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適切な小売電気事業者を、「代理交渉で選ぶ」という発想

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群馬県沼田市の取り組み

新電力への切り替え①

適切な小売電気事業者を、「代理交渉で選ぶ」という発想

沼田市 教育部 教育総務課 総務係 副主幹 戸部 隆之
[提供]株式会社エネリンク

※下記は自治体通信 Vol.32(2021年8月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

自治体でコスト削減がさけばれるなか、新規参入の小売電気事業者(以下、新電力)に切り替えて年間の電気料金を下げることは重要な施策のひとつと言える。ただ、「どの新電力が適切か」を判断するのは難しい。そうしたなか、沼田市(群馬県)と甲州市(山梨県)は、新電力を新たに切り替えた際、「代理交渉」という手法で事業者を選定した。両市の担当者に、詳細を聞いた。

[沼田市] ■人口:4万6,287人(令和3年6月末現在) ■世帯数:2万681世帯(令和3年6月末現在) ■予算規模:385億4,879万6,000円(令和3年度当初) ■面積:443.46km2 ■概要:群馬県の北部に位置している。赤城山や武尊山など「日本百名山」にあげられる山々に四方を囲まれ、標高は250mから2,000mあまりにおよぶ起伏に富んだ地形となっている。恵まれた自然と豊富な温泉群・スキー場・ゴルフ場・史跡・果樹園、さらに関越自動車道沼田インターチェンジによる交通アクセスの良さなどを背景に、日本有数の観光地として有名。
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沼田市
教育部 教育総務課 総務係 副主幹
戸部 隆之 とべ たかゆき

契約していた事業者が、倒産してしまった

―新電力を新たに切り替えた背景を教えてください。

 当市では、平成23年から新電力に切り替えていたのですが、当時は取り扱っている事業者自体が少なかったんですね。それで、選択の余地がなく、手をあげてもらった事業者と随意契約を行って切り替えました。確かに電気料金は下がりましたが、同じ契約をずっと更新していて、正直に言って「契約内容が適正か」の検証ができていませんでした。ただ、入札を行うにしても準備にマンパワーが必要なうえに、なにから手をつけていいかわからない状態でした。そんななか、契約していた事業者の一つが倒産したこともありました。

―大変な状況ですね。

 ええ。そうなった場合、自動的に以前の契約していた事業者に戻るのですが、当然電気料金はあがります。そんなとき、エネリンクからESP*1方式の提案を受けたのです。ESP方式とは、当市がエネリンクと随意契約を結び、当市に代わってエネリンクが全国の事業者と交渉し、適切な事業者を提案してくれるというもの。結果、安くなった電気料金から手数料をエネリンクに払うというシステムでした。全国の事業者とネットワークがあり、万が一紹介してもらった事業者が倒産して電気料金があがった場合でも、差額を補償してもらえるという話でした。

 当市でも魅力のある提案をしてもらえた場合、随意契約を保証する「民間提案制度」を採用しており、その制度を活用して令和2年2月から導入しました。

交渉してもらえるぶん、予算の見通しが立てやすい

―導入後はいかがですか。

 エネリンクから提案してもらった適切な事業者に切り替えたことで、年間約2,600万円の電気料金削減につながりました。これは、倒産した事業者と契約していたときと比較しても安くなっている計算です。また、入札に必要な見積書や仕様書を作成する事務コストも発生しないため、助かっています。交渉してもらえるぶん、予算の見通しも立てやすくなりましたね。

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山梨県甲州市の取り組み

LED化も図ったが想定より、電気料金が下がらなかった

甲州市 管財課 営繕管理担当 課長補佐 勝村 公一
[提供]株式会社エネリンク
[甲州市] ■人口:3万573人(令和3年7月1日現在) ■世帯数:1万3,153世帯(令和3年7月1日現在) ■予算規模:254億4,959万9,000円(令和3年度当初) ■面積:264.11km2 ■概要:甲府盆地の東部に位置し、北東側には秩父多摩甲斐国立公園の大菩薩連嶺をはじめとする秩父山系の山並みが連なり、北は広大な山岳地帯、南は重川、日川およびその支流によって形成された複合扇状地が広がっている。ブドウ、桃、スモモ、柿などの果樹栽培を中心とした農業が盛ん。
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甲州市
管財課 営繕管理担当 課長補佐
勝村 公一 かつむら こういち

―新電力を新たに切り替えたのはなぜでしょう。

 直接の理由としては、契約の満了にともない、入札で新しい事業者を選定する予定だったからです。

 当市では平成29年度に、入札において事業者を決定し、新電力に切り替えました。平成30年度には、温室効果ガス削減および庁舎維持経費削減を図るため、市役所本庁舎の照明をLED化。さらに、年間でいちばん電気料金が高い2月の最大需要電力量を抑えるため、暖房を入れる時間帯を変更するなどして、少しでも電気料金を削減する工夫をしました。

 ただ、実際には、当初想定していたより電気料金は減っていませんでした。燃料費調整額*2の変動や、再生可能エネルギー発電促進賦課金*3の影響を受けたことで、使用電力量が下がっても、電気料金が減らなかったのです。そうした不安を抱えて入札準備に入るタイミングで、エネリンクからESP方式の提案を受けたのです。

―どのように検討したのですか。

 当初は、手数料を払って事業者に代理で交渉するという方法がピンときませんでした。ただ、見積もりを出してもらい、他社の提案と比較した結果、手数料を払っても、電気料金が安くすむことがわかりました。また、事業者の倒産、撤退が発生しても迅速に対応してくれると。そこで、庁内でメリットを説明したうえで、随意契約にて令和元年10月からESP方式を導入したのです。

