3年度当初) ■面積:222.48km2 ■概要:茨城県東南部に位置し、東は北浦、西は霞ヶ浦(西浦)に挟まれている。市内の麻生地区は「千年村プロジェクト」による「千年村」認証第1号。
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いなべ市
企画部政策課 課長補佐
佐藤 祐孝 さとう ひろたか
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行方市
企画部 政策秘書課 広報広聴グループ 課長補佐
関野 健一 せきの けんいち

「わかりにくさ」を改善した、UDフォントの力

―UDフォントを導入した経緯を聞かせてください。

関野 「情報発信で日本一」を総合戦略に掲げる行方市では、内容を充実させ、多様な手段で伝達すること以外に、「伝えるのではなく、伝わる情報発信」が重要だと考えています。そこで、高齢者や弱視の方を含め、だれにでも読みやすい書体のUDフォントを、平成29年5月から広報誌に導入しました。

佐藤 いなべ市は過去、たとえば児童手当や健康診断の案内書を市民に配布した際、「わかりにくい」という指摘を受けることがありました。そのため、「わかりやすい案内書作成」に向けた取り組みのなかで、内容や書き方の改善とともに、令和元年秋からUDフォントを導入しました。

―導入効果はいかがですか。

関野 「広報誌がとても読みやすくなった」という声が、市民から想像以上に多く寄せられました。市民の3人に1人が高齢者のため、 市から発信する文書すべてにUDフォントを使えないか検討し、現在、教員を含む全職員約1,000台のパソコンにUDフォントを導入しています。

佐藤 当市も同様に、全職員のパソコンに導入しています。導入後は、以前のような「わかりにくい」といった市民からの指摘がほぼなくなりました。これには、UDフォントの提供事業者であるモリサワと、案内書作成の研修会を協働で開いた成果のほかに、UDフォントの力が非常に大きかったと評価しています。

―UDフォントが職員に与える効果検証も行ったそうですね。

佐藤 はい。職員も、庁内資料の作成やメールのやり取りなど日常的にUDフォントを使っています。そのことが、かりに業務効率化につながっていれば、市民にも職員にもメリットがあると手ごたえを得られます。そこで、私たち両自治体とモリサワが協働し、効果を検証することにしました。

関野 市民の声からUDフォントを活用する意義は感じていますが、「読みやすさ」を可視化したいという考えもあったのです。

―実際にどのような検証をしたのですか。

関野 20~60代の男女職員294人を対象に行いました。業務で利用する文章サンプルを、UDフォントと一般的なOS標準フォントの両方で用意し、「誤読の回避」と「読みの速度」を検証。その結果、UDフォントの場合、文字の誤りを見つけられる確率が平均で5.34%高く、読みの速度については、特に40代以上の世代で、OS標準フォントよりも約3.3%速いという結果となりました。

住民サービス向上と、コスト削減を同時にかなえる

―結果をどう評価していますか。

関野 誤読の回避は内外への情報伝達ミスの軽減につながり、読みの速度向上は労働時間の短縮、ひいては労働コスト削減につながります。割合だと小さく見えますが、読みの速度向上率を40代以上の全職員にあてはめた場合、試算*1では、当市といなべ市ともに、年間約3,000時間、約700万円ぶんの労働コスト削減につながるということです。

佐藤 「住民サービスの向上」という社会貢献的役割の強いUDフォントの導入が、労働コスト削減にもつながる検証結果を得られたことで、UDフォントの価値がさらに高まったと感じます。市内の企業にも、UDフォントの活用を促したいと思います。

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支援企業の視点

「読みやすい書体」だから、幅広い層の住民に伝わる

株式会社モリサワ
公共ビジネス課 係長 ユニバーサルデザイン・アドバイザー 橋爪 明代
[提供] 株式会社モリサワ
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株式会社モリサワ
公共ビジネス課 係長 ユニバーサルデザイン・アドバイザー
橋爪 明代 はしづめ あきよ

「読みやすい書体」だから、幅広い層の住民に伝わる

 自治体には、老若男女を問わず幅広い層の住民に対して、「情報をわかりやすく、正確に、迅速に伝える」という重要な責務があります。このことは、日常的な案内文書だけでなく、緊急時における避難情報や昨今の新型コロナウイルスにまつわる情報配信の際も、強く求められると思います。当社は、「読みやすさ」を追求した書体のUDフォントを通じて、現在約30自治体の情報伝達をサポートしています。

 今回、自治体にとってコスト削減効果も期待できるとの検証結果が得られました。UDフォントの導入は、住民サービスの向上だけにとどまりません。UDフォントの有益性を、多くの自治体に感じてほしいです。

橋爪 明代 (はしづめ あきよ) プロフィール
昭和58年、東京都生まれ。大学卒業後、平成18年に株式会社モリサワ入社。平成29年3月から現職。
株式会社モリサワ
設立 昭和23年12月(創業/大正13年7月)
資本金 1億円
売上高 125億円(令和3年2月期)
従業員数 340人
事業内容 フォント事業、ソフトウェア事業、ソリューション事業
URL https://www.morisawa.co.jp/products/fonts/ud-public/
お問い合わせ電話番号 03-3267-1378 (平日9:00~17:00)
お問い合わせメールアドレス public-biz@morisawa.co.jp

*1:※試算方法 : 40代以上の職員の年間労働時間、平均月給をもとに、1日の労働時間のうち文章を読んでいる時間が20%と仮定して算出