
民間企業の取り組み
地域振興策の新機軸
地域ポイント制度を導入・継続するカギは、自治体の負担がない仕組みづくりにあり
営業部 部長 伊東 岳彦
営業部 営業担当 上田 麻衣
※下記は自治体通信 Vol.24(2020年6月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
さまざまな目的で、独自の地域ポイント制度に注目し、実際に取り組む自治体は増えている。そんななか、地域ポイント制度のプラットフォームを提供するグルーヴァースの伊東氏は、「地域ポイント制度に取り組もうとしてもなかなか前に進めなかったり、途中で断念したりするケースが少なくない」と指摘する。同社の伊東氏と上田氏に、地域ポイント制度の現状やそうした課題の解決方法などを聞いた。


原資確保や運営の難しさなど、各種の課題がつきまとう
―自治体における地域ポイント制度の現状を教えてください。
上田 近年のトレンドとして、健康増進が目的のイベント参加者や、省エネ家電を購入した住民に対して、地域の商店街などで利用可能なポイントを自治体が付与する取り組みが見られます。自治体にはポイント制度を通じて、「健康寿命の延伸」「環境保全」といった政策目標の実現とともに、ポイント利用による地域経済の活性化といった狙いもあります。
伊東 また、ボランティア活動や市民活動などをポイント付与の対象とする自治体が増えています。そのほか東京都では、今年1月から3月まで、時差通勤やマイバッグの持参などSDGs(※)の活動貢献に対する地域ポイントのモデル事業を実施しました。住民と行政が協働して、社会課題を解決する手段として地域ポイントを導入する動きも見られる一方、「導入したくても、なかなかできない」「導入してみたが、継続できない」と悩む自治体が多く見られます。
※SDGs:平成27年の国連サミットで採択された、国連加盟国が令和12年までの達成を掲げた国際開発目標。持続可能な世界を実現するための、17の目標を掲げている
―それはなぜでしょうか。
伊東 私は課題が4つあると考えています。それは、「ポイントの原資の確保」「協力事業者の募集」「利用促進のノウハウ」「維持管理システムの構築・運用」です。
ポイントの原資については、厳しい財政状況から、自主財源ですべて用意できる自治体は少ないです。そのため、職員が事業者を訪問して協賛のお願いをしていますが、「助成金がある間しか協力してくれない」といった悩みは多いです。
上田 そのほか、ポイント制度を多くの住民に利用してもらうにはプロモーション活動が必要。さらに、スムーズなポイント取得などのオペレーションも重要ですが、そのノウハウが自治体には不足しているため、想定していたほど盛り上がらずに打ち切りになることも。そのうえ、店舗ごとのポイント利用履歴の集計や換金作業などが必要で、その維持管理システムを構築・運用するには高い専門知識を要します。くわえて、セキュリティ対策などの運用コストもかかるといった課題があります。

―それらの課題を解決するには、どうすればいいのでしょう。
上田 自治体が直接運営にたずさわらなくても、地域ポイント制度を導入できる仕組みがあればいいのです。そうすれば、自治体は財政や業務の負担なく、地域ポイントがもたらす効果を得られます。たとえば当社では、「ウェルネス」をテーマとした、新たなポイントシステム『ウェルちょ』のプラットフォームを提供しています。
自治体の負担なく、運用できるプラットフォーム
―どんなプラットフォームですか。
伊東 住民は、ポイントの対象となる商品を購入したり、サービスを利用したりした場合、心身と社会全体の健康を維持・増進させる「ウェルネス」につながる商品を購入したり、サービスを利用したりできるポイントを受け取れる仕組みです。『ウェルちょ』の特徴は、ポイントの原資、協力事業者の募集、利用促進に向けたプロモーション、維持管理システムの構築・運用の面で、自治体にほとんど負担がかからないことです。
―なぜ負担がかからないのでしょう。
伊東 協力事業者の募集と利用促進に向けたプロモーション、維持管理システムの構築・運用は、ノウハウをもった当社が責任をもって手がけるからです。
上田 さらに、自治体の大きな負担となるポイントの原資は、ポイントの対象となる商品やサービスを提供する協力事業者が負担します。その代わりに事業者は、『ウェルちょ』の仕組みでメリットを得られるのです。まず、消費者がこの制度を利用するには専用のアプリをダウンロードし、対象の商品やサービスについている二次元バーコードを読み取ることでポイントを受け取れます。その際に事業者は、消費者の購買行動の情報をリアルタイムで取得できるため、今後の販促活動や新たな商品開発に役立てられるというわけです。実際に、広島市のある地域で行った実証実験では、食品メーカー18社が、ポイントの原資の提供事業者として参加してくれました。
伊東 一方当社は、事業者からプラットフォームの利用料を得て利益を確保します。そうした仕組みで、『ウェルちょ』は自治体の負担なく導入できるのです。

