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真の「森林大国」の実現は正確な資源量の把握から

株式会社アドイン研究所 代表取締役社長 佐々木 浩二
国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所 フェロー 千葉 幸弘

[提供] 株式会社アドイン研究所

森林の整備を目的に創設された「森林環境税」。課税に先行し、平成31年度から税金が自治体に配分されることになる。新税導入の背景や、森林経営をめぐる今後の課題はなにか。森林問題の解決にも取り組む、アドイン研究所社長の佐々木氏と、森林の専門家として、国立研究開発法人森林研究・整備機構森林総合研究所フェローの千葉氏を中心とした、各関係者に詳細を聞いた。

※下記は自治体通信 Vol.14(2018年8月発刊)から抜粋し、記事は取材時のものです。

―森林環境税が導入される背景を聞かせてください。

佐々木:まず、日本の林業の衰退が背景にあります。日本は世界有数の森林大国ですが、その森林をもて余している状況です。木材価格は、安価な外材の輸入や国内需要の減少で低迷しています。林業の採算が悪化し、森林所有者は森林を管理する意欲を失いました。森林は適切な手入れが必要ですが、その資金が不足しています。

千葉:森林が荒れると、生態系の変化や土砂崩れ、洪水などの原因になり、環境問題につながります。そのため、森林は整備し、再生する必要があるのですが、多くの森林でその所有境界が不明確なため、行政もなかなか着手できません。

 そこで、林野庁が主導して新しい森林管理システムを推進することが決定し、森林環境税の導入が準備されているのです。

―詳しく教えてください。

千葉:新しい森林管理システムは、森林所有者自らが森林を管理できない場合に、市町村が森林管理の委託を受け、意欲と能力のある林業経営者につなぐことなどを法律で担保するものです。

 森林環境税は、平成30年度税制改正の大綱で創設されました。個人住民税に上乗せするカタチで、平成36年度から徴収されます。国に集められた税金は私有林面積などに応じて市町村などに配分されます。税金の配分は課税に先行して平成31年度から始まります。

自国の需要は自国で賄い持続可能な開発めざす

―森林を整備するための制度が整ったのですね。

佐々木:はい。さらにいえば、森林の整備と再生は、国連が掲げる「持続可能な開発目標(SDGs)(※)」達成への貢献にもつながっていきます。国連の森林問題への取り組みは、先進国の森林をどう有効に活用するかがテーマです。

 日本が掲げる新しい社会像である「Society5.0」も、SDGsの達成に大いに貢献するものとされています。

千葉:将来、新興国の経済発展で、木材需要の増加が予測されるなか、森林の整備を行わず、輸入に頼り続けていくわけにはいきません。

佐々木:日本のSDGsへの貢献を考えると、日本がもつ数少ない資源である森林の活用は重要な意味をもってきます。

※ 持続可能な開発目標(SDGs):平成27年の国連サミットで採択され、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」で記載された平成28年から平成42年までの国際目標

―税金が配分されるにあたって、自治体の課題はなんでしょう。

千葉:市町村には林業や森林管理の専門家が少ないうえに、所有者ごとの森林の境界が明確でないなど、地域の事情が異なるため、どのように税金を使うかが課題になるでしょう。場当たり的とならないよう、短期から長期までのしっかりとした計画を立てて、林業資材、森林の資源を最大限活用していかなくてはなりません。

―課題を解決するために必要なことはなんですか。

佐々木:まずは、市町村がもつ森林資源の価値を知ることが大切ではないでしょうか。どこに、どれだけの量の森林があるかだけではなく、広葉樹と針葉樹はそれぞれどのくらいか、木の直径や「切りごろ」はどうか。こうしたデータを取得することで、その森林から、どの程度の木材やチップ、バイオマスなどが採れるかを把握します。そうすることで、採算のあう林業のカタチを探っていけるのです。

 たとえば、現在、木質バイオマス発電では、安価な輸入の木質バイオマスがおもに使用されています。森林資源を把握し、有効に利用できるようになれば、国産のバイオマスも安価に手に入るようになり、地産地消型のバイオマス発電が広がっていくでしょう。

―どのようにすれば、森林の資源量を把握できるのでしょう。

千葉:資源を「見える化」した、森林の地図を作成するのがよいのではないでしょうか。

 これまでは、航空写真などによる「マクロ」な地図が作成されてきました。ただ今後は、森林経営に活かすため、資源の量と質を把握し、木の直径や樹高、材積といった、より価値の高い「ミクロ」な情報を反映した地図も必要です。

