
兵庫県淡路市
IoTを活用した介護予防事業
データを駆使したEBPMの実践が、医療費・介護費抑制の切り札になる
健康福祉部 健康増進課 保健師 大迎 麻梨子
健康福祉部 健康増進課 保健師 小河 祐子
※下記は自治体通信 Vol.24(2020年6月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
財源・人手の不足や業務増大に直面する多くの自治体に共通の課題は、限られたリソースをいかに効率的に運用し、政策を実現していくか。そこで重要になってくるのが、EBPM(※)の考え方である。そうしたなか、淡路市(兵庫県)では介護予防事業においてEBPMを実践。IoTを導入し、データの収集・分析を通じた事業改善で効果をあげているという。同市担当者の大迎氏、小河氏にその内容などを聞いた。
※EBPM:Evidence-Based Policy Makingの略。エビデンスにもとづく政策立案のこと


体操がもたらす抑制効果が、最大で年間30万円と試算
―これまで、どのような介護予防事業に取り組んできましたか。
大迎 全国平均よりも高い水準で少子高齢化が進む当市では、介護予防事業の一環として、高齢者の体操コミュニティの形成に力を入れ、平成22年度から「いきいき100歳体操」を推進してきました。この体操は筋力やバランス能力の維持・向上ができる運動として広く全国で実施されており、当市でも現在、約120ヵ所、登録者約2,500人を数えるまでに普及しています。地域住民同士が支え合う地域コミュニティの形成に一定の成果をあげてきました。しかし一方で、課題を感じていたのも事実です。
―どのような課題ですか。
小河 体操には漠然と効果を感じながらも、それを定量的に可視化できていなかったのです。そのため、体操のさらなる普及や定着、介護予防効果の改善といった事業の発展につなげることができていませんでした。そんななか、当市では平成29年度にIoTを駆使して地域課題の解決を図る「産官学連携事業」をNTTドコモらとともに発足させました。これをきっかけに、介護予防事業でもIoTを活用する施策に着手したのです。
―詳しく教えてください。
大迎 NTTドコモの支援を受け、私たちが収集したデータは、体操への出欠情報と体力測定結果のふたつです。参加者にICカードを配付し、出欠状況をクラウド上で確認することで、地域や会場ごとの参加傾向までリアルタイムに把握できるようになりました。
一方の体力測定結果は、参加者の運動能力を把握するためのデータとなるだけでなく、参加者に印刷して手渡すことで、自分の体力の現状を客観的に把握するためのデータとなり、参加への動機づけにもなっています。そして参加率と体力測定の結果をみていくことで、効果検証にもつながっています。
小河 じつは、これらのデータ収集でもっとも大きな効果は、出欠情報と医療費・介護費の相関を分析した結果、体操がもたらす抑制効果が最大で年間30万円と試算されたことです。体操の効果が可視化された意味は大きく、その効果を詳細に分析し、さらに高めていくために、当市では介護予防事業の予算増額を決めています。
保健師の「経験と勘」を、裏打ちするデータの意義
―それは大きな成果ですね。
大迎 そればかりか、データ活用により庁内の健康事業への取り組み意識の向上と連携強化に伴い、厚生労働省の保険者努力支援制度に係る交付金が大幅に増額しました。かつて獲得ポイントが兵庫県内で下から2番目だった当市が、現在では2位にまでなっているのです。
―データ利活用の成果を今後、どのように活かしていきますか。
小河 介護予防事業においては、収集データが保健師の「経験と勘」を裏打ちする論拠となっているので、その相乗効果で事業のさらなる発展に活かしていきたいです。また、データの利活用によって職員から次々と新しいアイデアが生まれている変化にも注目しており、その成果も事業の現場に反映させていきたいと考えています。
大迎 その先に、当市がめざす「いつかきっと帰りたくなる街づくり」を実現していきたいですね。


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