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最適な情報伝達手段を見きわめ災害から住民を守る

栃木県日光市 / 福島県二本松市 / 愛知県豊田市 の取り組み

最適な情報伝達手段を見きわめ災害から住民を守る

最適な情報伝達手段を見きわめ災害から住民を守る

日光市 行政経営部 総務課 防災対策室 副主幹 西村 守
支援企業:株式会社九電工
 営業本部 情報通信部 情報通信1グループ 課長 淵上 友広
 営業本部 情報通信部 部門支援チーム 後藤 晃宏

[提供] 東京テレメッセージ株式会社

平成34年11月―。総務省が定めた防災行政無線の新規格への移行期限だ。自然災害が多発し、防災情報伝達の重要性があらためて見直される昨今、この期限を意識しながら、「最適な伝達手段」を模索する自治体が多い。そうしたなか、にわかに注目を集めているシステムがある。「280MHz帯デジタル同報無線システム」だ。いち早く導入に踏み切った日光市(栃木県)の担当者に、その背景を聞いた。

※下記は自治体通信 Vol.14(2018年8月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

栃木県日光市データ

人口: 8万3,016人(平成30年7月1日現在) 世帯数: 3万6,501世帯(平成30年7月1日現在) 予算規模: 712億1,341万8,000円(平成30年度当初) 面積: 1,449.83km² 概要: 栃木県の北西部に位置し、北は福島県、西は群馬県に接している。日光火山群と鬼怒川上流域、大谷川流域等に広がる区域は、県土の約4分の1を占める。現在の日光市は、平成18年3月20日に、旧今市市、旧日光市、旧藤原町、旧足尾町、旧栗山村の2市2町1村の合併により誕生。豊かな自然環境と貴重な歴史的・文化的遺産、随所に湧出する豊富な温泉など、恵まれた観光資源を基盤として発展してきた。

―これまでどのように防災対策を進めてきたのでしょう。

 当市は平成18年の5市町村合併により、市域が全国で3番目に広い自治体となりました。それ以来、防災対策を考えるうえで、この広い市域をどうカバーするかが主眼となってきました。市内には山間部が多く、県内でもっとも多い935ヵ所の土砂災害危険箇所があります。平成27年の関東・東北豪雨では甚大な被害を受けた地域もあり、その教訓から、迅速かつ明瞭な防災情報の伝達は特に重視してきた課題でした。

―防災情報の伝達では、どのような検討をしてきたのですか。

 旧5市町村は無線設備の有無も規格もバラバラだったので、合併直後から同報無線の一本化は検討してきました。しかし、広い市域での無線整備には莫大な予算がかかります。さらに、山間部が多い当市では電波の不感地帯ができやすいという制約もあります。そうした地域には従来、戸別受信機を配布してきましたが、利用者から「内容が聞きとれない」という声が少なくなかったのも事実です。こうした課題を念頭にさまざまな手法を比較検討した結果、280MHz帯デジタル同報無線システムを選定したのです。当時はまだ自治体での導入事例がほとんどなかったシステムでした。

―選定理由を教えてください。

 まずは、電波出力の強さです。280MHz無線は電波の免許主体が民間企業です。そのため、隣接自治体に対する電波干渉を心配する必要がなく、従来の防災行政無線よりも高出力での発信が認められています。つまり、不感地帯ができにくいのです。また、出力が高いため中継局の数を減らせるので、整備費用を大きく抑えることができます。

地理的制約の多い場所でも 成功した280MHz無線

―実際の整備はどう進めてきたのでしょう。

 平成25年に最初の基本計画を策定し、その後修正をくわえ、平成27年から設計、翌28年から2ヵ年で市内299ヵ所に屋外拡声子局を設置し、戸別受信機は約3000台配布しました。

―導入効果はいかがですか。

 屋外スピーカー、戸別受信機いずれも、利用者からの「聞きとれない」という声はなくなりました。地理的な制約の多い当市で運用が成功したことで、多くの自治体から関心を集めており、当市への視察なども増えています。280MHz帯無線は新しいシステムなので、まだまだ改良が進むと期待しています。実際に先だって、事業者の東京テレメッセージに電気料金の抑制を要望したところ、屋外拡声子局の消費電力を抑え、電気料金を大幅に削減する技術提案をいただき、大変助かったところです。