 こうしたデータはこれまで、木を1本1本、手作業で計測してきましたが、計測する人に、記録する人と、人手がかかるうえに、計測したデータをパソコンに入力する手間や時間もかかります。

 林業就業者が減り、高齢化も進むなか、山の奥地でこうした従来の方法で計測を行うのは容易ではありません。

専用の計測機で森林の資源量を把握する

―なにかよい方法はありますか。

千葉:森林のミクロなデータは、地上可搬型のレーザースキャナを使って計測が可能です。レーザースキャナは、土木建設などに使う汎用機が多く流通しています。ただ、こうした汎用機は非常に高額です。そのぶん、ミリ単位まで測れるのですが、森林の測定にそこまで高い精度はいりません。また、汎用機は水平を出して三脚を立てて測りますが、傾斜地ではそもそも水平を出すのが大変です。

 森林を地上で計測するなら、それに適した計測機を使うことをオススメします。たとえば、アドイン研究所が開発したレーザースキャナ『OWL®』。森林に特化した地上レーザースキャナとしては、日本初の製品でしょう。

―特長を教えてください。

塩沢:まずは、使いやすさです。スキャンする場所を決めたら、一脚でスキャナを立て、ボタンを押すだけ。スキャナが180度回転し、周囲の空間を計測します。木の直径や樹高、材積、立木の位置などのデータを一度に測れます。

 OWLはこれまで、森林管理局や森林組合、調査会社、研究機関などに、累計40台が販売されています。高知県の組合さまからは、森林所有者への森林施業の提案などを目的に導入いただきました。

 今後の目標は、OWLのサービスと、上空から撮ったデータをGIS(※)で連携させ、より幅広い森林の情報を提供することですね。

※GIS:地理情報システム。さまざまな地理空間情報をコ ンピュータ上で重ね合わせて表示する

―具体的にどうするのですか。

佐々木:NTTグループで電子地図の制作などを手がけているNTT空間情報やインフォマティクスと協力し、GISでの連携をめざしています。

大塚:当社、NTT空間情報では、日本の国土の約88%をカバーできる航空写真を所有しています。OWLで撮ったデータと連携すれば、非常に精度の高い森林地図を提供できるようになります。

 当社は、電子地図などのコンテンツを、総合行政ネットワーク「LGWAN」上でクラウド配信するサービスの提供を今年8月に始める予定です。将来は森林整備の領域でも自治体向けにサービスを提案していきたいですね。

―今後の支援方針を聞かせてください。

佐々木:森林にかかわるすべての人がクラウドで情報を共有できるプラットフォームをつくり、地域の森林再生、そして日本再生に貢献していきたいと考えています。

 ロボットやITをあつかう当社が森林に着目したのは、10年前に大手の林業家から「どうしたら林業を再生できるだろうか」と相談を受けたのがきっかけでした。市場の形成や産業を支える仕組みづくりなど、課題は多くありますが、当社では、ITの力でなにかできないかと考えてきました。

 日本の限りある資源を有効活用して守るために、短期、中期、長期のきちんとした計画を自治体と一緒に考えていきたいですね。

 当社はGISの開発・販売を手がけ、NTT空間情報とも協力関係にあります。林業の再生に向け、情報共有とその活用を実現するには、ツールと有益なデータが必要です。国が提供すべき実際に使えるツールをシステム業界が準備し、地方自治体が情報収集する体制が整えば、林業の活性化につながっていくでしょう。官民が一丸となって、日本の林業再生をめざして協力できればと思っています。

佐々木 浩二(ささき こうじ)プロフィール

昭和18年、東京都生まれ。昭和41年、慶應義塾大学工学部機械工学科卒業。スタンフォード大学、マサチューセッツ工科大学の両大学院で修士号取得。昭和61年、株式会社アドイン研究所を創設。

千葉 幸弘(ちば ゆきひろ)プロフィール

昭和33年、宮城県生まれ。昭和57年、名古屋大学卒業。平成4年、東京大学で博士号(農学)取得。昭和61年に森林総合研究所に入所。平成30年に株式会社アドイン研究所に入社し、顧問に就任。

株式会社アドイン研究所

設立 昭和61年4月
資本金 8,800万円
売上高 3億2,500万円(平成30年6月期)
従業員数 25人(平成30年6月28日現在)
事業内容 計測、制御、診断、 ロボット知能関連製品の開発・販売など
URL https://www.adin.co.jp/
お問い合わせメールアドレス info@adin.co.jp
お問い合わせ電話番号 アドイン研究所
03-3288-7311(平日10:00~17:00)

丸茶
03-3561-0461(営業)

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