
群馬県沼田市の取り組み
公共施設の持続的運営
関係部署と地元事業者を巻き込み「包括管理」を成功に導く秘策とは
※下記は自治体通信 Vol.26(2020年10月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
公共施設の持続的・効率的運営を目的に、いま自治体では複数の施設を一括して管理する包括管理の手法が注目されている。しかし、包括管理にはかかわる部署や事業者の数が多いため、その調整が導入の障壁となっているケースも多い。そうしたなか、沼田市(群馬県)では、独自のプロセスでその調整負担を軽減し、大規模な包括管理を実現したという。その経緯について、同市担当者に話を聞いた。

新庁舎の総合管理を「スモール版包括管理」と設定
―沼田市が公共施設の包括管理を導入した経緯を教えてください。
市内の公共施設をめぐっては、老朽化にともなって、設備の点検や修繕・補修といった管理に少なからぬ人手や予算が必要になり、事務コストは年々かさんでいました。また近年、各種法令の改正を受け、施設の仕様が法令に準拠しているか、専門家の目で巡回チェックしなければいけない時期も迎えていました。老朽化を受け、施設管理の品質向上も課題となるなか、これらをまとめて解決する手法として、包括管理に注目したのです。しかし、導入に向けては、関係部署が多いうえ、これまで各施設の管理を担当してきた地元事業者の理解を得る必要があり、そこに課題を感じていました。
―どのように解決したのですか。
いきなり包括管理を実施するのではなく、段階的に移行していく方法をとりました。まず、昨年3月に完成した新庁舎を対象に、各種設備や警備・清掃業務などを一括して委託する総合管理を導入。これを、「スモール版包括管理」と位置づけることにしました。というのも、総合管理とは受託した事業者が個々の管理項目に応じて地元事業者を選定し、全体の管理品質を担保していくスキーム。これはまさに包括管理と同じです。この総合管理の経験を通じて、地元事業者には、「決して仕事が奪われるわけではない」ということが理解してもらえ、包括管理への協力を得られると期待しました。また、庁内の関係部署にも、事務コストの削減や管理品質の向上といった効果を実感してもらう良い機会になると判断したのです。


123施設で包括管理を実施。地元事業者の採択割合も上昇
―実際に、包括管理へはどのように移行したのでしょう。
まずは、昨年3月からの総合管理実施にあたり、1年後の包括管理への移行を前提にプロポーザルを実施。自治体での包括管理の実績が豊富な日本管財を選定しました。日本管財には、総合管理をお願いしつつ、庁内や地元事業者に対して包括管理の説明を折々にしてもらい、スムーズな移行を実現するための土壌をつくってもらいました。その結果、今年4月の包括管理移行に際しては、約100社の地元事業者から参画の意志が。結果、包括管理移行後の地元事業者への委託割合は、従来の38%から48%へと向上しました。
―庁内の協力はいかがでしたか。
12の所管課から協力が得られ、小中学校や保育園、公民館といった主要施設を中心に、想定を上回る123の公共施設を包括管理の対象に盛り込むことができました。包括管理の導入によって、今後は公共施設の管理品質が向上するだけではなく、将来的な統廃合や延命化を判断するうえで、重要なデータも収集できると期待しており、公共施設の持続的運営に向けて、有効な道筋ができたと考えています。
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