
窓口業務に自動案内システムを導入し まずはオンライン申請の下地をつくる
国会に提出された『デジタル手続法案(※)』では、努力義務ではあるものの、自治体に行政手続きをオンライン化することを求めている。今後、その実現に向けた取り組みが自治体の間で推進されることになるなか、「まずは準備として進めるべきことがある」と語るのは、行政手続きのオンライン化を推進するグラファー取締役の井原氏。同氏に、その詳細を聞いた。
※下記は自治体通信 Vol.18(2019年6月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
※デジタル手続法案: 情報通信技術を活用し、行政手続きの利便性向上や効率化を図ることを目的とした法案

―行政手続きのオンライン化を進めるうえで、自治体はなにをすべきでしょう。
オンライン化のためには、システムの構築や業務フローの大幅な見直しが必要なので、いきなり進めるのは難易度が高い。そこで、その準備から始めるべきです。たとえば、転入、転出などのライフイベントにかんする手続きでは、住民の状況に応じた必要な手続きを正確に伝えるのが難しい。そういった状況から改善すべきです。
―なぜそういう状況なのですか。
窓口や担当課が多岐にわたるからです。たとえば転入手続きの場合、「加入保険の種類」「養育中の子どもあるいは国民年金受給者の有無」「保育園への入園希望」など個別の状況により、必要な手続きは変わります。その内容を、ホームページ上でわかりやすく伝えるには限界がある。結果的に「窓口での問い合わせ」に誘導する自治体が多いのです。
―その状況を改善するにはどうすればいいのでしょう。
自分にとって必要な手続きを、住民が簡単に検索できるようにすべきです。たとえば当社では、ライフイベントにともない必要となる手続きを、住民がパソコンやスマートフォンで確認できる『Graffer手続きガイド』を開発しました。加入保険の種類など画面上に表示される質問をチェックしていけば、数分で必要な手続きや申請書類、持ち物などが表示される。そのため、住民はわざわざ窓口に問い合わせずにすみます。
スマホから手続き書類を作成 窓口での手書き入力が不要に
―自治体はどのような準備をすれば導入できますか。
当社がエクセルシートにまとめた手続き内容を、担当者にレビューしてもらうだけです。あとは、当社のシステムがそのシートを読み込めば、導入が完了します。自治体ごとにシステムを開発するわけではないため、数日で利用可能に。手続き内容が変更になった場合でも、エクセルシートを書き換えて読み込めばすぐに反映されます。
―自治体へのさらなる支援策があれば教えてください。
『Graffer手続きガイド』で探し出した申請書類を、オンライン上で作成できる『Graffer窓口印刷』のサービスを始めました。画面上のフォームから入力した「氏名」「住所」「生年月日」「電話番号」の情報が、申請書類に反映されます。入力後、画面上に表示される二次元バーコード(※)を自治体に設置した専用端末にかざせば、入力内容が反映された状態の申請書類が出力される。そのため、住民は窓口で氏名などを繰り返し手書き記入する負担が軽減されます。
将来的には、『Graffer手続きガイド』に、マイナンバーカードを用いた公的個人認証機能をつける予定です。そうすれば、『Graffer窓口印刷』で作成した申請書類をオンラインで提出できるようになる。『Graffer手続きガイド』と『Graffer窓口印刷』は、行政手続きのオンライン化に向けた第一歩になると考えます。

※二次元バーコードによる情報の取り込み: 住民が入力した個人情報はサーバに残さず、住民本人が保持する二次元バーコードに保存するため、セキュリティ上の問題が発生しにくい特徴がある

人口: 17万2,321人(平成31年4月1日現在)/世帯数: 7万4,622世帯(平成31年4月1日現在)/予算規模: 1,125億 9,803万4,000円(令和元年度当初)/面積: 39.67km² /概要: 横浜市の南西に位置し、南は相模湾に面する。源頼朝が幕府を開き、日本で初めて武家による政権が築かれた場所。日本三大八幡宮のひとつである鶴岡八幡宮は源氏の氏神として有名。
―鎌倉市では行政手続きのオンライン化に向けてどのような取り組みを行っていますか。
まず当市では、市民からの市政に対する意見募集や行政文書公開請求などをオンラインで受け付ける取り組みを行っています。さらに今後、行政手続きのオンライン化を本格化していくために、『Graffer手続きガイド』を導入したのです。
現在、ライフイベントにかんする手続きが月間平均約1,500件発生するなか、『Graffer手続きガイド』へのアクセスは月間1,000ユーザー前後。導入から数ヵ月がたち、アクセス数は順調に伸びています。多くの市民が、必要な手続き内容を事前に調べてから来庁してくれているようです。
―今後の方針を聞かせてください。
かりに行政手続きのオンライン化を一気に進めようとした場合、現状の手続き内容を大幅に変える必要があるので、市民も職員も急激な変化に対応できないおそれがあります。その点、『Graffer手続きガイド』と『Graffer窓口印刷』は、簡単な操作だけで市民は利用できます。そして、自治体が導入する際も、職員にはこれまでの業務フローを変更する負担がかかりません。オンライン化を進めるための第一歩になるシステムだと考えています。
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井原 真吾(いはら しんご)プロフィール
昭和62年、兵庫県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒。平成22年、株式会社リクルート(現:株式会社リクルートホールディングス)へ入社。システム開発のほか、ベトナムでのオフショア拠点の立ち上げに携わる。データ戦略業務などにも精通。平成29年、株式会社グラファーへ参画。
株式会社グラファー
設立 | 平成29年7月 |
---|---|
資本金 | 5,000万円 |
事業内容 | 行政インターフェース事業、行政ソリューション事業、データプラットフォーム事業、マーケティングソリューション事業 |
URL | https://graffer.jp/governments |
お問い合わせ電話番号 | 050-7112-5524(平日10:00〜17:00) |
お問い合わせメールアドレス | supportgov@graffer.jp |
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