長野県長野市 の取り組み

【施設管理計画の推進法】市民参加型の「ワークショップ」を公共施設の「再配置」に活かす
総務省の要請を受け、多くの自治体が、公共施設の運営や管理の方針を定めた「公共施設等総合管理計画」を策定した。今後は計画を実行に移すことになるが、「実行部分は定めておらず、どう着手していいのかわからない」という悩みも聞かれる。そんななか、同計画で定めた「公共施設の再編」に取り組むため、市民とともに考えるワークショップを開いているのが長野市(長野県)。同市担当の村上氏に、狙いや効果を聞いた。
※下記は自治体通信 Vol.13(2018年6月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
長野県長野市データ
人口: 37万8,998人(平成30年5月1日現在)世帯数: 16万695世帯(平成30年5月1日現在)予算規模: 2,623億2,080万円(平成30年度当初)面積: 834.81km²概要: 長野県北部に位置する。盆地であるため寒暖の差が激しく、夏は暑く、冬は寒い気候。本堂が国宝に指定されている善光寺のほか、武田信玄と上杉謙信の戦いで有名な川中島古戦場史跡公園、江戸時代に真田氏が城主となった松代城跡などの観光資源がある。「戸隠そば」は、岩手県の「わんこそば」、島根県の「出雲そば」とともに、「日本三大そば」のひとつといわれる。
―長野市の「公共施設等総合管理計画」の概要を教えてください。
財政負担の軽減を目的に、公共施設の複合化や廃止などにより、今後20年間で延床面積の20%縮減を目標にしています。人口減少や少子高齢化による社会保障関連費の増加と税収の減少で、公共施設の再編は避けられない問題。しかし、再編により施設が遠くなる、狭くなるといった可能性もあるので、市民に公共施設の現状や課題を理解していただき、再編を検討していくことが重要です。
―そのために必要なことはなんですか。
ひとりでも多くの市民に、公共施設の現状と課題を理解していただくことです。いまある公共施設の縮減は、どうしても「サービスの低下」などのイメージもあり、協力をえられにくいのが課題です。公共施設再編のためには、市民と行政が一体となった取り組みが必要。そこで当市では、公共施設再編への第一段階として、行政が計画を策定する前の段階で市民の意見を聞く「ワークショップ」を市内全域で開催することにしました。
―「ワークショップ」を取り入れた狙いを教えてください。
参加する市民に、まちづくりと地域の公共施設のあり方を考えていただくためです。当市には32の地区があり、各地区を代表する組織である住民自治協議会の協力をえながら、平成29年度は7地区でワークショップを開催しました。それぞれ3回ほど開き、約40~50人の市民が参加。進め方は、まず私たちが地区の公共施設の利用状況や概要を説明し、「将来こんな地域をつくりたい」「公共施設でしたいこと」などについて、グループごとに自由討論してもらいました。そして、最終的には「地域の公共施設の将来像」などの意見発表につなげています。市民と行政の間に立つファシリテーターの役割は、地元の信州大学の協力や認定ファシリティマネジャーなどによる運営体制を提案した、建物管理会社の日本管財にお願いしました。
「図書館のあり方」の議論では行政が思いつかない意見も
―意見は活発に出ましたか。
はい。ある地区では図書館の再編について、「図書館機能を小中学校に分散させ、学校図書館のネットワーク化や移動図書館の充実が図れれば、ハコモノとしての図書館はいらない」など、思いきった意見も出ました。また、「公共施設のあり方について、われわれ市民がもっと主体的に考えるべきだ」という意見をいただきました。
現在取り組んでいるワークショップは、平成31年度までに各地で開催していきます。地域からいただいた意見は、国の「インフラ長寿命化基本計画」にもとづき、その翌年度までに策定する「個別施設計画」の参考にしていく予定です。
長野県長野市 の取り組み

着手可能なことをまず考えれば計画は少しずつカタチになる
※下記は自治体通信 Vol.13(2018年6月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
―各自治体が定めた「公共施設等総合管理計画」は、具体的に実行されているのでしょうか。
なかなか実行できていないのが現状です。公共施設の再編計画を定めたとしても、あくまで全体的な数値目標などであり、具体的な実行計画を定めている自治体は少ないからです。
―どうすれば実行に移せるのでしょう。
難しく考えるのではなく、目標として定めた計画を達成するために、まずはなにをすべきかを考えることが大切です。たとえば長野市は、個別具体的な施設再編に着手したのではなく、市民の理解をえる作業に取り組みました。また、各施設の老朽状態を把握する調査を行い、その結果をわかりやすくデータ化していくこともひとつの方法だと思います。そのほか、住民に施設利用にかんするアンケート調査を行うことも考えられます。かりに、自分たちの力だけでは難しいと判断した場合は、専門性の高い民間企業の力を活用すればいいと思います。
―自治体支援の方針を聞かせてください。
現在、官民あわせて3000以上の建物を管理しているノウハウを、公共施設の運営や管理の合理化に活かします。また、全国18自治体で9万戸以上の公営住宅を指定管理者制度で管理してきた実績や、約30プロジェクトのPFI(※)事業を手がけてきた経験は、自治体が策定した管理計画の具現化を強く支援できると考えます。ワークショップの開催も含め、さまざまな角度からサポートできる当社に、ぜひお声がけください。
※PFI:プライベート・ファイナンス・イニシアティブの略。民間の資金や経営・技術力を活用し、公共施設などを整備すること。公共事業におけるひとつの手法
海川 拓也(うみかわ たくや)プロフィール
昭和63年、長野県生まれ。平成25年、前橋工科大学大学院建築学専攻修了。マンション管理会社での業務経験後、平成28年に日本管財株式会社入社。
日本管財株式会社
設立 | 昭和40年10月 |
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資本金 | 30億円 |
売上高 | 924億9,000万円(平成29年3月期) |
従業員数 | 9,573人(連結:平成29年3月末) |
事業内容 | 建物総合管理事業、保安警備事業、環境施設管理事業、プロパティマネジメント事業、マンション管理事業など |
URL | http://www.nkanzai.co.jp/index.html |
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