
神奈川県の取り組み
行政課題に対する住民への行動促進①
誰もが使えるスマホアプリを活用し、社会課題の解決を「自分ごと化」させる
※下記は自治体通信 Vol.25(2020年8月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
自治体におけるさまざまな社会課題の解決には、いかに住民一人ひとりに課題を「自分ごと化」してもらい、解決に向けた具体的な行動を起こさせるかが重要となる。神奈川県では、県民のSDGs推進に向けた行動を促すために、スマホ向けアプリを活用した取り組みを開始する。取り組みの詳細について、理事の山口氏に聞いた。

県民一人ひとりの行動が、SDGs推進につながる
―神奈川県がSDGs推進に取り組んでいる背景を聞かせてください。
平成23年に黒岩知事が就任して以降「いのち輝く神奈川」を政策の基本理念に据え、その実現に向けて取り組んでいます。これは、医療、環境、エネルギー、農業、街づくりなど、生活のあらゆる分野の施策を連関させ、総合的に推進しようという取り組みで、その考えはSDGsと軌を一にするものです。平成27年に国連サミットでSDGsが採択されてからは、「いのち」を輝かせるために進めてきた施策をSDGsのコンセプトで整理し直すとともに、推進のための全庁的な体制を整え、先導的に展開してきました。こうした取り組みが評価され、平成30年には国から「SDGs未来都市」「自治体SDGsモデル事業」の両方に、都道府県として唯一選定されました。
―具体的にどのような施策を行っているのでしょう。
たとえば、民間企業に対する施策では、「かながわSDGsパートナー」という制度を実施。SDGs推進に資する事業を展開している企業をパートナーとして登録し、県内外に情報発信することで、SDGsの普及を促進するものです。
個人に対しては、ネット向け動画の配信や、学校への冊子配布などを通じ、SDGsの認知度拡大を図っています。SDGsの目標達成に向けた行動は、個々人が日常生活で実践できるものが多く、個人に対する認知拡大と、具体的な行動の促進が大切だと考えています。
―SDGsに対する認知は高まっていますか。
今年2月に東京都と神奈川県の住民を対象に行われた民間による調査では、32.9%の人が「SDGsという言葉を聞いたことがある」と回答。半年前と比べて5.6ポイント上昇しています。
しかし、認知度を性別でみると、男性が女性を約10ポイント上回る結果となっています。これは、男性の場合、仕事を通じてSDGsを知る機会が多いからと思われます。今後は、SDGsに触れる機会が少なかった層にも、さまざまな方法で認知度を高めていく必要があります。そうしたなか、県は今年3月、フェリカポケットマーケティング社と連携協定を締結。連携項目のひとつとして、「SDGsに関する活動の促進」を掲げています。
神奈川県の取り組みを、世界に広めたい
―どのような事業なのでしょう。
『ワタシポスト』というスマホアプリを通じ、県民がSDGsを「自分ごと」と捉え、具体的な行動につなげてもらう仕組みを構築します。アプリは現在、開発中ですが、「水道の水をこまめに止めた」「落ちているゴミをゴミ箱に捨てた」といった、SDGs推進につながる日常的な行動を記録する機能があります。また、「情報銀行(※)」というスキームを介して民間事業者の参画を促せるのも特徴と聞いています。ユーザーは、SDGsへの「貢献度」を日々、記録するたびに、商店で利用できるポイントがインセンティブとして付与されるのです。
※情報銀行:データ活用に関する個人との契約などにもとづいて個人データを管理するとともに、個人の指示またはあらかじめ指定した条件にもとづき、個人に代わり妥当性を判断のうえ、データを第三者に提供する事業


―アプリにどのような成果を期待していますか。
スマホアプリの利用が普及するなか、これまでリーチできなかった人たちにも、SDGsの認知を広げ、さらに具体的な行動につなげてもらえると期待しています。
国連は、「中央政府の力だけでは、SDGsを社会に浸透させるのは難しい」と認識しており、自治体が住民に対してどうSDGsの推進を広めていくかは、ひとつの課題となっています。神奈川県は昨年8月、国連開発計画(UNDP)と、SDGs達成のための連携趣意書を締結し、本県のさまざまな取り組みは世界中から注目されています。アプリを活用した県の取り組みを、日本での先進的なモデルとして成功させ、その動きを日本全国、さらには世界にも広げていきたいですね。
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