
民間企業の取り組み
ワークショップを通じたプロジェクトの創出
多様な人材が生み出す「化学反応」で、社会課題解決への発想を磨け
神戸市 医療・新産業本部 新産業部 新産業課 イノベーション専門官 西川 嘉紀
仙台市 経済局 産業政策部 産業振興課 国際経済室 室長 佐藤 克行
※下記は自治体通信 Vol.28(2021年2月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
多くの自治体が、人口減少や少子高齢化といった、長期を見据えて取り組んでいくべき社会課題を抱えている。しかし、課題の根深さゆえ、「解決に向けた企画立案が行き詰まってしまう」という悩みも少なくない。こうした悩みに対して、イノベーション支援事業を展開するCo-Studioの今林氏は、「分野を超えた多様な人材からアイデアを引き出すことが、打開策を生むきっかけになりえる」と話す。その理由について、同氏に聞いた。

限定的な発想から、イノベーションは生まれない
―社会課題の解決に向けた企画立案の難しさとは、どのような点にあるのでしょう。
変動性、不確実性、複雑性、あいまい性が高い、現代のVUCA(※)社会では、社会課題が複雑化・多様化しやすくなっている点にあります。そうした社会課題に対し、もし従来と変わらないアプローチで打ち手を考えるならば、時間の経過とともに打ち手は陳腐化してしまいかねない。これまで、たとえば社会課題が「住民の健康増進」であるならば、解決策を探る段階で意見を募るのは、大学や病院、医療メーカーなどの専門家だったでしょう。特定分野の課題解決に高い専門性はもちろん欠かせませんが、それを多様化する社会に応用させていくには、課題解決に向けた発想そのものも多様化していかなくてはなりません。
※VUCA:Volatility(不安定さ)、Uncertainty(不確定さ)、Complexity(複雑さ)、Ambiguity(不明確さ)の頭文字を合わせた言葉。 現代の社会環境を表現するキーワードとして使われる
―具体的にどうすればよいのでしょう。
解決したい課題の分野や業界にしばられることなく、多くの人材をプロジェクトに巻き込んでいくことです。これまで世の中を大きく変えてきたイノベーションのなかには、小さなアイデアとアイデアの掛け合わせで生まれてきたものもあります。同様に、社会課題解決に向けた施策の立案においても、重要なのは、多様な人材が集まるからこそ生まれる「新しい」発想なのです。
―そうした発想をどのように施策づくりにつなげていくのですか。
たとえばCo-Studioでは、多様な人材にワークショップに参加してもらうカタチで、社会課題の解決に向けた新規プロジェクトを立ち上げる支援を行っています。このワークショップでは、従来的な観点では一見、無関係な企業や人を巻き込んでいきます。こうしたメンバーにアイデアをもち寄ってもらい、事業実現性を検討。そこから、社会課題の解決に向けた具体的な施策の実施や、ビジネスの創出につなげていくのです。
草の根で活動する個人も、課題解決を促す触媒役になる
―そうしたメンバーはどのように集めるのですか。
地方紙をはじめメディアと連携して募集するほか、当社パートナーから面白いアイデアが出そうな企業や人を厳選します。さらに、新しい発想が生まれる機会をより大きくするには、企業に属さず草の根的な活動を行っている個人のアイデアを拾い上げることも大切です。そうした個人は、子会社のFlower Loopが運営する『世界レベチ図鑑』というWebメディアからも抜擢します。『世界レベチ図鑑』は、社会課題解決に向けてユニークな方法で努力する人物にスポットライトを当てる番組。過去に登場した、「東北応援」をコンセプトとした食堂を非営利で運営している女性は現在、Co-Studioが参画する宮城県仙台市のプロジェクトとして、健康増進がテーマの実証実験を協創しようとしています。
―自治体に対する今後の支援方針を聞かせてください。
これまでの自治体の取り組みでは起こりえなかったような「化学反応」を起こす触媒役として、課題解決の突破口を探るお手伝いをしていきたいですね。少子高齢化、人口減少のような大きな社会課題は、長年にわたり、解決に向けて多額の財源も投じられてきましたが、課題の深刻さはいまも変わりません。従来と異なる新しいアプローチで、課題解決の道筋を照らすことにつながるような支援をしていきたいと考えています。


若者人口の流出が課題の当市は、若者に魅力ある仕事を生み出すための、イノベーション創出拠点事業「アンカー神戸」を進めています。このうち、「ITを活用した自助共助モデル」というテーマの取り組みで、Co-Studioにワークショップを開催してもらっています。これには、スタートアップ起業家や音楽家を含む多様性に富んだメンバー約20人が参加。ここで生まれたアイデアをもとに新たなビジネスをつくり出し、実証実験を行うのが短期的な目標です。行政が特定の企業に事業を委託するのではなく、課題解決に向けた事業をゼロからつくり出す方法は、アンカー神戸の理念にマッチしており、今後の進展に期待しています。


当市が東北大学病院やフィリップス・ジャパン、地元企業と取り組んでいる「仙台市ヘルステック推進事業」へ、Co-Studioに参画してもらっています。具体的には、コロナ禍に対応したオンライン環境や、デザインシンキングの手法を活かしたワークショップを開いてもらっています。テーマは、「単身赴任者の健康管理」や、東日本大震災後にできた新しいまちにおいてAEDなどを活用する「安心・安全なまちづくり」など。こうしたさまざまなテーマのもとに、多くのソリューションが生まれてくることに期待しています。同社と参加企業、多様な個人との「化学反応」により、課題解決先進地を目指した新たな取り組みに挑戦していきます。
設立 | 令和元年12月 |
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資本金 | 300万円 |
従業員数 | 6人(令和2年12月1日現在) |
事業内容 | 新規事業開発支援 |
URL | https://www.co-studio.co.jp/ |
お問い合わせメールアドレス | info@co-studio.co.jp |
設立 | 令和2年4月 |
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資本金 | 50万円 |
事業内容 | 地域資源の活用および地域コミュニティの持続的発展事業 |
URL | https://www.flowerloop.co/ |
『世界レベチ図鑑』 | https://www.levechi.com/ |
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