
静岡県西伊豆町の取り組み
地域通貨プラットフォームが、高齢化に悩む地方経済の救世主に
※下記は自治体通信 Vol.25(2020年8月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
低迷する地域経済をいかに活性化するか。近年、多くの自治体が共通に抱える課題だ。今般の新型コロナウイルスによる影響から、課題の深刻度がさらに増しているのは間違いないだろう。そうしたなか、西伊豆町(静岡県)では、新たな地域通貨システムを導入し、町内での経済循環を促す独自の施策に乗り出している。同町担当者に、施策の背景や効果などについて聞いた。

スマホをもたない高齢者でも、簡単に利用できる
―西伊豆町が電子地域通貨を導入した経緯を教えてください。
年間67万人の観光交流客数を誇る当町は、観光産業への依存度が高く、外需に頼る経済構造を抱えています。そのため、外需の取り込みには力を入れてきましたが、一方で地域外に流れる需要が多いのも特徴で、いかに内需を高め、町の経済を循環させるかは長年の課題でした。そうしたなか、今回の「コロナショック」で頼みの観光業が直撃を受けることに。そこで当町では、プレミアム商品券をはじめ、内需を喚起する施策を検討するなかで、当初予定を前倒し、この春から地域通貨プラットフォームの導入を決めました。
―導入の決め手はなんだったのですか。
まずは、施策の効果を一過性のものにしない、持続的な仕組みがあることです。当町が導入した地域通貨プラットフォーム『chiica』は、経済対策としてだけではなく、ほかの行政施策との連携が可能です。たとえば、町の健康づくり事業に参加してくれた住民に、ポイントとして当町の地域通貨「サンセットコイン」を付与。または、ボランティアに参加した住民にサンセットコインを付与し、内需を喚起するといった使い方もできるでしょう。経済対策以外の施策も巻き込むことで、継続的な効果が期待できるのです。
もうひとつの導入理由として、今年から始まる国の「マイナポイント事業」の受け皿として、地域通貨プラットフォームを活用したいとの狙いがありました。
―詳しく教えてください。
当町は、高齢化率が約50%と県内でもっとも高いこともあり、スマートフォン保有率は低いです。そのため、現状ではマイナポイント事業で活用するキャッシュレス決済を利用できない住民が多くいます。そうした住民に提供できる新たなキャッシュレス決済手法として、マイナポイントとの連携を謳う『chiica』が活用できると期待しました。『chiica』はスマートフォンのほか、固有の二次元バーコードが印刷されたカードを使って決済することもでき、高齢者でも簡単に利用できると考えました。
「キャッシュレス化最先端」の町へ
―導入効果はいかがですか。
導入の手間がかからず、運用の仕組みが簡単であることもあり、プラットフォームには予想を超える120店舗以上が加盟してくれました。5月中旬から、全住民約7,600人にサンセットコイン1万円相当の配布を開始していますが、早速多くの住民が利用を始めています。事業者からも利用者からも、懸念していたような「面倒だ」「わからない」といった声はほとんど聞かれず、楽しんで使っている姿は印象的です。今後、本格化する観光誘致事業やふるさと納税事業との連携も検討しており、来訪者へも利用の輪を広げていく考えです。「県内最高齢」の町が、いずれ「キャッシュレス化最先端」の町となれば、大きな話題にもなるのではないでしょうか。

課題
流出超過が続いてきた当市では、域内の経済循環を高めることが課題でした。当市ではかねてより、ふるさと納税の返礼品として、市内で使える「ふるさとチョイス電子感謝券」を配布してきた経緯があり、そのプラットフォームを活用すれば、市独自の電子地域通貨が発行できると知りました。スマートフォンをもたない高齢者や子どもでもカードで決済できることから、導入を決めました。
活用状況
令和元年度は、10%のプレミアムがついた1億円ぶんの電子地域通貨1億1,000万negi(ネギー)を電子プレミアム商品券として発行し、二次元バーコードを印刷したカードか、スマートフォンを介して地域に流通させました。参加した住民は2,358人で、市内225店舗に参画していただきました。
導入効果
「negi(ネギー)」は、紙の商品券と比べて発行・流通コストを削減できました。今年で運用2年目となりますが、継続した効果が得られており、「新型コロナ」の経済対策として、飲食店や生花店での購入支援などでネギーを活用することもできました。これからもさまざまな場面で活用できるように、ネギーの普及に努めていきます。
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