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自治体業務に質的進化をもたらす「資料の電子化」の可能性

ウイングアーク1st株式会社 田中 潤 / キャリアシフト株式会社 森本 登志男

キャリアシフト株式会社 代表取締役(元佐賀県最高情報統括監)森本 登志男 / ウイングアーク1st株式会社 取締役副社長COO 田中 潤

[提供] ウイングアーク1st株式会社

「働き方改革」の実施が自治体にも迫られている昨今、なにをどう実践すべきか、各自治体は苦慮している。そうしたなか、全庁でのテレワーク実施を通じて大胆な業務改革を実現した佐賀県の取り組みは、成功事例の最たるものとして多くの注目を集めている。この動きを指揮したのが、当時佐賀県最高情報統括監(CIO)の任にあった森本氏である。そこで本誌では、帳票管理の電子化を推奨し、民間の立場から自治体の業務改革を提唱しているウイングアーク1stの田中氏との対談を企画。自治体で「働き方改革」を実現するための妙手を探った。

※下記は自治体通信 Vol.12(2018年4月発刊)から抜粋し、記事は取材時のものです。

すべての分野、すべての施策でITを最大限に活用せよ

―森本さんが佐賀県のCIOに就任した経緯を教えてください。

森本:平成23年の公募がきっかけです。それまで私は16年間、日本マイクロソフトに勤務しており、自治体営業も経験してきました。そのなかで、自治体では「ITの活用度が低く、業務効率を改善する余地が大きい」実態をつぶさに見てきました。業務内外での地域活性への取り組みをいくつか重ねていた頃に、佐賀県の公募を知りました。
 外部のITの専門家を採用する自治体もかなり増えていますが、CIOとして経営的立場で仕事を任せ、常勤で決定権をもった高いポジションとして公募している自治体は佐賀県のみでした。ここなら望む仕事ができると感じ、応募した次第です。

―CIOのミッションはなんだったのですか。

森本:とにかくすべての分野においてITを最大限に活用すること、この一点でした。導入のコストが低く、爆発的な効果をもたらす。そうしたITの効用を当時の上司である知事はよく知っていました。

田中:IT導入の効果は、大きくふたつありますよね。ひとつは、ムダな時間を減らすこと。情報の伝達や収集といった作業では、数日単位の所要時間が数秒に短縮されるケースもある。もうひとつは、ITで収集したデータを活用することで、勘と経験に頼っていた政策判断に理論的裏付けを与えること。政策の効果測定や変更判断には、漠然と考えるだけでは理解できない要素が多いと思います。そんなとき、ITはデータという客観的な判断材料をもたらしてくれる。そうした効果を期待されていたのでしょうね。

全庁一斉のテレワークの実現 導入の壁は「資料の電子化」

―佐賀県での5年にわたる改革で、最大の成果はなんでしょう。

森本:業務効率の改善という点では、やはり全庁一斉のテレワークの導入ですね。県庁の場合、業務の性格上、外出する職員がとても多いのが特徴です。そこで課題となるのが、外出によって情報連携や決裁などの業務が滞ること。外出先でテレワークを実施できれば、業務効率が劇的に改善されることはわかっていました。しかし、導入にはいくつかの壁がありました。

―導入の壁とはなんですか。

森本:テレワークはまったく新しい働き方なので、管理職を中心に不安が広がります。システム環境の整備も伴うので予算確保のために、その効果について説明をつけなければなりませんでした。
 それらを乗り越えて導入にこぎつけましたが、職員の間での利用促進を図るためには、「業務に使う書類や資料の電子化」が進んでいる必要がありました。

田中:行政における「資料の電子化」の必要性は政府も指摘しており、30%の紙を削減するよう、目標を設定しています。
 ただ、日本は文化的に紙が好きですよね。紙はだれもが使いこなせる教育コストゼロのツールですから、企業社会でも紙文化は根強いです。電子化を推進する企業の内部では、電子データとして保存した資料に承認印をもらうため、いちど印刷し、承認印をもらったのち、また電子化して保管する、といったムダな作業をしているところもあるくらいです。
 たしかに、紙という物理的なツールを使っている以上、テレワークなど不可能ですよね。