―自治体をめぐる防災無線整備のトレンドはなんでしょう。

淵上:無線技術の進展を受けて、多くのソリューションが選択肢として登場するなか、自治体ではどのシステムが最適なのかを慎重に検討し直す傾向がみられます。その結果として、従来の60MHz防災行政無線をデジタル化する代わりに、新たに280MHz無線に関心をもつ自治体が出てきています。

後藤:280MHz無線には、特性上、大きく2つの優位性があります。第一に、電波が建物内に浸透しやすい周波数特性があること。第二に、最大250Wの高出力で電波を送出できること。それにより、中継局や送信子局の設置数が減らせる、戸別受信機の外部アンテナ工事が不要になる、といったコスト削減の効果も生み出しています。

―280MHz無線の導入は増えていますか。

後藤:はい。なかには、屋外スピーカーの不明瞭な音声に住民の不満が高まり、60MHzでデジタル化を完了したにもかかわらず、280MHz無線を導入し直した自治体もあるほどです。

淵上:音声を間引いて飛ばす60MHz無線に対して、280MHzは文字を飛ばして、受信側で音声合成する仕組みなので、音声が明瞭に聞こえるのです。また、戸別受信機には外部アンテナや工事が不要。戸別受信機の導入コストを比較すると、両システム間で数倍の価格差が発生します。その結果、デジタル化を機に多数の戸別受信機を導入する計画をもつ自治体では、280MHz無線をあらためて導入する例が増えています。


栃木県日光市 / 福島県二本松市 / 愛知県豊田市 の取り組み

最適な情報伝達手段を見きわめ災害から住民を守る

地域に適したシステム選びで防災情報伝達の完成度を高める

二本松市 市民部 生活環境課 市民生活係 主査 菅野 文幸
支援企業:株式会社NHKアイテック 東北支社 技術部長 岩西 勝之

[提供] 東京テレメッセージ株式会社

地形や区域面積といった地理条件、人口分布、予算規模……。各自治体が抱えるさまざまな条件によって、なにが最適な防災情報手段となるかは異なる。そうしたなか、市の事情を鑑み、周辺自治体の視察などを経て、独自に「280MHzデジタル同報無線システム」を選定したのが、二本松市(福島県)だ。ここでは、同市の担当者である菅野氏に、システム選定の経緯などを聞いた。

※下記は自治体通信 Vol.14(2018年8月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

福島県二本松市データ

人口: 5万5,165人(平成30年7月1日現在) 世帯数: 1万9,918世帯(平成30年7月1日現在) 予算規模: 522億3,787万3,000円(平成30年度当初) 面積: 344.42km² 概要: 県都福島市と郡山市の間に位置し、市の中心から国道4号で福島市、郡山市へともに約30分程度の距離にある。地形的には、西に標高1,700mの安達太良連峰、東に阿武隈山系を望み、その中央を阿武隈川が流れ、東西に約35km、南北に約17kmと横長の地形になっている。

―これまでの二本松市の防災対策について教えてください。

 当市では備えるべき災害としておもに3つあります。1つ目は活火山である安達太良山の活動による火山災害。2つ目は、市内を縦断する阿武隈川などを起因とする水害。そして3つ目が山間地域における土砂災害です。これらの災害に対する対策をハード・ソフト面で進める一方で、防災情報を市内全域に迅速に伝達する無線整備も検討してきました。なぜなら、過去の災害をみてもわかるとおり、初動の情報伝達が重要だからです。平成17年12月に4市町が合併して誕生した当市には、合併前から防災無線が整備されていた地域もありましたが、山間部では不感地帯も多く、「聞きとりにくい」という声もあり、対策が急務でした。

―どのように無線整備を進めたのでしょう。

 費用面の制約などから、なかなか計画は進みませんでしたが、東日本大震災の教訓、新スプリアス規格への対応、さらには国の財源措置の後押しもあり検討を本格化させました。60MHz無線のデジタル化、280MHzデジタル同報無線の導入、コミュニティFM方式などを比較検討した結果、平成28年に280MHz防災無線システムの導入を決めました。

―導入の決め手はなんだったのですか。

 2つあります。第一に、電波の出力が高く、電波の不感地帯を減らせることです。先行導入した自治体を視察したところ、少ない送信設備で広域をカバーでき、音声も明瞭に伝わる利点を知りました。細長い市域や多くの山間部をもつ当市に最適なシステムだと感じました。実際に当市では、わずか1ヵ所の送信局で市内全域をカバーできています。

