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さまざまな人や団体を巻き込んだ、中山間地域プロジェクト

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山梨県丹波山村

まちづくりによる地域活性化①

さまざまな人や団体を巻き込んだ、中山間地域プロジェクト

丹波山村 村長 岡部 岳志
[提供]株式会社ランドスケープデザイン

※下記は自治体通信 Vol.32(2021年8月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。


全国の自治体において、人口減少が進んでいる。特に中山間地域は高齢化も相まって、その度合いは加速傾向にあり、将来的に集落の存続が危ぶまれるエリアも少なくない。そうしたなか、丹波山村(山梨県)では、独自の地域活性化プロジェクトが進んでいる。いったいどのような取り組みなのか。村長の岡部氏に、詳細を聞いた。

[丹波山村] ■人口:535人(令和3年7月1日現在) ■世帯数:302世帯(令和3年7月1日現在) ■予算規模:28億6,033万9,000円(令和3年度当初) ■面積:101.3km2 ■概要:山梨県の東北部に位置し、東は東京都奥多摩町、西は甲州市、南は小菅村、北は埼玉県秩父市に接している。多摩川に注ぐ清らかな丹波川を有し、雲取山、飛竜山、大菩薩嶺などの険しい山々に囲まれ、全体の97%は山林。そのうち、約70%は東京都の水源涵養林として守られ、深い緑と清らかな渓流により四季折々の美しい風景が楽しめる。
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丹波山村
村長
岡部 岳志 おかべ たけし

課題解決のテーマは、「耕作放棄地」と「丹波宿」

―丹波山村における地域活性化の取り組みを教えてください。

 これまでさまざまな取り組みを行っていますが、令和2年度から新たに進めているプロジェクトが2つあります。まず1つ目が、「ファーム×マルシェ×グランピング」プロジェクトです。村内には斜面を中心に、耕作放棄地が増加しています。その問題解決にくわえ、原木舞茸生産施設の改修および加工品の開発、村に適した小規模循環型農業の実現、農業・食事・宿泊を組み合わせた観光事業などを展開していきます。

―2つ目はなんですか。

 新庁舎の建設にともなう、「丹波宿再生事業」です。村の中心地である青梅街道沿いの地区は「丹波宿」と呼ばれ、かつて宿場町として栄えていました。しかし現在は、約37%が空き家になっている状態に。もともと老朽化が進んでいた庁舎を建て替える話も進んでおり、「ならば丹波宿エリアに新庁舎を建設し、その周辺に人を呼び込む取り組みをしよう」と。空き家を買い上げてコワーキングスペースやカフェ、コミュニティスペースをつくったり、近くにある温泉や河原を周遊できるような施策を検討しているところです。

―どのように事業を進めているのですか。

 まずは、2つの取り組みを進めるにあたり、空間デザインを手がけるランドスケープデザインに現地調査を依頼。空間デザインの観点で、どんな施策が実現可能かを一緒に考えてもらっています。村のプロジェクトは同社に限らず、さまざまな人や団体の協力をえて、取り組んでいるのです。

イベントや事業を通じて、外部とのかかわりを増やす

―どうやって、さまざまな人や団体の協力を得ているのでしょう。

 まずは、平成26年度に実施した「地域おこし協力隊」事業に端を発しています。それで、外部から新たな人材を呼び、さまざまなアイデアを募りました。たとえば、平成28年に開催した「小さな村g7サミット*1」も、そのアイデアのひとつです。そこから、全国から地方創生のアイデアを募る「小さな村ビジネスアイデアコンテスト」や、村にかかわりのある人も巻き込んで村の将来を見すえた施策を考える「丹波山村未来会議」を実施しています。そうした取り組みの積み重ねにより、村に協力してもらえる人や団体がありがたいことに増えているのです。

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―今後における地域活性化の取り組み方針を教えてください。

 2つの取り組み以外でも、ジビエを使ったイベントや、林業の復活など、新たな事業が生まれています。村の将来に危機感をもった村民も多く、外部人材との関係性も良好です。今後も多くの人や団体の協力をえて、地域活性化の事業を進めていきます。


