
栃木県日光市の取り組み
道路インフラの老朽化対策
懸案だった「道路附属物維持管理」は、人手とコストをかけずに解決できる
※下記は自治体通信 Vol.23(2020年4月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
平成26年に国土交通省から、道路沿いの標識や照明施設を対象とした「附属物点検要領」が出された。しかし、管内に膨大に存在する小規模附属物の位置や種類まで正確に把握している自治体は少ない。そのようななか、日光市(栃木県)では、まずはこれらの位置や写真などの基本情報を記録した「点検表」の全域整備に着手し、今後の本格点検への準備を進めている。担当者に、取り組みの内容を聞いた。

道路標識の所在すらわからず、状況を把握できていなかった
―日光市における道路インフラの老朽化対策を教えてください。
まずは、市道において平成26年度から定期点検が法令化されている橋梁やトンネルの点検を、5年ごとに行っています。その数は約630で、そのうち補修が必要な62施設への対応を急ぐとともに、現在2巡目の点検を進めています。
これにくわえて昨今、新たに対応を迫られているのが、照明や標識といった道路上の小規模附属物の点検です。平成26年6月に国土交通省が「附属物点検要領」を発表して以降も、まだ定期点検の法令化にはいたっていませんが、老朽化施設の維持管理は課題が多く、対応は簡単ではありません。
―どのような課題ですか。
市内にある道路上の小規模附属物は膨大に存在し、これらは従来、点検対象ではなかったため、正確な位置や種類、状況を把握できていなかったことです。点検を行うにはまず、これら基本情報の収集と点検表の整備が急務でしたが、市内に数千基はあると予想される小規模附属物の点検表の作成には、かなりの時間と手間が必要で、人的にも資金的にも重い負担になると頭を悩ませていました。そうしたなか、民間企業などに協働提案を募集していたところ、古河電気工業とゼンリンデータコムが開発した新たなシステムと出合い、共同での実証実験を決めたのです。
わずか4ヵ月ほどで、約1,450㎞の市道を網羅
―どのようなシステムでしょう。
AIを活用し、小規模附属物の点検・維持管理を簡便に行うものです。市販のドライブレコーダーで道路走行動画を記録し、その映像を古河電気工業にて独自のAIで解析し映り込んだ小規模附属物を特定。取得した緯度・経度や全景写真の情報をもとに、点検表を自動作成します。その後の現場点検で撮影した写真を追加で取り込めば、点検表が負担なく完成します。


―実験の結果はいかがでしたか。
まずは案内標識と警戒標識を対象に、市街地のみならず山間の地域も走行した結果、非常に簡便に、しかも高い精度で検知できました。点検表の作成まで自動化されるため、手作業で行う場合と比較して1割以下の時間で完了できる見込みです。大幅な省力化と低コスト化が期待できると判断し、市内全域の点検表整備を令和元年10月から開始しました。
―導入効果を聞かせてください。
道路走行動画の記録にあたっては、画像品質を維持するため、悪天候の日を避けたにもかかわらず、わずか4ヵ月ほどで約1,450㎞におよぶ市道を網羅できました。動画から取得した基本情報をもとにできあがった施設の点検表は、道路インフラの安全性を担保するうえで重要な基礎データとなり、市にとっての貴重な資産にもなります。この点検表をもとに現場点検を行えば、今後も効率よく点検サイクルを回せると期待しています。
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