―もう1つの理由はなんですか。

 導入費用の安さです。送信設備の簡素化にくわえ、戸別受信機の安さが魅力でした。出力が高く、住居内への浸透性も高い280MHz無線は、戸別受信機に外部アンテナが基本的に不要です。そのため、アンテナ工事費も含めた戸別受信機の導入費用は、1台あたり3分の1以下に抑えられます。約9000台の配付を計画していた当市にとって、この差額は大きく、280MHzシステムでなければ、導入できる数も少なかったでしょう。

「防災無線が受信できない」という声は1件もない

―導入効果はいかがでしょう。

 うれしいことに、今年4月の運用開始後、「防災無線が受信できない」という声は受けていません。受信状況の良さと災害への意識の高まりから、戸別受信機に対する住民の関心も日に日に高まっており、当初の想定を超える申し込みをいただいています。そこで平成30年度は数千台の追加発注を予定しています。今後も多くの住民に戸別受信機を配付して、災害への備えに役立てていきたいですね。

―二本松市での整備では、どのような支援をしたのでしょう。

 技術的な検討のほか、各種設備の設置計画の見直しなど、広く支援しました。二本松市の場合、地元消防本部がもつ基地局の鉄塔を借りてアンテナを建設。送信局も消防設備に隣接して設置しました。当初、消防本部では消防無線が干渉されるのではないかという不安があったようでした。そこで当社が二本松市の協力のもと、干渉検討書を作成し、提示したほか、280MHz電波を発信しての現地確認も実施することで、その不安を解消。280MHz同報無線への理解をいただい
たうえで、整備を進めることができました。

 さらに、送信局舎建設にあたっては、地盤改良や雷害防止など当初の想定以上の対策が必要になりましたが、柔軟に対応。そのうえで着工から戸別受信機の配布まで、短期間で完了させることができました。

―防災情報の伝達手段を整備する際に重要なポイントはなんでしょうか。

 各自治体の事情にあった最適なシステムを自らの目と足で調査し、選定することです。近年は、スマートフォンのほかさまざまなデバイスが普及しており、生活スタイルが多様化しています。最適な情報伝達手段のあり方も変わってきています。また、住居の気密性が向上し、屋外無線がすべての場面をカバーできるわけではありません。

 これまでは防災情報の伝達手段といえば、60MHz防災行政無線が主流でした。しかし、最近では、電波特性や費用対効果に優れた280MHz同報無線に対する問い合わせが徐々に増えています。防災無線の整備・更新を考える自治体のみなさんは、ぜひ検討してみてはいかがでしょう。


愛知県豊田市の 取り組み

最適な情報伝達手段を見きわめ災害から住民を守る

「280MHzデジタル同報無線」が実現するだれもが情報を得られる環境

豊田市 地域振興部 市民安全室 防災対策課 主事 近藤 昭仁
[提供] 東京テレメッセージ株式会社

ここまで見てきたように、防災行政無線の更新に際し、280MHzデジタル同報無線システムの特性に注目し、導入を決めた自治体は多い。だが、なかには、すでに既存システムのデジタル化が完了していたにもかかわらず、新たに導入を決断した自治体もある。そんな自治体のひとつが、豊田市(愛知県)だ。決断の背景とは、なんだったのか。防災対策課の近藤氏に話を聞いた。

※下記は自治体通信 Vol.14(2018年8月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

愛知県豊田市データ

人口: 42万6,003人(平成30年7月1日現在)世帯数: 18万276世帯(平成30年7月1日現在)予算規模: 2,887億5,318万円(平成30年度当初)面積: 918.32km²概要: 愛知県のほぼ中央に位置し、愛知県全体の17.8%を占める広大な面積をもつ。全国有数の製造品出荷額を誇る「クルマのまち」として知られ、世界をリードするものづくり中枢都市としての顔をもつ一方、市域のおよそ7割を占める豊かな森林、市域を貫く矢作川、季節の野菜や果物を実らせる田園が広がる、恵み多き緑のまちとしての顔をあわせもっている。

―豊田市では、早くに防災行政無線のデジタル化を終えていたと聞きます。

 当市では、平成19、20年で従来のアナログ防災行政無線網をデジタル移行し、豊田市防災行政無線システムを整備しました。合併による市域の拡大を受け、防災情報をもれなく伝達できる体制を整えるため、デジタル化にいち早く着手しました。合併で新たに加わった山間部などは、もともと屋外放送が聞こえづらい地理的環境にあったことから、登録制メールやホームページなど複数の手段を用いた情報伝達を実施してきました。

