
兵庫県芦屋市の取り組み
公共施設マネジメントの推進
「維持管理情報の一元化」を端緒として、最重要課題である施設の「最適配置」に着手
※下記は自治体通信 Vol.22(2020年2月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
少子高齢化や人口減少がさらに深刻化すると予想されるなか、多くの自治体が方針として掲げる「公共施設の統廃合」は、最重要政策のひとつといえる。今後、本腰を入れた取り組みを進めていくにあたって、芦屋市(兵庫県)では、公共施設等総合管理計画の実施に向けて包括管理を導入し、その第一歩を踏み出した。担当者に、包括管理を導入した背景や期待する効果などを聞いた。

築30年超の施設が約40%。懸念は多額の老朽化対策費
―芦屋市が掲げる公共施設の管理・運営方針を教えてください。
市が保有する施設のうち、築30年を超える施設の床面積は全体の約40%あり、老朽化がさらに進んでしまえば、多額の維持管理・更新費用が必要となります。そこで、平成29年に策定した公共施設等総合管理計画では、今後の人口減少も見すえて、「官民にとらわれない施設の効率的運営と最適配置」を最重要課題として検討する方針を定めました。
―それをどうやって進めていくのでしょう。
施設の最適配置を進めるには、市が保有する施設の維持管理状況を統合的に把握し、財政状況と連動させながら管理・運用する「施設マネジメント」の視点が必要です。しかし、本市では各施設の所管課が維持管理業務を行うため、それらの情報が集約されていませんでした。そこで、平成29年度に整備した施設カルテに合わせて、維持管理業務を包括して行うことが必要だ、と。そうすることで情報が集約され、施設の老朽化状況や大規模修繕の優先順位などが相対的にわかるため、施設の最適配置の検討がスムーズに進むと考えたのです。その実現に向けて、従来の維持管理体制を見直しました。
―どのように見直しましたか。
これまで、13課で行っていた53施設の維持管理業務を、専門事業者に包括的に委託することにしました。専門事業者に任せることで、情報を集約できるだけでなく、維持管理のレベルが向上し、施設の長寿命化が図れるという期待もあったからです。
委託事業者には、プロポーザルの結果、ほかの自治体で包括管理の実績があり、公共施設マネジメントへの積極的な協力にも期待して、日本管財を選定しました。そのうえで、平成31年4月から包括管理を導入しています。

業務負担が大幅に減ったぶん、行政サービスの拡充を図る
―包括管理の内容について教えてください。
施設の巡回・点検業務のほか、130万円未満の小修繕改修なども包括管理で対応します。これらの業務には、見積もり合わせや起案、支払い業務など煩雑な作業が数多く発生し、過去の実例でいえば、契約件数は約1,100に。これを包括管理によって一本化できます。そのぶん、職員にかかっていた業務負担を大幅に減らせるため、施設の将来の方向性を決める個別施設計画の策定や、子育て、福祉など住民ニーズが高まっている行政サービスに職員を振り向けられます。実際に、今回の包括管理で、これまで維持管理業務に携わっていた数人の職員が、ほかの部署に異動して活躍しています。
―今後、施設の最適配置をどのように進めていきますか。
将来的な施設の必要性や地域でのニーズなどを総合的に勘案し、施設の統廃合、転用、建て替え時や大規模改修時における複合化などを進めたいと考えています。そのためには、包括管理によって各施設の情報を正確に把握することが必要です。維持管理にかかるプロの事業者と二人三脚で、公共施設マネジメントの取り組みを進めていきます。