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自治体 × 民間企業 のキーパーソン鼎談

デジタル・ガバメントの実現

いま導入が急がれている、デジタルトランスフォーメーションとは

千葉市長 熊谷 俊人
広島県 総務局 統括官(情報戦略) 桑原 義幸
株式会社コンカー 代表取締役社長 三村 真宗
[提供] 株式会社コンカー

※下記は自治体通信 Vol.25(2020年8月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。


デジタル・ガバメントの実現に向け、デジタルトランスフォーメーション(以下、DX)の重要性が高まってきている。そこで今回は、積極的にDXに取り組んでいる千葉市長の熊谷氏と、広島県の桑原氏、さらに自社の経費精算・管理クラウドシステムを通じてDXを推進するコンカーの三村氏に取材。住民ニーズの観点から見たDXや、DXを推進していくうえでのポイントなどを聞いた。

千葉市データ
人口:98万2,164人(令和2年7月1日現在) 世帯数:44万6,634世帯(令和2年7月1日現在) 予算規模:8,748億9,300万円(令和2年度当初) 面積:271.78km² 概要:千葉県のほぼ中央部にあたり、首都東京都まで約40kmの地点に位置し、県内幹線道路およびJR・私鉄などの鉄道の起点および情報通信網の起終点として、県都にふさわしい要衝の地にある。「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会」の競技会場都市として、機運醸成やパラスポーツの推進、多様性の理解にもとづく共生社会の実現など、未来へ引き継がれる「レガシー」の創出・醸成に取り組んでいる。
広島県データ
人口:279万9,355人(令和2年6月1日現在) 世帯数:124万5,185世帯(令和元年10月1日現在) 予算規模:1兆7,062億8,724万5,000円(令和2年度当初) 面積:8479.64km² 概要:瀬戸内海沿岸部に向かって、中国山地と平行に高地から低地へ階段状の地形を形成しているのが特徴。海・山の豊富な自然にも恵まれ、農業・漁業も盛んであるため、「日本国の縮図」とも呼ばれる。産業は、「ものづくり」を軸として、造船・鉄鋼・自動車などの重工業から、電気機械・電子部品などの先端産業まで、バランスのとれた層の厚い産業群を形成し、世界屈指の独自技術をもつ企業や、全国的・世界的に高いシェアをもつ企業が数多くある。
千葉県
千葉市長
熊谷 俊人くまがい としひと
広島県
総務局 統括官(情報戦略)
桑原 義幸くわはら よしゆき
株式会社コンカー
代表取締役社長
三村 真宗みむら まさむね

住民参加型の行政には、DXが求められる

―住民ニーズの観点から見て、DXを導入する重要性は高まっているのでしょうか。

熊谷 高まっていますね。窓口業務の効率化といった直接的な取り組みはもちろんですが、住民ニーズに関するさまざまな情報を吸い上げ、住民参加型の行政を実現していくためにはチャネルをたくさんつくっていく必要がある。そういう意味でのDXも求められています。私が積極的に活用しているSNSは、そのひとつです。さらに、その情報を整理して、たとえばオープンデータのようなカタチで、住民のみなさまが情報を取得できるような状況をつくる必要があると考えています。

桑原 広島県で言いますと、政令指定都市の広島市を含めて23の市町があります。県民ニーズはもちろん重要ですが、約280万人の声は膨大です。そこで県としては、市町の声を拾い、いかに取捨選択して県全体の共通テーマとしてとらえるかが重要になってくるんですね。そのための情報連携の仕組みとして、DXは必須だと考えています。やはり県レベルにおけるDXの成功には、県と市町がしっかりタッグを組んで、同じ問題意識をもってやっていくことが重要になってくるでしょう。

三村 私の立場で言いますと、情報発信において、ホームページやプレスリリース、記者会見といったチャネルだとどうしても一方通行になり、血の通ったコミュニケーションができないんですね。その点、たとえば双方向性のあるSNSを活用した対話を行うと、良くも悪くもさまざまなお客さまの意見が得られます。そういった貴重な情報をくみ取り、社内で共有して次のサービス開発に活かしていく、という観点では自治体と同じくDXは重要ですね。

言葉を伝えるだけでは、現場には伝わらない

―では、DXに取り組むうえでのポイントを教えてください。

熊谷 ICT部門が主体的に取り組むのではなく、現場が主体で編み出すことですね。たとえば千葉市では、ごみ収集車にGPSを積んで、収集運搬状況をリアルタイムにチェックして回収もれの問い合わせといった住民の声に対応する取り組みがあります。これは、現場からの意見によって実現しました。そしていまでは、カメラを搭載し、児童の登下校における監視システムにもなっています。本当のDXというのは、それぞれの現場が抱えている課題を解決するために、ICTを使えば実現するんだ、という現場の考えが必要だと思っています。それが、ICT部門が主導すると、ICT導入ありきになってしまいがちなんですね。「なぜ必要か」という前提が抜けていると、ICTを使うこと自体が目的となってしまい、たいがいうまくいきませんから。