―それにもかかわらず、新たなシステムを導入した背景はなんだったのでしょう。

 基幹として整備した防災行政無線が、山間部はもとより、音達エリア内でも天候状況などによっては「屋外放送が聞こえない」という声が少なくなかった背景があります。悩ましかったのは、こうした課題に対応するための登録制メールやホームページでの情報伝達が、高齢者などには扱いづらいものであったことです。そこで平成28年度に、現状の情報伝達を補完する新たな手段について、複数のシステムで比較検討を実施しました。

―そのなかから、280MHzデジタル同報無線を選定した理由を教えてください。

 最大のポイントは、電波の到達性です。280MHzの電波は、その出力の大きさや特性上、広範囲かつ建物内への電波到達に優れています。電波の到達シミュレーションも実施しましたが、市域を効率的に100%カバーできるのは、280MHzデジタル同報無線だけという結果が出ました。

 また、システムの簡易性も大きな要因でした。ほかのシステムでは、複雑なシステム構成に対応した基盤整備に膨大な費用と期間を要します。280MHzデジタル同報無線はシステム構成がシンプルなため、整備工事を簡易・低廉に行うことができました。

費用に見合った効果はある

―整備に際し、「二重投資」に対する懸念はありませんでしたか。

 たしかにありましたが、市民が「情報を得たくても得られない」という環境の解消は避けられない課題でした。また、280MHzデジタル同報無線の維持管理費はかなり低く抑えられるので、長い目でみたときに、費用に見合った効果は得られるとの判断にいたりました。

 280MHzデジタル同報無線の防災ラジオは、外部アンテナが不要で価格も安く、市が一定額を補助することで、購入を希望する市民の費用負担を最小限に抑えることができました。今後は市民の要望に応じ、購入希望のあった台数はすべて用意していく予定です。280MHzデジタル同報無線の導入により、だれもが情報を得られる環境整備は大きく前進したと考えています。


栃木県日光市 / 福島県二本松市 / 愛知県豊田市 の取り組み

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防災無線整備のキーワードは2つ 「費用対効果」と「戸別受信機」

東京テレメッセージ株式会社 代表取締役社長 清野 英俊
[提供] 東京テレメッセージ株式会社

※下記は自治体通信 Vol.14(2018年8月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

―防災無線を整備する自治体にとって課題はなんでしょう。

 重要なキーワードは2つあります。それは、「費用対効果」と「戸別受信機」です。かつては防災情報を伝える手段は60MHz市町村防災行政無線による屋外拡声放送だけでした。ところが、避難を呼びかける豪雨時に役に立たない例が続出した。費用の割に効果は限定的。ここで戸別受信機の必要性が急浮上したわけです。ですが、必要性はあっても市町村防災行政無線は同報系でも移動系でも屋内受信を想定して設計されたシステムでな いため、再送信子局や屋外アンテナ工事などで莫大な費用がかかる。財政には限りがあり、人命にかかることとはいえ費用対効果は無視できない。このため、大災害や停電に弱いとはわかっていてもメールやスマホなどの一般通信に頼らざるを得ない悩みが現場にはあります。

 そんな時に、「ポケベル」が戸別受信機に活用され、整備単価が2万円以下だというクチコミがじわりと広がり始めた。

―それで280MHzシステムが注目されるようになったと。

 そうです。ポケベルが今は「非常時通信」として生まれ変わり、戸別受信機での使用実績も10年を超えた。3.11後に開発された防災ラジオ型戸別受信機は受注ベースで17万台を超え、280MHzシステム全体としても40自治体に広がっています。

 ポケベルが電波で伝えるのは、音声でも画像でもなく「文字」だけ。そのシンプルさが、優れた受信力の源です。280MHzシステムが、防災現場にとって最後の拠りどころになるのは間違いないと確信しています。

清野 英俊(せいの ひでとし)プロフィール

昭和29年、福島県生まれ。東北大学経済学部を卒業後、三井信託銀行株式会社(現:三井住友信託銀行株式会社)に入行。外資系ファンドなどを経て、平成24年より現職。

支援企業名

設立 平成20年10月
資本金 5,000万円(平成26年11月7日現在)
売上高 16億円(平成30年3月期)
従業員数 15人(平成30年7月1日現在)
事業内容 280MHz無線呼出し事業
URL http://www.teleme.co.jp/
お問い合わせ電話番号 03-5733-0247 (平日9:00~17:30)
お問い合わせメールアドレス multicast@teleme.co.jp