
富山県南砺市の取り組み
域外からの人材登用①
都市部の「副業人材」を受け入れ、関係人口創出の新たな切り札に
※下記は自治体通信 Vol.27(2020年12月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
人口減少や少子高齢化が進むいま、いかに域外から人材を呼び込むかが、地域を活性化させるうえで重要になっている。こうしたなか、早くから関係人口の創出に力を入れてきた南砺市(富山県)では、都市部で働きながら地域で副業を希望する人材を地元企業に受け入れる事業に取り組んでいる。その詳細や成果について、市長の田中氏に聞いた。

地元企業32社の募集に、都市部から318人が応募
―関係人口の創出に向けた南砺市の取り組みを教えてください。
「関係人口」という言葉が広まる前の平成28年から、南砺市にかかわる人を増やす「応援市民制度」に取り組んでいます。この制度で「応援市民」になれるのは、地域産品の購入やボランティアなどを通じ、当市を応援してくれる市外の人たち。登録者には専用の証明書を送り、応援活動の円滑化を支援しています。応援市民には、副業として市内企業に働きに来る人もおり、副業人材の受け入れに着目するきっかけになりました。
―なぜ着目したのですか。
副業を通じて地域企業に深くかかわってもらえれば、当市への愛着をより深めてもらえると同時に、地域産業の活性化も促せると考えたからです。市内には、経営課題の解決に専門知識をもつ人材を要しながらも、新たな社員の雇用が難しい中小企業が多くありました。折しも、平成30年には政府が企業の副業を促す方針を表明。こうしたなかで当市は、副業人材の登用を模索し、みらいワークスが提供する副業に特化した求人サイト『スキルシフト』を知りました。そこで、南砺市商工会と連携し、『スキルシフト』の活用で地域企業と都市部の副業人材をマッチングする「副業応援市民プロジェクト事業」を始めたのです。
―どのような事業でしょう。
まず、人材を募集したい地域企業は、『スキルシフト』に求人情報を掲載します。これに副業希望者が応募。採用が決まったら、1ヵ月に1回以上、その人材に副業先で、経営課題解決に向けた助言を行ってもらうといった取り組みです。市内企業への営業を含む業務には、地元のコンサルティング会社が当市と企業の仲介役を担ってくれ、事業の円滑な推進につながっています。これは、地元のパートナー企業に副業人材活用のノウハウを蓄積するために、みらいワークスが構築したもので、地方創生の自走化につながる画期的なスキームだと評価しています。
―実際にどのくらいの募集や応募がありましたか。
平成30年度から令和元年度にかけて、32社の募集に318人(※)が応募しました。令和元年末までに15社が副業人材を受け入れています。人材を受け入れた業界は、スポーツ用品や食品、家具、タクシーなど多岐にわたります。どの企業も、マーケティングや人材育成、海外進出などに関する経営課題を抱えていました。地元企業からは、「毎回、課題解決に向けた貴重な助言を多く得られ、満足している」との声を多数聞いています。
※平成30年度は16社に97人、令和元年度は16社に221人がそれぞれ応募


副業人材の活用を、まちづくり全体に広げたい
―関係人口の創出に向けた今後の方針を聞かせてください。
今後も副業人材を積極的に受け入れ、関係人口のさらなる創出を目指します。市内では昨年から、小規模多機能自治(※)の手法を取り入れた新たな住民自治の仕組みづくりが進んでいます。地方創生を目指す住民が主体となり、新しいアイデアが次々と生まれていますが、それらを具現化するため、専門的な知見をもつ人材の協力を市外に求めるケースも多くあります。副業人材の活用をまちづくり全体に広げていきたいですね。
※小規模多機能自治:自治振興会単位や小学校区域において、さまざまな団体が結集し、地域課題を自ら解決して地域運営を行う仕組み


市内の木製バットメーカーで副業を行い、中期経営計画の策定を支援しました。副業を希望した理由は、前職で得たコンサルティングのスキルを役立てられる場を探していたこと。私自身、野球が好きなことや、地方産業の活性化に貢献したいという想いもありました。9ヵ月間の副業を通じて地元企業に貢献できただけでなく、南砺市への愛着も深まりました。
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