森本:ええ。じつは、就任後、最初に課せられたミッションの中には、紙使用量の削減があり、目標値も設定されていました。いくつかの対策を実施することで数値を改善させることはできましたが、目標値を達成するところまでは行きつけませんでした。のちにテレワークの全庁導入の結果、その数値は一気に目標を達成しました。

電子化の最大のトリガーは「予算審議に紙を使わない」

―どうやってペーパーレス化を進展させたのですか。

森本:もっとも効果が大きかったのは、財政部門が「予算審議に紙を使わない」という方針を打ち出したことでした。予算審議は、紙の消費量が非常に多いので、この審議をすべて大型ディスプレイ上で行ったことで、紙の消費量を抑えることができました。予算審議はすべての部署が関係するため、全庁に対し、ペーパーレス化への強いメッセージを発することができました。
 もっとも、佐賀県の場合、それ以前から、知事、副知事への報告はすべて電子化され、大型ディスプレイを見る形で行われていましたので、各部署にも受け入れやすかったのでしょう。

田中:「いちばん影響力の強い部分から着手する」という手法は、非常に有効ですね。トップが「紙では承認しない」となれば、必然的に電子化するしかありません。
 ただし、それだけでは現場での電子化はなかなか進まないですよね。現場を動かすために、佐賀県ではなにから着手したのですか。

森本:これは私が赴任する前に、すでに前任者が導入していたのですが、電子決済のシステムを導入し、その利用促進を図りました。有給休暇の申請や出張の申請といった、どの職員でも使う手続きについて、電子認証で行うことを奨励しました。

重要なのは電子化ではなくデータ化

―資料の電子化は自治体業務にどのような変革をもたらしますか。

田中:電子化による最大の効用は、蓄積された情報が、貴重なデータとして活用できるようになることです。紙の状態で眠っていた貴重な情報をデータとして政策立案や日常業務に活用できれば、住民サービスの質向上に直接的につなげられます。これによって、時間短縮といった業務効率の向上とは比べ物にならない進化を、自治体業務にもたらすことになるはずです。ですから、われわれが推奨しているのは、電子化ではなく、データ化なんです。

森本:まったく同意見です。電子化ならぬデータ化は、自治体サービスの質向上を追求するうえでは必須の要件です。
 佐賀県でも、データ利活用を強く推進してきました。たとえば、県内の全救急車にタブレット端末を配備しているので、すべての救急車の出動における現地への到着時刻や病院への搬送時刻などのデータが正確に記録されています。これらを分析することで、搬送時間の短縮に向けた救急車や救急隊員といったリソースの最適配分に役立てています。

田中:データ利活用が政策に活かされた好例ですね。データを利活用するうえで重要なのは、情報を丸ごと電子化することではなく、利用目的に沿った情報を抽出することです。なにを読み取りたいかによって、データ化作業自体も大きく効率化できます。ITを活用するにとどまらず、最小のコストで最大限の効果を享受できるITの活用法を自治体でも考える時代に入っています。

森本 登志男(もりもと としお)プロフィール

昭和37年、岡山県生まれ。京都大学工学部を卒業後、宇部興産株式会社、株式会社ジャストシステムを経て、日本マイクロソフト株式会社に入社。平成23年から5年間、佐賀県の最高情報統括監(CIO)を務め、テレワークの導入による「働き方改革」を実現した。現在も、総務省テレワークマネージャー、総務省地域情報化アドバイザーなど、中央省庁からの委嘱を受け、自治体や地域社会の課題解決に尽力している。

田中 潤(たなか じゅん)プロフィール

システム開発エンジニアとして、主に企業の業務システムやWebアプリケーション、ECサービスの開発に携わった後、平成16年にウイングアーク1st株式会社に入社。平成23年、開発を統括するCTOに就任。平成29年、全社の事業を統括するCOOに就任。国内外の顧客との交流を通して、データに価値を与え、企業のイノベーションを提言する活動を実施している。

ウイングアーク1st株式会社

設立 平成16年3月
資本金 2億円
売上高 132億6,400万円(平成29年2月期:連結)
従業員数 492人(平成29年3月1日現在:連結)
事業内容 帳票・BIソフトウェアおよびサービスの開発・販売
URL http://www.wingarc.com/
お問い合わせ電話番号 03-5962-7300(平日 9:00~17:30 ※土・日・祝日・会社指定の休業日を除く)

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