現場職員の視点

広く外部に門戸を開いた、地域活性化への取り組み

丹波山村 総務課 地方創生推進室 主任 舩木 隆嘉
[提供]株式会社ランドスケープデザイン

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丹波山村
総務課 地方創生推進室 主任
舩木 隆嘉 ふなき たかよし

―ランドスケープデザインに現地調査を依頼した背景を教えてください。

 もともとは、ランドスケープデザインの髙橋さんが、個人的に「小さな村ビジネスアイデアコンテスト」に応募して、優秀賞を獲得されたことがきっかけですね。テーマは、現在取り組んでいる「耕作放棄地の活用法」だったんですが、髙橋さんの提案は「シバザクラを傾斜の耕作放棄地に植えた秀麗な景観づくり」といった内容でした。それまで村では、「景観」といった観念での活用法を考えたことがなく、審査員が感動したくらいで。そこから、「丹波山村未来会議」にも定期的に参加してもらうようになり、村民の家に飲みに誘われるほど馴染まれて(笑)。現地調査をコンサルティング会社に依頼する方法もありましたが、村のことをよくわかってもらっている髙橋さんの会社にお願いしようとなったのです。

―今後どのように地域活性化を進めていきたいですか。

 やはりさまざまな方の知恵を借りつつ、人を村に呼び込む施策を行っていきたいですね。「地域おこし協力隊」をきっかけに、村に移住する人も増え、村全体にも良い変化が生まれています。今後も村民の理解をえつつ、外部人材への門戸を広く開けて、地域活性化に取り組んでいきます。

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ランドスケープデザインの髙橋氏が提案した、斜面をはじめとした
耕作放棄地にシバザクラを植えたイメージの写真

支援企業の視点

まちづくりによる地域活性化②

「空き家」や「耕作放棄地」は、大きなポテンシャルを秘めている

株式会社ランドスケープデザイン 設計部 プロジェクトリーダー 髙橋 大樹
[提供]株式会社ランドスケープデザイン

ここまでは、さまざまな地域活性化策を行っている丹波山村を紹介した。このページでは、実際に同村の取り組みを支援しているランドスケープデザインの髙橋氏を取材。丹波山村で行っている現地調査の詳細と、同村のような地域活性化に取り組むうえでのポイントを聞いた。

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株式会社ランドスケープデザイン
設計部 プロジェクトリーダー
髙橋 大樹 たかはし だいき

全体を俯瞰して想像するのが空間をデザインするポイント

―丹波山村でどのような現地調査を行っているのですか。

 たとえば、丹波山村の全体構成を把握するために、農地や居住域などを航空写真に落とし込んだマッピングを行っています。そして、過去の航空写真と比較しながら、現状や今後の構成を分析。そして、農地のなかでも現状はどこが現役の農地でどこが耕作放棄地か。エリアごとの日当たり状況はどうか。さらに、丹波山村における農地は、斜面にあるという特殊な状況から、傾斜度も測りつつ総合的に状況を把握します。

 また、丹波宿エリアの居住域においては、どこが空き家で、小道や私道がどのように構成されているか。そういった細かな状況把握を行ったうえで、最適だと考えられるまちづくりの提案を検討するのです。

―このような、まちづくりを行ううえでのポイントはなんですか。

 耕作放棄地、丹波宿と分けて考えるのではなく、そこに住む村人の暮らしやすさや外部から訪れる人の過ごしやすさを想像したうえで、全体的に俯瞰しながら魅力的な風景を検討することですね。ただ、「空き地があるから公園にしましょう」という単純な発想ではなく、「ここに村民と外部から来た人がくつろげるコミュニティスペースがあれば自然と交流が生まれますよね」といった具合です。

 そう考えると、傾斜度が高く効率的な農作を行うには向いていない耕作放棄地も丹波宿エリアから見ると立体的な景観として映る。ですから、たとえばシバザクラを植えて、耕作放棄地に新たな価値を生み出すといった可能性も検討できるのです。

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―丹波山村における今後の支援方針を教えてください。

 具体的にどんな施策を行っていくかはこれからですが、たとえ空き家や急斜面の耕作放棄地が多くても、空間としてとらえた場合、大きなポテンシャルを秘めています。その「ランドスケープ的視点」で、施策を提案していきます。

