岩手県陸前高田市の取り組み
新たな地域振興策
「ウェルネス特化」のポイント制度で、持続可能な地域経済を構築する
※下記は自治体通信 Vol.31(2021年7月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
地域振興策をめぐっては、各自治体が地域の特色を活かした独自策を展開している。農業テーマパークを誘致した陸前高田市(岩手県)もそのひとつだ。同市担当者の阿部氏に、農業テーマパークを誘致した経緯や期待する効果を聞いた。さらに、農業テーマパークの運営企業の代表者と「ウェルネス」の増進に向けた、独自のプラットフォームを提供する企業の担当者にも取材。地域振興に貢献する取り組みの詳細を紹介する。
農業の一大テーマパークで「食と健康」のまちづくりを
―今回、農業テーマパークを誘致した経緯を聞かせてください。
東日本大震災の復興事業で整備した約23haの敷地の活用策を検討していたなか、当市の参与であるワタミグループ代表の渡邉美樹氏から、ある提案を受けました。それは、有機栽培の農業体験ができる農園や、収穫した農作物を材料に使うレストランやカフェ、直売所、さらには加工施設も整備し、「日本最大級の農業テーマパーク」を建設する構想です。
このテーマパークでは、地元の農林水産事業者と連携した取り組みも進める予定で、基幹産業の第1次産業を軸に、現在当市が推進している6次産業*1化の機運がさらに高まるのではないかと考えました。「ワタミオーガニックランド」という名称で、今年4月末から一部エリアがオープンしました。
―今後、どのような効果を期待していますか。
6次産業化の推進により、全国に発信できる新たな「陸前高田ブランド」の商品が生まれることを期待します。また、震災で多くの犠牲を出した当市が、同ランドから「命の源」である「食」、さらには食を通じた「健康の大切さ」を発信して、地域住民はもちろん、全国から多くの方が集い、新たな交流が生まれる拠点にしたいです。
同ランドには、「ウェルネス」に特化したポイントシステムが導入されると聞いています。「食と健康の発信拠点」という施設の理念にマッチしたシステムだと思います。当市の基幹産業をベースとした「食と健康」のまちづくりにおいて、象徴となる一大テーマパークを目指したいですね。
支援企業の取り組み
グルーヴァース株式会社 営業部 プロジェクトリーダー 山田 敏一
地域振興に貢献しながら、来場者を元気にする場に
―「ワタミオーガニックランド」を、どのようなテーマパークにしていきますか。
小出 安心できる農作物の生産をはじめ、健康増進にまつわるさまざまな取り組みを行い、「健康寿命の延伸」を発信していくテーマパークにしたいと考えています。
私たちは、約23haにおよぶ敷地の約7割を占める農園で有機野菜や果物を栽培し、地元の農林水産事業者とも連携して6次産業化を進める方針です。具体的には、敷地内のレストランやカフェ、直売所、加工施設に、それぞれの農作物、畜産物、水産物を卸してもらい、ランド内で収穫した農作物と掛け合わせて、新たな「陸前高田ブランド」の商品を生み出そうと。陸前高田市の基幹産業である第1次産業の振興につながり、ランド内には新たな雇用も生まれます。
―地域経済の活性化が期待されますね。
小出 はい。まずは地域振興に貢献できるテーマパークにしようと考えています。そのうえで、身体の機能を高めるための運動施設のほか、心が元気になる施設、たとえば音楽堂といったカルチャー施設も整備。健康増進にまつわる取り組みを行い、「来場者が元気になれるテーマパーク」へと育てていきます。こうしたビジョンのもと、今後、長い時間をかけて約23haの「ワタミオーガニックランド」を完成させるなかでは、さまざまな事業者との協力が不可欠です。たとえば、地元の生産者や食品メーカー、農業研究機関のほか、スポーツ関連会社や健康がテーマのイベント会社など。健康増進にまつわるさまざまな分野の事業者の協力を得るうえで、今回導入予定のグルーヴァースの『ウェルちょ』というプラットフォームには大きな期待をしています。
―どういったプラットフォームでしょう。
山田 私たちの『ウェルちょ』は、心身の健康を維持・増進させる「ウェルネス」をテーマとしたポイントシステムのプラットフォームです。たとえば今回、ランド内で商品を購入したりサービスを利用したりすれば、特典として「エール」*2が付与され、来場者はその「エール」をさらにランド内で利用できる仕組みです。
小出 『ウェルちょ』が一般的なポイントシステムと異なるところは、「ウェルネス」の増進に特化していること。まさに、「健康増進」を追求する私たちの考えに合致しています。『ウェルちょ』の導入により、「消費者のウェルネス行動のサポート」という明確な目的に賛同する多くの企業の参画が見込めます。実際、食生活に関する検査診断を行うヘルスケアシステムズや、東京農業大学がランドの運営に協力してくれています。
山田 また、『ウェルちょ』は商品の購入やサービスの利用といった経済活動以外にも、地域コミュニティ活性化を促す使い方もあります。
「エール」によって生まれる、世代間の新たな交流
―詳しく教えてください。
山田 たとえば、ランド内で子守りをしてくれた高齢者に、親がそのお礼として「エール」を渡すといった使い方です。お金をもらうには少し気が引けるようなちょっとした依頼でも、もともと「特典」という意味合いで使われる「エール」なら気軽に活用できます。「エール」を介した世代間の交流が増えるならば、地域コミュニティの活性化も図られます。