日常の買い物が「ウェルネス」につながる
―実際の運用方法について教えてください。
上田 まず、「消費者のウェルネス活動のサポート」という『ウェルちょ』のコンセプトに賛同し、自社商品の購入者やサービスの利用者に、ポイントを提供してくれる事業者を集めます。私たちは、これらの事業者を「ウェルネス応援隊」と呼び、ポイントの単位を「エール」と表現します。消費者が日常の買い物で気軽にエールを集められるよう、食品や日用雑貨品のメーカーなど幅広く募集します。さらに、外食産業、再生可能エネルギー事業者などにも声をかけ、ボランティア活動でもエール獲得につながる仕組みをつくり、地域の活性化につなげます。
伊東 消費者は獲得したエールを、病院、介護施設、マッサージ店舗などで支払いに利用できます。利用できる店舗や施設を「ウェルネスステーション」と呼び、「心の元気」といった観点から、理美容院のほか、ペットケア施設でもエールを利用できるようにします。

―そもそも、なぜ「ウェルネス」をテーマにしているのですか。
上田 近年、不規則な生活や慢性的な食生活の乱れ、ストレスで、健康上の不安を抱える消費者が増えています。さらに、今後の少子高齢社会の進展で、個人負担の医療費や介護費が増える心配も。そういったなか、エールを活用して、消費者が心身ともに元気になれるプラットフォームを用意し、地域全体が活気づくようサポートできればと考えたのです。元気な住民が多くなれば、自治体は、医療費支出負担を軽減できるメリットが得られます。
自治体の協力があることで、制度全体の活性化につながる
―今回の新たな仕組みに対して、自治体からの反応はいかがですか。
伊東 エールの原資や維持管理システムのコスト負担がかからないことに、魅力を感じてもらえています。ある自治体からは、「公共施設をウェルネスステーションとして活用できる」という話をいただきました。エールの利用先が増えれば制度全体が活性化するうえ、特に自治体の参加によって制度の信頼感が高まります。さらに、ウェルネスステーションを「自治体認定」にしてもらえれば、提携施設も増えるでしょう。なかでも病院は、政府による「かかりつけ医」の推進や、昨今の新型コロナウイルス感染症診療など緊急時での的確な対応のために、医療情報のデータベース化が望まれています。「エール」でつながる『ウェルちょ』のプラットフォームなら、利用者の病院での受診情報も共有できるため、それも可能になります。
―今後における自治体の支援方針を聞かせてください。
上田 『ウェルちょ』は、住民の健康増進だけでなく、たとえば「健康的な食生活の実践」をテーマに、地産地消の促進や食育の推進などにも取り組めるため、自治体の各部署が取り組む施策を後押しすることもできます。住民にとっては、日々の消費活動が「心と身体、そして社会の健康」につながります。ほかの自治体では『ウェルちょ』をどのように活用しようとしているか、具体的な事例も紹介しますので、興味のある自治体の方は、ぜひご連絡ください。

設立 | 平成30年11月 |
---|---|
資本金 | 4億2,500万円 |
事業内容 | 『ウェルちょ』事業の運営 |
URL | https://groovearth.com/ |
お問い合わせ電話番号 | 050-5358-0741(平日9:00~18:00) |
お問い合わせメールアドレス | support@groovearth.com |
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