髙橋 大樹 (たかはし だいき) プロフィール
平成元年、東京都生まれ。平成26年に千葉大学大学院園芸学研究科環境造園学専攻修了後、株式会社ランドスケープデザインに入社。屋外空間の計画・設計業務を担当。令和2年から、プロジェクトリーダーとして地方創生業務を担当している。

支援企業の視点

まちづくりによる地域活性化③

「モノゴトづくり」のデザインで、社会課題の解決ができる

株式会社ランドスケープデザイン 設計部 公民連携グループ 部長 田嶋 豊
[提供]株式会社ランドスケープデザイン

これまで紹介したように、「ランドスケープ的視点」から丹波山村の地域活性化支援を行っているランドスケープデザイン。なぜこのような、自治体に対するサポートを行っているのか。このページでは、同社の責任者である田嶋氏を取材。サポートに対する想いや、具体的な支援内容について聞いた。

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株式会社ランドスケープデザイン
設計部 公民連携グループ 部長
田嶋 豊 たじま ゆたか

「ハード」をつくるだけでなく「ソフト」の発想が重要

―なぜ、丹波山村に対してサポートを行っているのでしょう。

 当社の取り組みが、丹波山村のようなまちづくりに活かせると考えたからです。当社はこれまで、都市公園や民間施設外構のデザインを手がけてきました。その経験で見えてきたのは、たんに「ハード」をつくるのではなく、「そこを利用する人に、その場所で、どう過ごしてほしいか」といった「ソフト」の発想が重要だという点。モノづくりに対してコトづくりという言葉がありますが、当社は「モノゴトづくり」を意識したデザインに取り組んでいるのです。

―自治体に対して、ほかにどのような支援を行っているのですか。

 「Park-PFI(公募設置管理制度)」 による公園の整備・運営にも注力しています。たとえば、横須賀市(神奈川県)の「長井海の手公園ソレイユの丘」における「Park-PFI」事業を9社の共同事業体で受注。令和5年4月のリニューアルオープンに向けて公園設計と並行し、公園全体のプロデュースにも取り組んでいます。地域住民の健康的なライフスタイルを支え、地域価値の向上に寄与する「モノゴトづくり」の展開を考えています。

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―自治体に対する今後の支援方針を聞かせてください。

 当社は、令和3年4月、設計部に公民連携グループを立ち上げました。目的は自治体をはじめとした多様なステークホルダーとの「共創」による社会課題の解決です。当社は、客観的な立場で地域や場所の分析評価を行い、その価値を「見える化」することで、それを実現したいと考えているのです。ハードとソフト双方の視点から、そこに住む人や訪れる人に「よりよい時間を過ごしてもらう」ための場づくりを提供し、社会課題解決の一助となる取り組みを行っていきたいですね。

田嶋 豊 (たじま ゆたか) プロフィール
昭和42年、埼玉県生まれ。多摩美術大学卒業後、米国建築系大学院を経て鹿島建設株式会社へ入社。出向先のシンクタンクで中心市街地活性化基本計画などの行政計画策定に携わる。平成12年、鹿島グループの株式会社ランドスケープデザインに入社。専門分野は公民連携事業、都市公園設計、景観色彩、住民参加型ワークショップの企画・運営。令和3年4月から現職。
株式会社ランドスケープデザイン
設立 平成11年4月
資本金 5,000万円
従業員数 27人
事業内容 外部空間に関する調査・計画・設計、外構工事の工事監理、外部空間の維持管理提案、生物モニタリング調査、まちづくりにかかわる調査・計画、定量的景観評価のための各種景観調査、景観計画・景観条例・その他各種景観ガイドラインの策定、ワークショップなどの企画・運営
URL https://www.ldc.co.jp/
お問い合わせ電話番号 03-5561-2470(平日8:30〜17:15)
お問い合わせメールアドレス landscape@ldc.co.jp
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*1:※小さな村g7サミット : 小さな村の魅力を全国に伝えるイベント。丹波山村のほか、音威子府村(北海道)、檜枝岐村(福島県)、北山村(和歌山県)、新庄村(岡山県)、 大川村(高知県)、五木村(熊本県)が参加