小出 また、私たちはこのランドに多くの若者や学生に来てもらい、農作業を体験して「食」の大切さを学んでもらいたいと考えています。そういった場合に、ボランティアとして農作業を手伝ってもらい、そのお礼を「エール」で渡すといったことも考えられますね。
山田 その若者や学生が高齢者の移動をサポートし、高齢者から「エール」をもらうことも。ほかにも、「エール」の活用シーンは多岐にわたるため、ランド内にとどまらず、周辺に「エール」を利用できる店舗、私たちは「ウェルネスステーション」と呼んでいますが、そういった店舗が増えるほど、地域全体に大きな経済効果をもたらします。さらに『ウェルちょ』は、域外からもお金や人を呼び込めるポイントシステムです。
健康増進に共感する消費者を、全国から取り込める
―どのようにして、域外からお金や人を呼び込むのですか。
山田 「ウェルネス」という共通テーマでつながる『ウェルちょ』は、健康増進に共感する消費者のコミュニティです。そのため、たとえば、地域の特産品を販売する専用のECサイトでは、ひとつの商品に込められたメッセージやストーリーを見出し、共感した消費者が購入してくれます。こういった、ファンとなってくれる消費者を全国から取り込めるのです。
小出 私たちも、ランド内でつくった農作物を全国のワタミグループのレストランや事業所で使うようにします。そして、食べてもらった人には「エール」を提供するのです。その「エール」をECサイトで商品の購入に利用してもらったり、陸前高田に足を運んでもらったりするようなプロモーションを行いたいと考えています。
―今後、自治体をどのように支援していきますか。
小出 多くの自治体が、地域振興策に悩んでいると聞きます。6次産業化を目指す「ワタミオーガニックランド」、そして、「ウェルネス」の意識をまち全体に広げる『ウェルちょ』のプラットフォームは、第1次産業をベースとした「自立分散型」のまちづくりの可能性を示すものだと考えています。
山田 当社では、北海道で『ウェルちょ』を通じた地域振興のサポート実績があります。その経験から言えることは、今回のように大規模な取り組みでなくとも、ひとつの地域商店街単位での導入でも地域活性化は十分に可能だということです。関心のある自治体のみなさんは、ぜひ当社にご連絡ください。
設立 | 令和元年10月 |
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資本金 | 3,000万円 |
事業内容 | 「ワタミオーガニックランド」の企画、開発、運営 |
URL | https://watami-organic.jp/ |
設立 | 平成30年11月 |
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資本金 | 1億円 |
事業内容 | 『ウェルちょ』事業の運営 |
URL | https://groovearth.com/ |
お問い合わせ電話番号 | 050-5358-0741 (平日9:00~18:00) |
お問い合わせメールアドレス | support@groovearth.com |
「ワタミオーガニックランド」に参画する企業の声
カラダの状態を可視化し、「健康的な生活習慣」を提案
―「ワタミオーガニックランド」では、どのような取り組みを行っていくのでしょう。
来場者のカラダの状態を可視化し、食生活の改善に向けた行動変容を促す取り組みをしていく予定です。具体的には、当社が開発した検査キットで「1日当たりの推定たんぱく質摂取量」や「カラダの酸化ストレス度」などを測ってもらい、その結果をもとに、「あとどのくらいたんぱく質を摂ったらいいのか」「どのような酸化ストレス対策をすればいいのか」といったアドバイスをします。「健康増進」をテーマとする「ワタミオーガニックランド」において、私たちは予防医学の観点から、「その人が健康に過ごすための食、運動などの生活習慣のあり方」を個別に提案していきます。
―その取り組みは、地域にどういった効果をもたらしますか。
健康でイキイキとした住民が増えることで、地域全体の活性化につながると考えています。健康な住民が増えれば、自治体にとっては医療費の支出を削減できるというメリットが生まれます。
そのほか、住民の健康を考えた場合、「食のあり方」はもちろん重要ではありますが、運動も大切。そういった点では、『ウェルちょ』は、貯まった「エール」を地域のトレーニングジムで利用できるほか、「心の元気」といった観点から、理美容院でも利用できます。「エール」の活用を通じて、より広い視点から健康増進法をアドバイスすることで、私たちも住民の健康づくりに貢献できると考えています。
設立 | 平成21年3月 |
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資本金 | 3,000万円(資本準備金含む) |
事業内容 | 郵送検査事業、バイオマーカー・検体検査技術の研究開発・受託分析、機能性食品の臨床試験・研究開発、機能性表示食品の取得サポート |
URL | https://hc-sys.com/ |
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