桑原 広島県では、昨年7月にデジタルトランスフォーメーション推進本部という庁内横断的な組織を新たに立ち上げましたが、私が広島県でICTに関する仕事を始めていまちょうど10年目になるんですね。そこで言い続けてきたのは「ICTを導入しよう」ではなく、「ベストプラクティスになるか」ということ。それがICT導入で実現するならやりましょう、と。結果、10年かかってやっと浸透してきたかな、という感じです。

 そして、DXに取り組むなかで新たに発信しているのは「フェイルファスト」「スモールスタート・クイックウィン」。つまり誰より早く失敗し、小さく始めて短期間で成果を出そうと。DXという言葉だけでは、現場に伝わりません。失敗を恐れず、小さな成果を体験する。それを積み重ねてこそ、現場にDXが浸透するのです。

熊谷 千葉市でもそれは同様です。小さなところからスタートして、成果が出ればそれをトップがしっかり評価する。それがだんだん大きくなり、最終的には千葉市における政策の特徴になっていく。これはDXに限らず、ほとんどの政策がこの手法をとっていますね。


出所:首相官邸「デジタル・ガバメント実行計画(概要)」

テレワークの普及が、DXの推進を後押し

―自治体は、どこからDXに取り組んでいけばいいでしょうか。

三村 これは民間企業にも言えることですが、経費精算(※)からDXを導入することをおススメしています。従来ですと、経費を使ったら、現金で払って領収書をもらってきて、領収証を添付して、経費精算申請書(※)を起票して、ハンコをもらって、という作業が発生しますが、この作業がいっさいなくなります。こうした一連の作業は、誰もがわずらわしいと感じるでしょう。そのため、経費精算から始めることで非常にたくさんの人がDXを体験できるのです。

 また、新型コロナウイルスの影響で官民ともにテレワークが進んでいます。そうした体制実現に向けた最後の障壁、“ラストワンマイル”が民間でいうところの経費精算なんですね。いま実際に、民間企業で「テレワークを実現させたい」と、当社が提供している経費精算のクラウドサービスの引き合いが急増していますし、大分市や春日井市をはじめとした、各自治体で実証実験が行われています。

※経費精算:自治体における「予算執行」と同義
※経費精算申請書:自治体における「支出明細書」と同義


熊谷 行政では、まさにその庶務事務のデジタル化が遅れているんです。日常的に行っている庶務事務にDXを取り入れることで、職員の意識を変えていくのは非常に大きなポイントですね。

桑原 バックオフィスの業務改善というのは、やはり大きなテーマでしょう。広島県では平成25年からテレワークを導入してきましたが、昨年4月のテレワーク利用が50、60人だったのに対し、今年の4月は約3,200人と急増。もちろんこれは、新型コロナウイルス感染拡大にともなう結果で、なかば強制的にテレワークを行わざるをえない職員もいました。そこで、テレワークに懐疑的だった職員も「意外とできるな」と感じていました。やはりこうして実際に体験してこそ、DXが現場に普及していくのだと実感しましたね。

体験を通じた、職員の理解が重要

―DXにおける、今後の取り組み方針を教えてください。

熊谷 やはりトップダウンやICT部門でDXを進めるのではなく、職員とコミュニケーションを図りながら現場から発案するよう仕向けることですね。真の行政DXの実現には、それが早道でしょう。

桑原 23の市町や県内企業も含め、県全体でトランスフォームする必要があると思っています。そのためにまず、広島県庁が率先してDXを進めていき、先ほど話したように小さくてもDXの成果や体験を出していこうと考えています。


三村 おふたりの話で実感したのは、体験を通じた職員のDX理解が重要だという点。当社としては、経費精算を通じてその支援を行っていきたいですね。また、ひとつの自治体での導入はコスト的に限界があります。そこで、クラウドシステムを共同利用すれば、多くの自治体がDXを進めることができます。その支援も行っていきます。


熊谷 俊人 (くまがい としひと) プロフィール
昭和53年生まれ、神戸市出身。平成13年に早稲田大学政治経済学部を卒業後、エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社に入社。平成18年にNPO法人政策学校「一新塾」に第18期生として入塾。平成19年、千葉市議選に稲毛区から出馬しトップ当選を果たす。平成21年、31歳で現役としては全国最年少(当時)、政令指定都市の市長としては史上最年少で千葉市長に就任。現在3期目。
桑原 義幸 (くわはら よしゆき) プロフィール
昭和32年、大阪府生まれ。大阪電気通信大学工学部卒業。ブリティッシュコロンビア大学留学を経て、米系IT企業やコンサルティング会社などで研究開発やシステム開発に従事。平成13年に広島県CIO(非常勤)に就任。その後、平成28年に常勤職員として、情報戦略総括官に就任、令和2年から現職。35年以上にわたって培ってきたキャリアを活かして、情報技術戦略の立案および実施、働き方改革や情報セキュリティ対策などで手腕を発揮している。
三村 真宗 (みむら まさむね) プロフィール
昭和44年、東京都生まれ。平成5年に慶應義塾大学法学部卒業後、日本法人の創業メンバーとしてSAP ジャパン株式会社に入社。ビジネス・インテリジェンス事業本部長、社長室長、CRM事業本部長、製品マーケティング本部長などを歴任。その後、マッキンゼー・アンド・カンパニー、ベタープレイス・ジャパン株式会社を経て、平成23年、株式会社コンカーに入社し、代表取締役社長に就任。
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