
埼玉県さいたま市/愛知県東海市の取り組み
障がい者就労支援の新機軸
障がい者が自立して生活できる基盤を「農園就労」で広げていく
愛知県 東海市 市長 鈴木 淳雄
※下記は自治体通信 Vol.23(2020年4月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
令和3年4月までに、障がい者の法定雇用率(※)の引きあげが予定されているものの、障がい者の特性に適した職場はまだまだ少ないのが現状だ。そんななか、さいたま市(埼玉県)と東海市(愛知県)は、「農園就労」で障がい者の雇用を生み出す事業スキームをもつエスプールプラス社と協定を結び、雇用創出支援に取り組んでいる。両市長に、協定締結にいたった経緯や「農園就労」の効果について、話を聞いた。
※障がい者の法定雇用率 : 「障害者雇用促進法」によって一定規模以上の民間企業、地方公共団体などに義務づけられているもの。民間企業の場合、対象労働者数に対して2.2%の現行割合が、令和3年4月までに2.3%に引きあげられる

100人以上の就労が実現し、当事者から喜びの声
―さいたま市では、障がい者の就労支援にどう取り組んでいるのでしょう。
当市では、社会福祉法人やNPO法人などの協力のもと、障害者の就労訓練や働く場の提供のほか、就労相談や障害者を雇用する企業の開拓などを、「障害者総合支援センター」で行っています。「障害者の自立した生活」のひとつとして、企業への就労が考えられますが、まだまだ企業における障害者雇用は進んでいないのが現状です。
そんななか、多くの障害者に就労機会を提供する農園の存在を知り、運営主体のエスプールプラス社から話を聞くことにしました。
―話を聞いていかがでしたか。
障害者雇用を進めたい企業と、一般就労を目指す障害者をマッチさせる効果的な事業だと感じました。私は、「障害者の働く場づくりの推進」に向けて、さまざまな検討を重ねていたなか、この農園で働く障害者の定着率が高いことを聞き、障害者の働く選択肢のひとつになると考えました。そこで、同社と協定を結び、障害者に事業の案内をし、複数回にわたって説明会を開催しました。
―反響を教えてください。
説明会の参加者のなかから、「ぜひ働いてみたい」と、多数の応募があったと聞いています。昨年6月に新たに市内で開園した農園には、17社が雇用した105人が働いており、定員に達しました。
障害者本人や保護者からは、「企業に勤められて、本当に良かった」といった喜びの声があがっています。今後も障害者が生きがいをもって働けるよう、多様な就労の機会が広がる取り組みを進めていきます。

イキイキ働く姿を見て、事業の意義深さを実感
―農園による障がい者就労支援を知ったきっかけを教えてください。
当市は、さつき福祉会を中心とした社会福祉法人と連携し、障がい者が就労できる福祉事業所などを提供していますが、今後1、2年で定員オーバーになる状況でした。そこで、新たな職場の開拓を検討していたなか、同じ県内の豊明市で「農園を誘致して障がい者就労を支援している」という話を聞き、運営主体のエスプールプラス社から説明を受けて、昨年4月に視察へ行きました。
―農園の状況はいかがでしたか。
障がい者をサポートする運営スタッフとともに、100人を超える障がい者が、やりがいをもって笑顔で働いていました。企業の社員として、自立した生活を送れるだけの給料がもらえるため、「働く喜び」を感じているようでしたね。その状況を見て、「当市にも農園をつくり、障がい者の経済的自立を支援したい」と思いました。
―その後どうしたのでしょう。
この農園就労の意義を市民や関係者に説明し、市内の企業へ事業を紹介したほか、農園用地の情報を収集し、エスプールプラス社と事業推進協定を昨年8月に締結しました。締結後はさつき福祉会を中心とする市内の福祉関係者への事業説明のほか、障がい者を対象に就労希望者を募集。その結果、いまでは定員の75人が集まり、そのうち約40人は市内在住者です。
収穫された農作物を、農園を利用している企業が福利厚生として従業員に配布することで、社内コミュニケーションの活性化にもなります。今後は収穫した農作物を地域貢献や会社のPRに役立ててもらい、「自分の仕事が世の中の役に立っている」というやりがいを、多くの障がい者に感じてほしいですね。


社会福祉法人の声

充実した支援人員体制で安心して就労
今回の農園就労では、国の基準の倍以上となる「障がい者3人に対してひとり」の割合で現場管理者が配置される方針のため、安心して働ける環境だと思います。当法人でも就労希望者を募り、19人を紹介しました。彼・彼女らが農園で継続して働けるよう、これからも見守っていきます。
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