
※下記は自治体通信 Vol.20(2019年10月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

■全国の実証実験の取組まとめはコチラ
3つの技術パターンを検証
―多摩市がRPAの導入を考えた背景はなんだったのでしょう。
当市は、日本の高度経済成長を支えた「多摩ニュータウン」の中心地として発展してきました。市制は、多摩ニュータウンの入居開始と同じ昭和46年に始まっており、2年後に市制施行50年を迎えます。団塊の世代が多い住民構成は当市の特徴であり、超高齢社会では行政にかかる期待や果たすべき責任は非常に重い。それに対して、新しいアイデアや能力の発揮を期待したい市職員の業務負担は年々増しており、課題を感じていました。RPAを活用した定型業務の自動化はその課題解決の一助になるのではと期待し、この3月から実証実験に着手したのです。
―どのような実証実験を行ったのですか。
当市では、RPAのみならず、OCR(※)と組み合わせた際の導入効果も検証しています。OCRは、定型様式上の文字を読み取る「従来型OCR」のほか、項目名や値をAIの技術を用いて紐づけし、データ化する「項目認識AI-OCR」の2つを採用。RPA単独と合わせ、3つの技術の組み合わせを検証しました。
※OCR:Optical Character Recognitionの略。光学的文字認識。手書きや印刷された文字を、光を当てて読み取り、デジタル化する技術
―3つの技術を検証した理由はなんですか。
より広い範囲の業務でRPAの横展開を図り、自動化の効果を最大限にえたいと考えたからです。
RPAを活用するためには、申請内容などをデジタル化する必要がありますが、当市の定型業務の多くは紙の書類を前提としており、そこが障害となってRPAの適用業務はじつはさほど多くないのが実態です。もしOCRが活用できれば、定型様式の書類を用いている業務にRPAの適用が可能になり、さらにAI-OCRを活用できれば準定型様式の書類を用いた業務へと適用範囲を一気に広げることができるでしょう。
RPA活用のポイントは、既存システムとの連携
―OCRやAI-OCRとの連携では、どのような難しさがありましたか。
ひとつには、OCRやAI-OCRをどのような書式に適用できるかの見極めは、RPAの効果検証とは別の難しさがあったようです。また、実証実験では3つの技術に最適と思われる業務をそれぞれ選定した結果、3業務で使用する既存システムも既存ベンダーもまったく別々のものとなってしまいました。庁内でのRPA活用では、こうした既存システムへの適合性がポイントになることも想定していたので、そのシステム間連携についても検証項目にくわえました。そのうえで、RPAには多くのメーカーのソフトウェアと連携が図れる製品を選定しています。
―検証結果はいかがでしたか。
RPA単体、RPA+OCR、RPA+AI-OCRの3技術での時間削減効果は、それぞれ17%、62%、14%という結果がえられました。OCRやAI-OCRの読み取り精度も想定以上に高かったと聞いています。ほかの自治体の結果よりは小さい数字に思われるかもしれませんが、当市の場合、RPAの導入準備に伴う付加業務もくわえて算出しているため、より実際的な数字であり、現場では十分に高い効果を実感しているようです。
また、この数字以上に実感している効果があります。それは実験に参加した担当課の若手を中心に意識の変革が図られ、庁内にRPAの効果を広く伝達するエバンジェリストの役割を担う素地ができたこと。これも3つの技術を検証し、RPAの適用可能性が大きく広げた成果といえますね。


―今後のRPA活用ビジョンを聞かせてください。
RPAの実証実験は、市職員が業務や働き方を見直すきっかけになっているようです。今後は、全庁規模で積極的にRPAの導入を進めていく考えで、本格運用とそのための人材育成の事業予算が6月議会で承認されたところです。RPA導入をひとつの契機に、市民の期待に応え、満足度を高める行政サービスを提供できる環境をしっかりと整えていきたいですね。
「自治体通信オンライン」の最新記事や、イベント情報などをいち早くお届けします。

この記事が気に入ったら
いいねをお願いします!
関連記事記事をすべて見る
「東京都」カテゴリーの記事



「富山県」カテゴリーの記事



「大分県」カテゴリーの記事



「総務・人事」カテゴリーの記事










「情報政策」カテゴリーの記事









「税務・収納」カテゴリーの記事










※このサイトは取材先の企業から提供されているコンテンツを忠実に掲載しております。ユーザーは提供情報の真実性、合法性、安全性、適切性、有用性について弊社(イシン株式会社)は何ら保証しないことをご了承ください。自己の責任において就職、転職、投資、業務提携、受発注などを行ってください。くれぐれも慎重にご判断ください。
自治体の取り組みを探す
- 課題から探す
- 地域から探す

自治体通信は経営感覚をもって課題解決に取り組む自治体とそれをサポートする民間企業を紹介する情報誌です。
自治体関係者の方に無料配布しております。
自治体通信への取材希望の方
自治体通信編集部では、「自治体の"経営力"を上げる」というテーマのもと紙面に登場いただける自治体関係者・自治体支援企業の方を募集しております。
取材のご依頼はこちら- 地域別ケーススタディ
-
- 課題別ケーススタディ