高知県高知市 の取り組み

小学校1年生から中学校3年生までの間、身長や体重、視力、聴力、心電図の情報や歯の状態など毎年細かく記録される学校健診。近年、この情報をデータベース化し、個人にフィードバックするほか、自治体で情報を蓄積して健康施策に活かそうという動きがみられる。高知市(高知県)もそのひとつだ。担当者である同市教育委員会の谷氏に、その経緯や活用法を聞いた。
※下記は自治体通信 Vol.16(2018年12月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
高知県高知市データ
人口: 33万471人(平成30年10月1日現在) 世帯数: 16万3,552世帯(平成30年10月1日現在) 予算規模: 2,656億円(平成30年度当初予算) 面積: 308.99km² 概要: 四国南部のほぼ中央に位置し、市の北方には急峻な四国山地があり、その支峰である北山に源を発する鏡川の下流域を中心に都市が形成されている。平成10年4月には四国で最初の中核市に移行するとともに、平成17年1月に鏡村・土佐山村、平成20年1月には春野町と合併し、中山間地域、田園地域、都市部のバランスが取れた都市に。坂本龍馬や板垣退助をはじめとする、多くの偉人が誕生したことでも有名。
―高知市が、学校健診情報のデータベース化に取り組んだ背景を教えてください。
以前から日本全国における学校健診情報のデータベース化に取り組んでいる、京都大学教授の川上浩司先生から、平成28年に提案を受けたのが直接のきっかけです。
そもそも、小・中学校で記録された学校健診情報のほとんどは紙ベースで蓄積され、卒業後は次の進学先で施錠して保管。5年間管理した後に、破棄されるというのが一般的でした。「せっかく記録したデータを破棄してしまうのはもったいないので、それをデータベース化してちゃんと活用していきましょう」というのが、提案の趣旨でした。
当市としても、平成9年から「健康管理システム」という独自のシステムを構築し、平成12年から運用を開始。ほかの自治体に先駆けて、学校健診情報の電子データ化を進めてきました。ただ、依然として紙で作業している現状があったりして、100%電子データ化されるようになったのはここ数年のことなんです。
しかもこの取り組みは、どちらかというと事務作業の軽減や転記ミスの防止などがおもな目的。身長と体重の成長曲線を作成するのを除き、原則として単年度単位でしか情報がチェックできず、「蓄積情報を分析して活用する」という発想は、高知市全体としてはありませんでした。
そのため当市としても「情報を可視化して活用するのは重要」と判断し、検討を始めたのです。 「無償のうえに時間や人員の手間もかからない」というのも、大きな要因になりましたね。
―その後、導入はスムーズに進んだのでしょうか。
正直、簡単にはいきませんでした。いちばんの問題になったのは、「子どもの個人情報は守られるのか」という点。そこで「高知市個人情報保護運営審議会」に議題をあげ、個人情報が適正に取り扱われているかの判断を仰ぎました。
審議会では、さまざまな意見が交わされましたね。ただその都度、データベース化の実務を行う学校健診情報センターのスタッフと頻回にやりとりを行い、ひとつずつ問題をクリアしていきました。「どのように個人情報は守られるのか?」「独自の技術で個人情報はもち出さないようになっています」、「データベース化を嫌がる家族がいたらどうする?」「強制ではないため、個別に断ることも可能です」といった具合です。議論が白熱し、再審議までいきましたが、最終的に条件つきで許可をえることができました。
大きなトラブルもなくスムーズに実施できた
―そして、平成29年度からデータベース化を実施したのですね。
ええ。実作業としては、学校健診情報センターのスタッフが各学校に機材をもち込んでデータベース化の作業を行ったのですが、規模が大きい学校でも1時間かからない程度。データベース化の事前通知も、学校健診情報センターが保護者あてなどの通知文例を一緒につくってくれたので助かりましたね。実施にあたって、保護者からの強い反対もありませんでした。
―今後、学校健診情報のデータベースをどのように活用していきたいですか。
まだ1年分しかとっていませんが、何年かデータが積み重なっていけば、高知市の傾向がみえてくるはずです。その結果、「健康施策を立案するうえでの大きな参考になるのでは」と考えています。また、むし歯ひとつとっても各学校によって差があります。市側が対策を練るのはもちろんですが、学校が個別に対策を行う指標にもなっていくでしょう。
さらに、個人の蓄積データは子どもたちにも還元されます。それを家にもち帰って保護者と一緒にみることで、「やっぱり健康って大事だね」と家族で話し合うきっかけになれば、と。じつは、当市はがん検診の受診率が全国的にみてあまり高くないんです。そのため、親子の会話を通じて、がん検診への受診促進につながることも期待しているのです。
子どもはもちろんですが、大人の健康促進に対しても、学校健診データを大事に活用していきたいですね。

[2]学校検診情報センター_ニュースレター2018年版
[3]学校検診情報センター_ニュースレター2017年版
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