
民間企業の取り組み
公共施設の低炭素化策
補助金で最大約7割の工事費軽減も「改修によるZEB化」という選択肢
上郡町 財政管理課 管財係 小田 賢
※下記は自治体通信 Vol.27(2020年12月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
パリ協定にもとづくCO2削減目標が掲げられるなか、全国の自治体にも目標達成に向けた施策が求められている。そこで近年、注目されているのが、建物ごと省エネ化を図る「ZEB化」だ。そのZEB化について、幅広い設備事業を展開する日比谷総合設備の高山氏は、「大幅なCO2削減によりZEB化を図るには、建物の新築が大前提と捉えられがちだが、改修工事でも実現は可能」と指摘する。同氏に、その具体的な方法を聞いた。

設備の更新と外皮工事で、エネルギー消費を抑える
―ZEBが注目されている背景を聞かせてください。
国が掲げる目標において、自治体を含む「業務その他部門」では令和12年度に平成25年度比40%のCO2削減が示されています。この目標を達成するために、建物全体でCO2を削減するZEBが注目されているのです。ZEBとは、「ネット・ゼロ・エネルギー・ビル」の略で、「年間の一次エネルギー消費量(※)が正味ゼロ以下の建築物」のこと。エネルギー基本計画でも、令和12年度までに新築建築物の平均でネット・ゼロ・エネルギーの実現を目指しています。しかし、ZEBは「施設の新築で導入するもの」という先入観から、新築の計画がなかったり、財源が限られたりする自治体にとっては検討されにくいのが現状です。
※一次エネルギー消費量:建物の利用に伴う、直接的なエネルギー消費量のこと
―なぜ「新築が大前提」と捉えられがちなのでしょう。
文字通りエネルギー消費量をゼロ以下にするには、省エネにくわえて創エネが不可欠になるからです。その場合、主要な創エネ設備となる太陽光パネルを設置するため、十分な面積を確保できる建物全体の設計が求められ、新築が必要になるのです。ただし、国ではZEBをその達成度合いにより、「ZEB Oriented(※)」「ZEB Ready」「Nearly ZEB」「ZEB」と、大きく4段階に分けて定義。このうち、創エネを含まず、基準一次エネルギー消費量の50%以上を削減するZEB Readyまでであれば、新築を行わずとも実現が可能。そのため当社は、改修によるZEB化を提唱しているのです。
※ZEB Oriented:延べ面積1万m2以上の建築物を対象とした、ZEBの定義のひとつ
―どのように実現するのですか。
まずは、照明や空調、給湯など設備の高効率化により、CO2排出量を削減。さらに、外壁改修やガラス改修による断熱性能の向上、全熱交換器を採用した空調エネルギーの熱回収による省エネ効果の向上など、設備の更新から建物の工事を含む省エネ施策を行います。これによって、施設を建て替えずとも、ZEB化の第一歩となるZEB Readyの判断基準を満たすことは十分に可能となるのです。
総合的な支援が可能な、企業選びがポイント
―設備から工事まで、ZEB化実現に必要な要素は多いのですね。
はい。そのため、改修によるZEB化は、省エネ設備の取り扱いを含む、総合的な支援ができる企業の協力が肝要です。その点、当社は、ZEB化対象施設の選定から、設計、施工、工事後の運用までを一貫支援。また、建物の改修は、職員の業務に支障なく進めることも大切で、当社の豊富な改修工事の実績も、強みとなります。
ZEB化は、大規模な工事が必要なぶん費用もかかりますが、ZEB Readyでも補助金の活用が可能。たとえば、兵庫県上郡町では、環境省の補助金(※)を活用し、当社の支援のもと、自治体初の改修によるZEB化が進んでいます。
※環境省の補助金:上郡町は「地域の防災・減災と低炭素化を同時実現する自立・分散型えねるぎー設備等導入推進事業」を活用。同事業の補助金の補助率は3分の1~4分の3
―自治体に対する今後の支援方針を聞かせてください。
幅広い省エネ設備のラインナップや、補助金関連業務の豊富な支援実績を活かし、自治体が抱えるさまざまな課題解決を支援していきます。自治体へはこれまで、警察署や交番を対象とした長野県の照明LED化推進や、神奈川県真鶴町の公共施設一括省CO2改修などを支援。リースを活用した設備の提供や、設備のスマート化による省エネ施策も対応できます。環境やエネルギーに関する課題をもつ自治体の方は、ぜひお問い合わせください。


当町の本庁舎は築30年以上が経過し、老朽化していた一方で、将来の人口減少を見据えた公共施設の管理計画で、現状を維持しながら使用を続ける方針が決まっていました。しかし、エアコンの故障といった設備の不具合が随所に発生していたことにくわえ、エネルギー消費量が大きな古い設備は低炭素化の観点でも課題でした。そこで我々は、建物全体の改修と低炭素化の同時実現を検討。ZEBの実現が対象に組み込まれた、環境省の補助金を活用することに決めたのです。
「ZEB Ready」を目指した改修を条件に、プロポーザル公募を行ったところ、民間企業2グループからの提案がありました。このうち、日比谷総合設備と国際航業の共同グループは、当町が提示した条件よりも高い性能の太陽光パネルや蓄電池を提案してくれた点を評価しました。また我々は、職員の業務が中断されることなく、期限までに居抜き工事を完遂できることも重視。改修工事の豊富な実績をもつ日比谷総合設備なら、それを実現してくれるという期待も決め手のひとつとなりました。現在進んでいる工事は、省エネ化のほかに防災機能の強化も含まれ、災害時にも太陽光で電気をつくり、災害対策本部としての庁舎機能を保持できる設計となっています。
当町の取り組みは、施設の改修でZEB化を行う、自治体として初めての事例になると聞いています。全国には、老朽化した公共施設が大量に存在していると思いますが、当町が、施設の長寿命化と低炭素化を両立するモデルケースになればと考えています。
設立 | 昭和41年3月 |
---|---|
資本金 | 57億5,344万円 |
売上高 | 758億9,000万円(令和2年3月期) |
従業員数 | 769人(令和2年3月31日現在) |
事業内容 | 空気調整装置工事、電気設備工事・通信設備工事など |
URL | http://www.hibiya-eng.co.jp/ |
お問い合わせ電話番号 | 03-3454-2694(平日 9:00~17:30) |
お問い合わせメールアドレス | katsuya_takayama@hibiya-eng.co.jp |
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