
長野県上田市 塩田平土地改良区の取り組み
ため池の遠隔監視
現場の雨量と貯水量を常時把握し、ため池の水位変化が分析可能に
※下記は自治体通信 Vol.25(2020年8月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
毎年、集中豪雨や大型台風が日本列島を襲うなか、全国に点在するため池の決壊をいかに防ぐかは、ため池をもつ自治体にとって見逃せない課題となっている。こうした課題に対し、上田市(長野県)は、ため池の水位データを取得する装置を導入し、決壊を未然に防ぐ仕組みづくりに取り組んでいる。装置を導入した成果について、ため池を管理する上田市塩田平土地改良区の峰村氏に聞いた。

大規模な決壊被害に備え、職員が現場を訪れ水位を計測
―市内におけるため池の保有状況を教えてください。
上田市は、年間の平均降水量が約900mmと少なく、農村部には、農業用水を確保するために84のため池が点在しています。なかでも、昭和11年につくられた沢山池(さやまいけ)は、貯水量が約108万㎥で、上田市でもっとも大きなため池です。長野県からは「防災重点ため池」にも選定され、ひとたび決壊すると洪水被害面積が299haにのぼると想定されています。そのため、決壊を未然に防ぐ対策をかねてより行ってきました。
―どのような対策を行ってきたのでしょう。
農繁期が過ぎた9月から水位を下げ始め、10月には完全に水をなくして取水施設の点検を行っています。しかし日頃、貯水量を確認するには、その都度現場を訪れる必要がありました。このほか、沢山池は法的にダムとして扱われるため、市の職員も毎月貯水量を県に報告する必要があり、そのたびに往復1時間以上をかけて水位計を確認しに行く手間がありました。そこで我々は、これらの課題に対策を打つことにしたのです。
―どのように対処したのですか。
農業や土木工事現場における環境計測と監視の対策で実績が豊富な、ITbookテクノロジーに市が相談をもちかけ、沢山池に新たな水位観測装置を設置してもらいました。これにより、沢山池の管理者や市の職員は、現場を訪れることなく、リアルタイムでため池の水位や貯水量を確認できるようになりました。このほか、装置に搭載されている、気象観測機能にもメリットを感じています。
―詳しく聞かせてください。
沢山池は、池の底がすり鉢状となっており、形状も整形されていません。そのため、雨が降った際に時間の経過によって、水位がどの程度上昇するのかが把握しづらく、管理に苦慮していました。しかし、新たに設置した観測装置では、水位と雨量のデータを常時、同時に取得できるため、水位の上昇過程をより詳細に分析できるようになりました。


水位データの活用で、水門開閉の自動化も検討
―今後、観測装置をどのように活用していきますか。
ため池の水位を把握しやすくなったことで、水門を開閉して水位を調整する際にも、市とため池管理者との間での情報共有がスムーズに行えるようになりました。これを機に、観測装置で収集した水位や雨量のデータを、水門開閉の自動化に活かしていきたいと考えています。このほか、沢山池以外のため池にも観測装置の設置を増やし、防災やため池運用の効率化に活用していきたいですね。
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