契約更新後は、30施設で新電力に切り替え

―成果は出ましたか。

 電力市場が変動するので単純比較はできないのですが、提案してもらった事業者に切り替えたところ、9施設の集計で年間約1,200万円の電気料金削減につながりました。契約から1年後、再度検討してもらい、結果的に同じ事業者と契約を継続。現在は、30施設で新電力に切り替えています。今後も、最適な事業者の選定をお願いしたいですね。

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支援企業の視点

新電力への切り替え②

第三者の視点に立った見極めで、真に最適な新電力活用を実現させる

株式会社エネリンク 代表取締役 後藤 真介
[提供]株式会社エネリンク

ここまでは、新電力の見直しを実施した沼田市と甲州市の取り組みを紹介した。ここからは、両自治体を支援したエネリンクを取材。同社代表の後藤氏に、自治体が新電力に切り替える際の課題や、その解決方法を聞いた。

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株式会社エネリンク
代表取締役
後藤 真介 ごとう しんすけ

電力供給者が不在になれば、高額料金が発生する可能性も

―新電力に切り替える自治体は増えているのですか。

 はい。多くの自治体は、生産年齢人口や法人税が減り、歳入は減少傾向にあります。その課題解決のため、新電力への切り替えは増えていると考えられます。電力自由化がはじまった平成12年当初は、参入する事業者も少なく、利用者にとって選択の余地はありませんでした。また、「電気が止まってしまうのでは」といった誤解もあり、利用者自体も少なかったのです。

 ただ、徐々に事業者も増え、平成28年からは高圧だけでなく低圧も自由化になり、より参入しやすくなりました。いまでは725(令和3年6月28日現在)の事業者が参入しており、選択の幅が広がったと言えるでしょう。

―自治体が新電力に切り替える際の課題はなんでしょう。

 やはり、数多くあるなかから適切な事業者を選ぶのが難しいことですね。一般的な選定方法として、入札があげられます。入札ですと、どうしても価格の安い事業者が選ばれることになり、結果として沼田市のように契約していた事業者が倒産するケースも。倒産しなくても、途中で事業を撤退する事態も考えられます。電力供給者が不在になった場合、最終保障供給*4が適用され、割高な電気料金が発生してしまいます。結果、予算内に電気料金を収められない可能性も考えられるのです。

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―どうすればいいですか。

 入札で事業者を選定するのではなく、第三者による視点から適切な事業者を選定する方法をおススメします。一般的には比較サイトが考えられますが、比較サイトは契約が決まった事業者から手数料をもらうため、言わば事業者側の視点に立った提案です。一方、当社が提供しているESP方式なら、第三者側に立った提案を行うことができるのです。

―詳しく教えてください。

 簡単に言うと、当社が自治体と随意契約を結び、当社が代理人となって全国から最適だと考える事業者を選定します。手数料は自治体からもらうため、第三者の視点で選べるというわけです。選定の基準は単純に価格だけではなく、信用調査機関の情報や、電源構成*5などが目安となります。そして、当社では数多くの事業者の上層部と接点があり、よりリアルな情報をえることができるのです。また、電力相場を鑑みたうえで事業者と価格交渉まで行います。さらに、年間どれくらい電気料金が抑えられたかの共有を行うほか、定期的に適正な事業者の見直しも行います。結果として、自治体にとって最適な新電力の活用を提案できるのです。

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エネルギーを通じて、暮らしやすい地域づくりを

―自治体に対する今後の支援方針を聞かせてください。

 現在、低圧を含めて全国で約9,000件の契約実績があり、そのなかで122自治体に対し、毎年約20億円の行政経費削減に貢献しています。さらにESP方式を浸透させることで、多くの自治体のコスト削減に貢献していきたいですね。万が一、当社が紹介した事業者が倒産あるいは撤退し、最終保障供給が発生した場合は、差額分を補償します。

 近年は、環境に配慮した再生可能エネルギーの普及や、電力の地産地消といった発想も生まれており、エネルギーの活用方法も多様化しています。行政経費削減の支援はもちろん、エネルギーを通じて暮らしやすい地域づくりにも貢献していく新たなサービスを現在構築しています。自治体のニーズにあわせて、さまざまな提案を行っていきたいと考えています。

後藤 真介 (ごとう しんすけ) プロフィール
昭和42年、愛知県生まれ。大学卒業後、会社勤務を経て、家業であるゴトープラスチック株式会社にて自動車部品製造会社の代表者を務める。平成22年、同社代表を務めつつ、自らの新規事業として、株式会社エネリンクを設立し、代表取締役に就任する。
株式会社エネリンク
設立 平成22年7月
資本金 3,000万円
従業員数 10人
事業内容 ESP(エネルギーサービスプロバイダー)事業、ESP推進協力会の運営・管理、環境および省エネルギー機器の販売
URL http://www.enelink-esp.jp/
お問い合わせ電話番号 052-212-1138(平日8:00~17:00)
お問い合わせメールアドレス hello@enelink-esp.jp

*1:※ESP:Energy Service Providerの略

*2:※燃料費調整額:原油や石炭などの価格変動を電気料金に迅速に反映させるため、その変動に応じて毎月自動的に電気料金を調整した額

*3:※再生可能エネルギー発電促進賦課金:再生可能エネルギー電気の買い取りに要した費用を電力利用者に負担してもらう料金

*4:※最終保障供給:小売電気事業者のいずれとも電気の需給についての契約が成立しない高圧以上の利用者に対して、電気最終保障供給約款にもとづき電気を供給すること

*5:※電源構成:発電に利用される電源(火力、原子力、各種再生可能エネルギーなど)の内訳